古代の不要遺産
「これが何だかわかるかい? 」
教授が取り出したのは手の平ほどの小さなブロックだった。
ブロックにはいくつかのスイッチと大きな丸い出っ張り。
何かを照射するためかもしくは内部を保護するためなのか、薄く透明な板で塞がれている。
教授が側面のスイッチを押すとゆっくりと変形し始め、しかし途半端な形で止まってしまう。
小さすぎて持ちにくそうなボディの表面は銀色にコーティングされツルツルとした手触り。
私はいまいちこの個体の使い道がわからない。
「教授、いったいこれは何なんですか?
私にはさっぱりわからない、もしかして古代人の使用していた武器か何かでしょうか? 」
私の問いに教授は軽く笑い、ブロックを手に取った。
「安心しなさい、そんな物騒なものではないよ。
これは撮影機といって、その瞬間その場の風景や人物を静止画像としてこの中に
写し出すことができる機械だ」
予想以上に高度な古代文明の遺産に驚きを隠せず、私はただ教授の手にある撮影機を眺めていた。
「撮影機の中でもこれはかなり新しいものだね。撮影に触媒を必要としないタイプの物だ。
この時代の物は”デジタルカメラ”と呼ばれていたようだね」
デジタルカメラ、風景や人物を撮影し、画像として保存する。
我々にはないテクノロジーの一端を垣間見て、古代文明の偉大さをこれでもかと感じさせられる。
「まあ、私達は一度見たものは決して忘れないから、今の時代にあっても不要な物だがね。」
教授はそう言ってブロックをほいっとガラクタの山に放り投げたのだった。