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トレジャーハントに必要な、たった1つのきらめく才能  作者: 三上康明
第7章 事実と真実

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134 殿堂の地下

 殿堂の裏手にある事務室は小さかった。そこには地下へと続く階段が設置されていた。


「こんなところに……」


 導かれるままに僕らは下りていく。

 警戒はしていた。だけれどこんな場所で堂々と襲撃してくるようなことはないとも思っていた。僕らに声をかけてきた彼らは、正当なこの場所の管理者だったからね。

 殿堂の地下には、大きな部屋があった。会議室のように巨大なテーブルがあり、イスが並べられている。

 反対側にはさらに奥へと続く扉がある。

 勧められてひとつに腰掛けると、リンゴ、エリーゼ、ゲオルグも順に座っていった。


 声をかけてきた位が高そうな女性は僕の向かいに座る。

 年齢は……30代だろうか? 年齢不詳という感じもするけれど。

 気がつけば彼女以外の人間はいなかった。


「私はここの管理者であり、案内人です」


 そう、彼女は名乗った。


「これからの話をするにあたっては知られてはならないことが多く、人払いをしてありますのでご安心ください」

「はあ……」


 正直どういうことなのか、まだよくわかっていなかった。


「冒険者認定証を見せていただけますか? ――私のことが信用できないということであれば結構です。特に必要な条件というわけではありません。しかしもしも認定証を持っていないということでしたらすぐにも発行することをお勧めします」

「えーっと……見せるだけでいいんですか?」

「はい。全員分」


 僕は認定証を出しながら、エリーゼとリンゴが持っていないことを説明する。ゲオルグもさっと取り出した。

 この間もキッシンさんに見せたし、なんだか認定証を見せてばかりいるような気がした。


「…………」


 彼女――管理者は、やっぱり認定証を裏返した。今までこんなにも認定証の裏面が注目されたことはなかったよ。


「よくわかりました」

「――もういいんですか?」


 返却された認定証を僕とゲオルグが受け取る。


「さて、これから私はあることを説明します。それを受けるも受けないも皆様の自由です。ただし、あらかじめ伝えなければならないことがあります。それは……」


 管理者の目に、曇りが生じた。


「……命の保証ができないということです」




 警戒して立とうとしたリンゴを僕は手で押さえた。今すぐなにかあるわけじゃないでしょ。

 でも……イヤな予感がするのは間違いない。


「聞いたら死ぬかもってことですか?」

「ああ、そういうわけではありません。聞いた上で判断してくださって構いません。もし聞きたくないということでしたら帰っていただいても構いません」


 僕はため息をついた。


「神の試練のことでしょう?」


 ぴくり、と管理者の眉が動いた。

 ゲオルグがしゅばっとこちらを見たのを感じる。動きが犬みたいだとそんな場違いなことを僕は思った。


「そのとおりです。先ほど殿堂に入られたとき鐘が鳴りましたね」

「そうですね。時報ですか?」

「いいえ」


 くすりと彼女は笑った。


「ここ2年は鳴らなかった鐘ですよ」


 ……え?


「資格を持っていると判断された場合にのみ、鳴るのです。その資格とは……『神の試練に立ち向かうに値する』というものです」


 だからか。

 みんな鐘を見上げてたもんな……珍しいからだったのか。


「なにで判断してるんですか?」

「さあ。わかりません」


 また失われし技術(ロストテクノロジー)なの? あるいは魔法の一種?


「ともかく、あの鐘が鳴ったときに入場された方をここにこうしてお通しするのです。そして私は説明をして差し上げます。……『勇者オライエの石碑』について」


 さすがに。

 ここまで来れば僕も予想してたよ。

 神の試練である「勇者オライエの石碑」。それはやっぱりあの石碑なんだ。でも遺跡――攻略するべき遺跡、じゃない。神の試練に挑むべき人間のみをピックアップするためのものなんだ。

 それがあの鐘だ。

 どういう基準なのかはわからないけど……でもまあ、他の神の試練を突破している僕らは一発クリアということなのかもしれない。


「あの鐘が鳴れば突破なんですか?」

「いえ。ここからが皆さんの選択に委ねられます」


 管理者が指差したのは、奥の扉だった。


「――あの先にいる者と戦い、勝つこと。それが突破条件です。ただし命の保証はできません」




 説明が続いた。

 相手はひとり。こちらは何人でもいいけれど、神の試練について話せる相手――つまり心から信じている者しかパーティーメンバーとしては認められない。

 ここでは、僕ら3人とゲオルグは別々で行動する必要がある。


「俺は行く」


 ゲオルグは即決だった。


「ひとりでですか?」

「そうだ。俺には心から信じられる相手などいない……セバスチャンくらいか」


 執事のセバスチャンさん。ゲオルグを送り出して留守を守っているらしい。


「もう挑戦していいのか」

「はい、もちろんです」

「では行く」


 決めたらゲオルグは早かった。さっさと立ち上がると奥へと進んでいく。ドアを開けて向こうへ入っていくと――もう足音もなにも聞こえなかった。


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