18 新メンバーの実力を紹介するよ!
馬車は進んでいく。
四頭のデザートホースが牽いている。
すんごいスピードで。
これなら結構すぐ着いちゃうんじゃないの~? レジェンドクラスの遺跡まですぐなんじゃないの~? とか思ってたけど、そこまで甘くはなかった。
ストームゲートはオアシスのそばにある自治都市だ。
でもって、オアシス周辺はかなり岩盤がしっかりしているみたいだ。
オアシスから離れるに従って、岩盤がなくなっていく。
途中から、純粋に砂の上を走るようになった。
だからか。
途中で御者でもある主人が、馬車から降りて車輪の下にソリをつけたんだよね。
ここからは、砂の上をソリで滑っていくってわけ。
当然、速度はゆっくりになる。
「おお、なるほど! すごいですね。解錠って」
僕は馬車の中でラクサさんに解錠を教わっていた。
もともと僕は初級の錠前なら開けられるんだけどちょっと複雑になるとダメだ。それに魔法まで絡んでくると二重にダメ。
ただ魔法はモラに聞けばいい部分もあるから、今は鍵の基本構造を教えてもらっている感じ。
こういうのはプロの秘密というか、ご飯の種というか、とにかく貴重な知識だから教えてくれないかなって思ったんだ。
でもラクサさんは、「あ? いいよ、別に」という感じでサクッとOKしてくれた。この人、いい人かもしれない。
馬車は僕らが乗り込むといっぱいいっぱいだ。
もともと荷物の運搬に使うものだから座り心地もよろしくない。ただ、それでも幌がついてるだけマシだね。
この砂漠で直射日光なんて浴び続けていたら干上がっちゃうよ。デザートホースさんマジ偉いです。あとで労ってあげなきゃ。
外は、見渡す限り砂漠! っていう感じではあるんだけど、ある程度起伏があったりする。で、1時間に1回くらいの頻度でモンスターが現れる。
ここらにいるのは蛇、サソリ、蜘蛛、といったやつら。
砂に溶け込むみたいな灰色をしているから見つけるのがやっかいなんだけど、そこは僕の嗅覚やリンゴの超感覚(「気配です」とか言ってたけど僕から見たら超感覚です)で結構早めに発見できる。
や、こういう索敵みたいなのって僕の特権みたいなところがあったから……リンゴにさらっとそれをされると凹むよね。役割を奪われたっていうか……。
なーんて思ってたのは最初だけで、途中からはもうラクサさんに解錠を教わるのに夢中で全部リンゴに任せっきりになってた。リンゴさん有能です。うちに来てくれてよかった。夜中に僕を襲うのだけは勘弁な!
モンスターとの戦いはゼルズさんとレノさんが引き受けた。
リンゴも戦えるんだけど、
「姐さんは涼しいところにいてください。行くぜレノ」
「おうよ」
とか、なんか謎の使命感でふたりが戦ってた。
そのたびに馬車は一度止まる。僕らは見物である。
このふたり、強い。タレイドさんが「黄金の煉獄門」に送り出しただけはあるな、って思った。
だってさ、タレイドさんが遺跡へ行くことを許可したってことは、ゼルズさんパーティーなら遺跡を踏破できるかも? って思ったってわけなんだよね。
それもうなずける強さだった。
まずゼルズさんは僕じゃ絶対持てないくらいの大きい剣を使う。
剣、っていうか、板金? 鉄板? 分厚くて長いんだ。それをビュンビュン振り回して一刀のもとにモンスターをぶち切る。
もちろんモンスターだって的じゃないんだから動く。特に蛇とか素早いんだ。でかいし。僕の太ももくらい太くてでかい。正直、僕がひとりだったらすぐ巻き付かれて骨バッキバキにされる自信があるね。
ゼルズさんは間合いの取り方がとにかく上手い。
蛇――名前はファライド・グルケ・なんたらかんたらとかいうらしいけど覚える気もないのでとりあえず「蛇」で――蛇が、襲いかかってくる寸前に、踏み込む。
そして大剣の切っ先で蛇を切り裂くんだ。ぴゅん、って。
1回ごとの振りが大きいから隙ができやすいのが問題だけど、それを補うのはレノさん。
レノさんはクロスボウの使い手だった。
右手首から肘にかけてがっちり固定するタイプ。
仮にゼルズさんの攻撃が外れた場合、レノさんが横からモンスターに矢を撃ち込む。
これが結構な威力で、直撃して刺さらないモンスターはいない。どすんっ、て音が響いてくる。めっちゃ痛そう。
ただ、これは外してもいいやつだったりする。その間にゼルズさんは次の攻撃準備ができているからだ。
なかなかいいコンビ。
ね、僕があれこれする必要ないでしょ? むしろその時間は解錠の知識を得たほうがいいでしょ?
まあ、戦いはどうしても見物しちゃうんだけどね。




