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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第38話「ホウライ伝説 知らしめられる建国 24」※真・タヌキ無双」

「そうかよ。じゃあ、テメェもくたばるしかねぇな」



 なぁ、ホープ。

 何がお前を、そこまで掻き立てた?

 いつもなら光速で逃げ出す癖に……、それとももう、逃げ場なんてねぇほどに、終世が進んじまってるのか?



 弱き人類が行った生態系への下剋上。

 人類の皇の殺害。

 怒れる竜による反抗、そして、群棲を率いていないカツボウゼイの出現。


 どれもこれも、ソドムの知識には無い異常事態。

 たった一つですら念入りな対処が必要な混沌の乱立は、数千年を生きた人類の守護者ですら手に余る。

 ……だが、それらは最難関ではない。


希望を戴く天王竜ウィルホープ・ウラヌス

 ソドムが知る、最大最強の竜。

 生きとし生きる生命の憧れ、命ある者の終始点が戦闘の意思を示している。



「竜が竜を作るか、はっ、御大層な事だぜ」



 輪廻の外側に居るこの竜を、ソドムは好敵手ライバルと呼ぶ。

 右手には神喰途絶・エクスイーター、『絶対勝”理”の剣』。

 いつか超えるべき目標(ライバル)を倒す時が来たのだと、孤独な世界で加速ユニットを吹き鳴らす。



魔神の靭帯翼(デモン・リグメント)累乗加速配置オーダードライブッ!!」



 四対八機の刀剣型加速器、魔神の靭帯翼。

 その性能は従来のブースターとは異なる理論でエゼキエルを加速する。


 備わっている能力『飛躍』により、加速器自身は自立した浮遊が可能。

 だが、それだけでは光速に近しい速度を出す事は出来ない。

 引力、斥力、重力、磁力、風力、張力、推力、光力、八つの発進器を切り替えて行う相互干渉を『結束』することで、エゼキエルデモンは亜光速戦闘が可能となるのだ。


 本来ならばあり得ない、攻撃のモーションを取りながらの加速。

 戦闘と移動が連結されていない、異常過ぎる機動。

 この操縦技術があるからこそ、ソドムはゴモラよりも強いのだ。



「行くぜ」

「な、さらにはやk――ッッ!!」



 八機ある加速器が空に舞う。

 その内の二機がエゼキエルの後方に位置取り、斥力と推力を行使。

 更に、前方に配置された二機が張力と引力で機体を引き揚げる。


 向かう先は、残りの加速器で作りだした超重力磁場トンネル。

 完全に排除された空気抵抗の中で、エゼキエルが行使するは100%純粋な攻撃モーション。



「k――ッ!?!?」

「《天討つ硫黄の火(メギドフレイム)絶火葬剣(ウォーブレード)》」



 転生を終えた黒塊竜の身体は、輝く黒金に覆われている筈だった。

 だがそこに有ったのは、大半を消し飛ばされた黒炭の肉塊。

 産声か、それとも辞世の句か分からないまま、残る黒塊竜の肉体も数百に切り刻まれて荼毘に伏す。



「断末魔すら遅すぎて、まったく話になりゃしねぇ」



 エゼキエルデモン=ソドムは、帝王枢機最速の機体……、ではない。

 機体に備わっている俊敏性はエルヴィティスに劣り、長距離移動速度は魔導空中空母・アークメロンに及ばない。

 だが、ひとたび戦えば、勝つのはソドムのエゼキエルだ。



「くっ、ホーpッッ!?!?」

「これで四度目、何をしても無駄だ。テメェはもう、食い飽きた」


「な――ッ!!」

「俺の悪喰=イーターはあらゆる真理を究明する。強度や弱点は勿論、その思考や癖まで解き明かし、未来すらも理解する」


「――ッ!?」



 振り抜かれた全長10mもの超大剣、その進路上に黒塊竜が転生した。

