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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第32話「ホウライ伝説 知らしめられる建国 ⑱」※タヌキ無双

 

「樹葬に纏え、核熱のホノオォォッ!!」

「ヴィギ!?」



 7機のアップルルーンに相対するは、たった一匹の黒塊竜。

 生来より使ってきた深緑魔法で生成した槍に嚇怒の炎を纏わせ、いざ、機神の腹へと突き立てる。



「串焼きだッ!!タヌキィッ!!」



 この場に居る黒塊竜が纏う核熱の炎は、オリジナル黒塊竜よりも温度が低い。

 それは肉体的な差によるものでは無く、燃料に使用する理想気体の取り扱いに違いがあるせいだ。

 理想気体を作る所までは出来ても、それをどの様に使用すればいいのかが理解できていないのだ。


 だが、この黒塊竜はオリジナルとは違う方法でありながら、同程度の性能を発揮する技を編み出した。

 森ドラゴンの王として君臨している彼女は、作りだした樹木で理想気体を吸収。

 可燃物である木と、燃料である理想気体の融合……、そうして生み出された『真炎燃性の槍』が、アップルルーンの胸を貫く。



「ヴィッ……ギギッ、ギガ……」

「ヴィギル!!」「ギギルギルギアッ!!」


「逃がすかボケぇッ!!《森羅帯誕しんらいたいたんッ!!》」

「ヴッ……」



 動力部損壊という致命的な機能不全。

 ゴモラは即座に交代・修理を選択するも……、僅かに手遅れだった。


 アップルルーンの内部から咲き誇る、真炎なる桜花。

 機体に突き刺さっている槍の材料は『木』。

 彼女がそれを握っている以上、数百年の成長ですら、瞬きの間に終わる些事だ。


命が蠢く地星竜リグルライフィ・アース


 新参の惑星竜である彼女もまた、高い能力を天王竜に見いだされた一匹。



「いょっしゃぁ!!タヌキがなんぼのもんじゃーー!!」

「ヴィギルルルルルッ!!」


「こちとらタマァ付いてんのじゃァ、根性で負けてたまるか、ボケェエエエエッ!!」

「ヴィギルオォン!?」



 大地を揺るがす雄叫びと共に、地星竜が突撃する。

 一方、ゴモラ達はドン引きしている。



「……うわぁ。あの黒塊竜、ぜんぜん折れそうにない。なにあれ、実は超古参の惑星竜とか?」

「あ、いや、ライフィちゃんは」


「というか珠って何?凄いエネルギーだけど、天王竜の御霊みたまでも貰ってた感じ?」

「そんな大層な珠じゃないっすよ。伯父上の使い古した汚タマっす。ところで……」


「うん?」

「我の尻尾に何しているのだ?」


「魔法で刺青?『ソ・ド・ム、参上っ!』っと……」

「ぬわー!?!?」



 ドラゴンにとって、尻尾は裕福さを計るステイタスだ。

 魔法的効果を宿さない尾を磨く事は、人間のおしゃれに相当する。

 そして、それを知っているゴモラは、この後の冥王竜がどんな扱いをされるのかを分かっている。



「貴様、な、なんという事を……ッ!!直ぐに消せぇッ!!」

「無理。加護の応用な上に、魔法十典範の重ねがけだし」


「んなっ……」

「ちなみに、この肉体を使って転生すると落書きも復活する」


「ひえっ」

「さっ、次は何を書こうかなー。水玉模様とか?」


「絶対やめてぇッ!!」

「もう書いちゃった」


「……んー。よりにもよって紅白ぅ。だ、ダサすぎる……」



 599,999匹目の黒塊竜の心がへし折れ、残るは後一匹。

 だけど、最後の一匹がしぶとそう。


 そんな判断をしたゴモラは、悲しそうな瞳で岩に尻尾を擦りつけている冥王竜を魔法で拘束。

 不可思議竜の力を奪ったという人間について、問い掛ける。



「ぐえっ。」

「次は水玉模様の中にハートを追加する、蛍光インクで。やられたくなかったら答えて」


「巣穴の中で光っちゃうぅ……」

「不可思議竜から力を奪ったとは?そんな事が出来る人間が居るとは思えないんだけど?」



 大聖母と共に人間の世界を牛耳っているゴモラは、色んな闇を知っている。

 その時に聞いた面白い拷問をアレンジして試しつつ、確信に触れにいく。


 ソドムとゴモラの見立てでは、その人間というのは『街を建造した女、ラルバ』だ。

 明らかに人間の領域を超えた世絶の神の因子の使い方をしている以上、神の関与が確定。

 それを肯定するように、現在も行われている戦いでは、全力のゴモラやソドムですら手こずりかねない戦闘能力を発揮している。


 だが、問題はまったくの別次元だ。


 5000機のアップルルーンを操縦するゴモラでも、『魔帝枢機』を駆るソドムでも、更にその上、大陸を容易に滅亡させるムー、ゲヘナ、トウゲンキョウ、エデンですら、不可思議竜には勝てない。

