79 総員、再装備せよ
今日中にもう1話更新予定です
さて、「五大樹遺跡(仮)」を攻略するために僕らは再装備した。
昼のうちに食材を買い集めていた。最長で3日間は潜れる
2日間潜行して、見つからなければ帰ってくるという予定にした。
どうして僕らが急いでいるのかと言えば、僕のパラディーゾでの滞在が長引けば長引くほど、アラゾアは不審を抱くんじゃないかと思ったからだ。
それに遺跡の下調べもできない。アラゾアが創った遺跡なら資料なんて残ってるわけないしね。
パラディーゾに到着するまで、結構日数がかかってたよね。リンキンに寄ったりもしたし。
で、その間に僕らは装備を見直していた。
どうしてかって言うと、「63番ルート」での戦闘が大きい。あそこで、リンゴは攻撃の通じにくい相手が多かったし、エリーゼの剣も刃こぼれしていた。
全体的な戦闘力の底上げを検討したんだ。
「黄金の煉獄門」を踏破した際にもらった200万ゲムもあったからね。旅費や必要経費として50万ゲムを残したとしても、150万ゲム……とんでもない金額だ。
なので、かなり贅沢に装備を整えた。
まずエリーゼは、大剣を鍛冶に持ち込んで手入れをし直してもらった。これはリンキンから汽車に乗って、最初に降りた町にドワーフのいい鍛冶屋がいたのでそこでお願いした。
魔法による保護もかけてもらったので、刀身は薄い紫色に輝いている。
それ以外にも、ミスリル製のショートソード……刃渡りで50センチくらいの剣を腰に吊って、狭い通路や実態のないレイスなどの死霊系モンスターが相手でも戦えるようになった。
次いでリンゴだ。
リンゴは隠し刃を強化した以外に、スカートをたくし上げると太ももに投げナイフを仕込んだ。
靴の先端と靴底にもミスリルを入れ込んでキック力も上がっている。
「もう武器持てばいいじゃん……」
と僕が言うと、
「わたくしはメイドですから」
と答えた。
この家事タイプ(らしい)オートマトンはいったいどこへ行こうとしているのだろうか。
モラは、魔力切れが起きないように魔法宝石を追加で持つようにした。
ただ魔法宝石を直接購入するとお金がかかりすぎるので魔法を蓄積できる類の宝石を買い集め、毎日寝る前にせっせと魔法を込めたんだ。
そうしてできあがった魔法宝石は、既存のものとあわせて15個になる。
15回は気絶するほど魔法を撃ちまくれるってワケだ。
「まァ、俺っちが15発も特大魔法をぶち込まなきゃいけねェッて時点で、撤退しとけってェ話よ」
とはモラの言。確かにね。
そして僕だ。
モラが魔法宝石に魔力を貯め込む必要があったので、魔法弾丸の量産はできなかった。
とはいえ今までよりも大目に弾丸を持つことにした。
爆炎弾丸と酷寒弾丸、それに新たに雷撃弾丸と地殻弾丸をそれぞれ5発ずつ。
使用期限は2週間。
それ以外に鋼鉄製の弾丸を30発用意した。
パチンコそのものも交換したんだ。使用している棹の部分を聖銀製に変更した。聖銀っていうのはね、教会で長く使用された銀食器や銀製品をつぶし、再度加工したものなんだ。聖水と同様にアンデッドモンスターに対して高い攻撃力を持つ。で、そのパチンコを使えば、弾丸が通常のものであったとしても聖銀の影響でアンデッド抵抗が高まるというわけ。
スリングの部分は伸縮性のある動物性の繊維を使っていたのだけど、最近開発された「ゴム」というものや金属製の「バネ」というものもあるらしく、ちょっと迷った。
ゴムは伸縮性が高いけれど、切れやすい。
バネは伸縮性が高く切れにくいけれど、命中精度が落ちる。
いろいろ考えた結果、もとのとおり動物性の繊維にした。当たらなくなったら意味がないしね。
ゴムとバネのスリングも買ったので、実験しながら合う方を探してみるつもり。
「ご主人様……聖銀製になさったのですね」
「うん。きれいだよね、銀色が」
「ホーリーパチンコ……ご主人様の、聖なる●チ●コ……」
「リンゴ、今変なこと考えなかった?」
そんなどうでもいいやりとりもあった。
これ以外に、防御力を高める装備品も買った。
ハードレザー製の腕当てやすね当て。
着ている服も、硬く、衝撃を吸収してくれるようなものに。
睡眠には向いてないけどある程度は仕方ない。
あとは頭部保護だね。
僕は革製の帽子にして、リンゴは……ヘッドドレスがないとメイドとしての仕事ができないと言い張って、ヘッドドレスにプロテクトの魔法をかけることで対処した。
頭が破壊されてもオートマトンは行動できるみたいだけど、リンゴの場合は目に魔法宝石が埋め込まれているので、これが壊れると活動がかなり制限されるらしい。
リンゴはなにげに一番お金がかかっている。
その割りに一番見た目が変わっていない。
逆に、一番見た目が変わったのはエリーゼかもしれない。
エリーゼは耳当てもついている雪兎の毛皮を帽子にした。
頭は白く、兎の耳もついている。
肩と肘にはレザープロテクター。胴から腰にかけて、同じ素材でコルセットのようについている。
その下に着ているのはワンピースだ。
ハイソックスに、足下は膝下までのブーツ。
戦うお嬢様、という感じである。背中の大剣が物々しいけど。
これだけお金を使いまくっても、25万ゲムしか使えなかった。
うーん。冒険者って儲かるのか……? いや、そんなことないか……命をチップにギャンブルしてるようなものだしね。
「おォし。準備はいいか?」
モラの声に、みんなうなずく。
さあ、「五大樹遺跡(仮)」へ出発だ。