 そして産声すら上げられぬまま、その命が終えて逝く。


 神喰途絶=エクスイーターを宿す刀身が喰い散らかすのは、相対した者が持つ全ての可能性。

 エクスカリバーの『絶対勝利』によって絶対化した傷は治癒できない。

 そして、悪喰=イーターという存在が、転生という抜け道を持つ竜でさえも餌食へと換える。



「未来予――ッ!!」


「我のうご――ッ!!」


「死――。」



 繰り返される、超加予測戦闘。

 黒塊竜が死する度に、ソドムの予測精度も加速度的に向上する。

 やがては、一回の攻撃モーションで二度以上の絶命を行使できる領域へと――。


『悪喰=イーター』


 それは全知を得りし那由他が生み出した、『神の捕食器官』。

 捕食とは、獲物を殺して食し、己が糧とすること。

 故に、悪喰=イーターを持つ者に殺された獲物の命は、糧として捧げられる。


 こうして、解脱転命という権能を以てしてでも完全には防げない捕食により、黒塊竜の(知識)の90%は悪喰―イーターの糧となった。

 そしてソドムは、残る数%へ別れを告げる。



「ゴババッ……、ごぼっ」

「黒塊竜、次はマジモンの転生だ」


「死ん――」

「せっかくだ。来世はタヌキになるのはどうだ?……あばよ。《絶火葬剣ウォーブレード》」



 前方12m、その位置に黒塊竜は転生する。

 魂がある心臓の位置も特定済み、後は、寸分違わずにエクスイーターを振り下ろすだけ。


 その剣筋には迷いも後悔も無い。

 いかな理由があれど、蟲に加担するのは世界の滅亡を願うのと同じ。

 滅亡の大罪期の防止こそ最も多くの命を救う手段だと、ソドムは知っている。



「――死んだ、甲斐があった」

「なん――ッ!」



 突然走った痛みに、ソドムの顔が歪む。

 攻撃はたったの一撃も受けていない、されど、その痛みは瀕死の重傷の様に厳しいもので。

 僅かにぶれた剣筋、そこへ、黒塊竜の拳が着弾する。



「つぅッ……、テメェの仕業か、ホープ」



 僅かな拮抗の渦中に叩きつけられた、黒塊竜の尻尾による一撃。

 痛みによって思考に遅延が出ていたソドムは回避では無く防御を選択、そして、それも完璧に終えた。

 されど……、エゼキエルが悲鳴を上げている。



「機体外装に亀裂だと……?」



 エゼキエルの脇腹に付いた、たった数cmの熱傷。

 致命傷どころか、駆動の問題にすらなりはしない。

 だが、ソドムが抱いているのは驚愕だ。

 ズキズキと痛む脇腹が、火傷の様に熱を持ち始めていて。



「間に合ったか、ホープよ」

「――^」


「まさか、ギリギリだったのは演出などと言わぬだろうな?」

「……。」


「まぁ良い。死こそは竜の誉れ、新しい境地が見えたのも事実だ。《解脱天命・我竜点睛》」



 エゼキエルと同様に、黒塊竜の身体も悲鳴を上げた。

 だがそれは進化するが故の軋み、新たなる姿の産声。



「全身の鱗に理想気体炎イデアルファイアの放射口を付けた。貴様の動きが面白かったのでな、真似てみたぞ」

「ちぃ……、うぜぇ」



 高位竜たる黒塊竜もまた、不可思議竜の権能を与えられし王竜だ。

 自らの身を望む姿にするなど容易く、ましてや、その準備を巧妙に隠すなど造作も無い。



「なるほど、翼があると却って邪魔になりそうだ。捥ぐか」



 ブツン。っと鈍い音と共に、黒塊竜は翼を脱ぎ捨てる。

 解脱天妙を発動し、翼が無い姿を願う。

 最早、その姿は竜よりも悪鬼に近しい。



「……馬鹿じゃねぇのか?それじゃトカゲだぜ」

「ならば食ってみせるがいい、タヌキ」



 キィンと空を走破した黒塊竜が、巨大な双剣を薙ぐ。

 その速度は亜光速、エゼキエルと同等。



「どうだ!?速かろう!!」

「それが遺言で良いのか?」


「……なに?」