 それが可能なのは、同格である始原の皇種、もしくは……、『神』だけだ。



「神は修正(終世)を宣言していない。不可思議竜を殺す理由は無いはず。さぁ、答えて」

「し、知らないっすよ」


「ハートだけじゃ足りないんだ。分かった、トランプ柄にしてあげる。色はレインボー」

「本当に知らないのだァッッ!30年以上も前の事だし、我は天龍嶽に居なかったしっ!!」


「ん、30年以上?そんなに前はおかしくない?それともボケてる?」

「竜族の大事件ぞ、間違える訳なかろうがッ!!」



 その答えによって、ゴモラの推察が崩れ始めた。


 あの女は、せいぜい25歳がいいとこ。

 30年前じゃ、計算が合わない。


 もしかして、転生してる?

 いや、ブルファム王・ラルバは即位して2年、長生きしてるなら、もっと前から権力を持っていないとおかしい。


 じゃあ、別人?ありえない。

 今回の件――、神とは無関係に不可思議竜が殺されたというのならば、それこそ、那由他様か蟲量大数が……。



「ん」



 それは、唐突に始まった。



「なにっす、おぉ、ライフィちゃんすげー!?!?」



 音も無く、成す術なく、アップルルーンが崩壊していく。

 いや、閃光と爆裂は発生している。

 ただそれが、破壊されたという事象からズレていて。



「遊んでいる場合じゃなくなった《原初堕落ルシフェ》」

「ぇ。ふにゃぁぁ」



 刃渡り30cmの刃を冥王竜に差し込み、ゴモラが立つ。

 見上げる先は空、そこには何も居ない。

 正確には、ゴモラの目では、その存在を捉える事が出来ない。



「……どうしてお前が出てくる。カツボウゼイ」



 誰に向けたものでもない、か細い呟き。

 だが、3秒にも満たない時間で消えてしまうそれで足りている。

 その者にとっての音は、静止している物質と大差ない速度でしかないのだから。



「我らの姫が仰せなのだよ、竜に死んで貰っては困るとね」



 ウ“。

 ウ“ウ“。

 ウ“ウ“ウ“ウ“。


 遅れて発生している重低音。

 この羽音こそ、かの蟲が音速を超えている証。


 赤と黒の光沢あるボディが、空中で停滞した。

 それは人のようなシルエットでありながら、人間とは程遠い。


『蟲』


『種を切り開く者』である皇に習い、神と同じ姿へ進化せんとするもの。

 そして、その中の最上位。

 ほぼ神と同じ姿と成りながらも、生来の性能を世界最高(MAXIMAM)まで高めた存在、『王蟲兵』。



「蟲が竜とグルってこと?これは流石に予想外」

「ほう!狸を化かすとは、流石は我らが姫。賢さが違う」


「虫ケラが知能比べ?たかが知れてる」

「確かに。私を含め、考えるよりも先に手が出てしまう連中だからね」



 7機のアップルルーンが、大地に崩れ落ちた。

 その胸に穿たれた大穴には、内部機構が存在していない。

 なぜなら、カツボウゼイによって繰り出される衝突は、神製金属ですら容易に粒子へと帰す。



「だが、我らが姫は違う。か弱い身体に宿すその理知は絶大。二度と愚弄してくれるな」

「……姫って誰?」


「はぁ、『知識タヌキ』が聞いて呆れる。あぁ、そうだ。これも姫に聞いた話なのだが、どうやら、先代はお前に倒されたようだね」

「それもいつの話?何度も駆除し過ぎて覚えていない。当然、世界最強の加速力(マキシマム・ガル)にも対応かのう――」


「それは早計では?」



 再び、アップルルーンが崩れ落ちる。

 今度は14機、先程の倍が同じ時間で。



「蟲量大数様より賜る力は同じ『世界最高の加速力』。だが、今回の私は力の使い方が違う」

「……。」


「兵法というのだそうだ。我らが姫の教えによって、その結果には雲泥の差がついた。知識が通用すると思うなよ、タヌキ」



 肩を張ってのけぞるという、カツボウゼイの不遜な態度。

 空から視線を落としているその姿は、見下すという表現がピタリと一致する。



「そう?じゃ、新たな知識の礎になって貰おう」



 だが、ゴモラの態度も負けていない。


 今から行われるのは、蟲の駆除。

 タヌキ帝王・ゴモラ VS 血王蟲・カツボウゼイ

 かつて、この大陸を血の海に沈めた……、『渇望した命脈(レヴィアタン・ラスト)』の再来だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最後らへんなんか壮絶っぽいのは置いといて、 『命が蠢く地星竜(リグルライフィ・アース)』ちゃん 吹っ切れてますやん…………。 この場合ヤケになったとも 言うような気がしますけども……。 最…
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