「尻尾を切っちまったトカゲは、もう逃げられねぇ《魔神の黒縄獄(デモンセカンド)》」



 あるべき翼を捨てた竜と違い、タヌキは始めから翼を持っていない。

 だからこそ、その役割を担う高度に発達した尻尾を持っている。


 エゼキエルデモンの百節にも及ぶ尻尾に搭載された魔法陣が一斉に起動。

 前方に迫っていた黒塊竜を差し貫くレーザー掃射は瞬きの間に鎖と化し、雁字搦めの檻となる。



「くっ……うごごごごおぉぉ……」

「助かったぜ、翼があるとうまく絡まなくてよ。じゃ、死――!」



 天から振り下ろされた白炎が、黒塊竜の拘束を焼き切った。

 それを放ったのは、希望を戴く天王竜ではない。

 更にその上……、空間を転生させて作った、仮初めの巨竜の口だ。



「今のは俺の炎(メギドフレイム)だったな?」

「――、」


「さっきの痛みといい、随分と狡い手を使うじゃねぇか。えぇ、天王竜ホープ



 天王竜は”事情”を知っている。

 竜の思惑、人の思惑、タヌキの思惑、そして……。


 最も真実に近しい者が求めるは――、世界の転生。

 その為の準備は終わり、これから始まるは、ただの時間ヒマつぶし。



「思えば……、テメェとやり合うのも数千年ぶりだな」

「――・」


「相変わらず器用なこった。俺らの魂と空間を新たな生命へ転生。今のここは、馬鹿デカイ竜の体内っつーわけだ」

「……。」


「そんな中で激しく移動し、あまつさえ、高火力の炎を使う。どうなるかは分かるぜ」

「――^ ;」


「肉体の損傷=魂の損傷だ。此処で戦えば戦う程、俺の魂に傷が付くんだろ」



 解脱天妙によって生み出された空間巨竜は、ソドム、天王竜、黒塊竜の魂を内蔵した生命体だ。


 例えば、自らの胃液によって胃に穴が空いてしまうように。

 この中で行われた攻撃は、誰に傷を負わしたか以前に、空間そのものを傷つけている。

 そして、その魂として設定されているソドムとエゼキエルも、同様の傷を負う事となるのだ。


 天王竜の奥義が一つ、『竜精界の夢(ドラゴ・ティターニア)』。

 生み出した空間生命体、その体躯を望む形に換えるのも、天王竜には容易い些事だ。



「こんな小細工でビビると思ってんのか?」

「―ー・」


「俺の目は真理究明、対策を練るなんざ簡単だ」



 体内を走る痛覚(情報)が思考を停止させる前に、悪喰=イーターの知識で上書きする。

 付け焼き刃の鎮痛剤であるそれは、本質的な意味で魂の保護には成りえない。

 だからこそ、ソドムは思考を加速する。



 大技を出していれば自動でホープが勝つ、時間はあんまり残っちゃいねぇ。

 消耗から逆算するに、俺が死ぬまで30分って所か。

 なら、25分以内にコイツらを同時に殺し、悪喰=イーターで空間生命を解く。



 明確な勝利条件、されどそれは、途方も無く。



「魔神の靭帯翼、超過速配t――ッ!!」



 ソドムが叫んだ刹那、総数20万にも及ぶ光弾がエゼキエルに直撃した。


 空間内に存在する太陽光ですら、天王竜が支配する肉体の一部だ。

 だからこそ、《ソドムという魂の周囲で有爆する》という肉体への命令すらも可能。

 この空間生命(身体)は、最も強き魂である天王竜の意のままに動く。



「《絶対防御(イージス)ッ!!》」



 だが、その程度の攻撃でエゼキエルが傷付くはずがない。

 その尾に搭載された性能は、10秒間、唯一神の攻撃でさえも防ぐ絶対防御。

 たかが太陽光程度、防げないはずがないのだ。



「お前の考えなんざ、お見通しだッ!《魔神の衆合獄(デモン・サード)》ッ!!」



 エゼキエルに迫る二匹の巨竜、その口から光輝と漆黒が噴き出している。

 そしてそれがブラフであると、ソドムは勘で見破った。


魔神の衆合獄(デモン・サード)


 魔神の左腕に願うは、魂の所在。

 そうして見つけた魂の一つは既に、自分の背後に迫っている。



「テメェの番だぜ、天王竜ホープッ!!」



 振り返ったエゼキエルの突き出した剣が、空間に溶け込んでいた天王竜の頭を割った。

 それはソドムの意思に反した――、空気に融け消えるという、見通した未来に反する結末。



「馬鹿な……、これもブラフ、だと……ッ!?!?」

「《竜滅咆哮(ドラゴカタスフィー)》」



 世界へと還った白き灰竜の先で、天王竜が口開く。

 それは、眩い光。

 収束した光の概念は物質を透過、やがては万物を世界へと転生させる。



「《絶対防御(イージス)ッ!!!!》」



 使ったばかりの絶対防御、その残り時間は4.771秒。

 攻撃を防ぎ切るには足りないと、ソドムの知識が答えを出す。



「《魔神の無間獄(デモン・エイス)天滅す勝利の剣メギド・エクス・カリバーッ!!》」



 残り2.41秒を残し、ソドムは『勝利』を起動した。

 エクスイーターに搭載された五つの悪喰=イーターの全開放。

 剣の根元に存在する『真理究明』、そして刀身に埋め込まれている『万物破壊』『分解吸収』『形態変化』『万物創造』が一斉に口開く。


 それは、諸刃の剣。

 始原の皇種・那由他と同等の行使は、タヌキ帝王であろうとも、肉体に莫大な負荷がかかる自傷行為だ。

 だが、ソドムの真理究明は、此処こそが勝機なのだと判断した。



 ただの攻撃じゃ、天王竜ホープを殺し尽くせねぇ。

 ましてや、威力が高すぎる攻撃は先に、俺自身を殺しちまう。


 だったら、一撃で決めればいいだけだ。

 ……勝負だ、天王竜ホープ



「させぬわッ!!《極天陽月爪フレアムーン》ッ!!」

「そう来るよなァ、黒土竜」


「何ッ!?」

「誰が天王竜ホープだけだって言った?……テメェも道連れに決まってんだろうがッ!!」



 この瞬間、悪喰=イーターは目の前の二匹を獲物だと判断した。

 これより始まるは、”那由他なる食事”。

 魂までもしゃぶり尽くす――、最期の晩餐。



「馬鹿な、腕が、細かく解けて……」



 噛んで『破壊』し、

 飲み込みんで『吸収し』、

 エネルギーに『変化』させ、

 理を『究明』し、

 己が糧へ『創造』する。


 悪喰=イーターが残す物など、何もない。


 皿に残った雫の一滴すらも、舌で舐め取り味わおう。

 それが、始原の皇種・那由他の意思なのだから。



「あぁ……、これが、本当の死」



 黒塊竜は理解した。

 命の権能を持つ竜がどうして死ぬのか。その理を。

 なぜ、天王竜ホープが希望と呼ばれているのか、その意味を。



「《解脱転命・竜章鳳姿りゅうしょうほうし》」

「……ホープよ、お前は知っているのだな。不可思議竜様のお姿を――」



 ソドムの目に映ったのは、白と黒が混じり合う美しき竜の片腕。

 欠片も残さず喰らう筈だった黒塊竜の残滓は、最期の最期で、真なる転生を果たしたのだ。


 それは、知識を以てしても理解できない『不可思議』なる腕。

 見通せない、真理究明の外側。



「そ、れ、が、どうしたァァァッッ!!」



 白と黒、始まりと終わりを宿す腕へ刃を突き刺し、ソドムが叫ぶ。

 此処で終わらねぇ。

 こんな所で終わってちゃ、ホロに顔向けできねぇだろうが――ッ!!



天ォ王ォォ竜ホォォォープーーッッ!!」

「――ッ!!」



 ピキリ。と軋んだのは、空間。

 終わりが来たのだ。



「壊して、ダンヴィンゲン」

「《世界最大の物理力(マキシマム・ダイン)》」



 全ては唐突に。

 そして、たったの一撃だった。


 空間生命の崩壊。

 それが意味するのは、内蔵する魂の――、死。



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