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登山中の休憩

「…ハァ…ハァ……」

「大丈夫か?」

「な、なんとか…」

「少し休むか?」


 リアナは首を横に振って遠慮したが、やはり辛そうだ。

 まぁリアナがここまで疲弊するのも無理はない。

 俺ですらかなり辛いのだから。

 ロストドライブとユアランの間にあるこの山フォーゲルは山頂がロストドライブ側に寄っており、ロストドライブ側の道は短いが急な斜面で八時間ほどで山頂に行くことができる。

 逆にユアラン側の道は斜面が緩やかではあるがとても長い。

 更に整備されている道はかなり曲がりくねっており、一直線に行くより何倍も時間がかかる。本当に一週間かかってしまうくらいに。

 しかし川は真っ直ぐにユアランに向かって流れている。それに流れも早い。

 だからテト達の母親ように川に乗って行けば、半日でユアランに着くことができるが、俺達には川に乗る手段がない。

 そして今俺達はフォーゲルのロストドライブ側を登っているのだが……。


「リアナ、もう四時間も登ってるからそろそろ休もうぜ?」

「…私は…大丈夫です……」


 うーん…リアナはもう限界みたいだから休ませてやりたいんだが…。

 ん?ちょうど良さそうな木陰があるじゃん。よし、それじゃ…。


「リアナ、あそこで休もう」

「ですから…私は……大丈夫…ですって……」

「いや俺が休みたいから休むんだよ、それならいいだろ?」

「……そういう事でしたら…」


 そう言ってリアナは木陰へ腰を下ろした。

 俺は鞄から水筒を出してリアナに渡した。


「ほら、水」

「あ、ありがとうございます…」


 俺から水筒を受け取ると、リアナは一気に水を飲んだ。


「んく、んく、…ぷはっ……ふー…」

「そんなに疲れてるならもっと早く休めばいいのに」

「い、いや今休んでいるのはティファが疲れたというので休んでいるので決して私が疲れて休んでいる訳ではっ!」

「わかったわかったから」

「じゃあなんで笑っているのですかっ!」

「なんででしょうね〜」

「ちゃんと答えてください!」


 意地張って顔を真っ赤にしながら言い訳をするリアナの顔が可愛いから、なんて言ってみたらどうなるだろう?


「意地張って顔を真っ赤にしながら言い訳をするリアナの顔が可愛いから」


 あ、口に出ちゃった。まぁいいか。だって、


「ふぇっ!?」


 更に顔を真っ赤にした、弄りがいがありそうなリアナを見ることができたのだから。


「急になんですか!?」

「俺が笑っている理由を言っただけだけど?」

「それにしたって、そんに直球で言わなくても…」

「だって理由を聞いてきたのはリアナでしよ?」

「そ、それはそうですけど…」

「それともリアナは照れてるのかなぁ?」

「て、照れてなんか…」

「本当に?」

「……いえ、本当は照れています」

「お?」


 リアナの態度が変わった?

 そしたらリアナが俺の方を向いた。

 真っ赤で、それでも微かに笑みを浮かべて、俺に言った。


「だって……また貴方に可愛いって言われたから…」


 今度は俺の顔が赤くなった。


「なっ…急になんだよ!?」

「だって貴方に可愛いって言われること滅多に無いんですもの」

「それにしたって今そんなこと言わなくても…」

「あれぇ?もしかしてティファ、照れてます?」

「て、照れてなんかねーよ」

「本当ですか?」

「本当だ!」


 リアナがいきなり変なことを言ったから驚いて顔が赤くなっただけだ、決して照れた訳ではない!


「ティファ」

「なんだよ」


 表情が戻ったリアナが俺の肩に寄り添いながら呼んだ。


「ティファは私のことどう思っているのですか?」

「どうって…」

「私はティファのこと好きですよ」

「え!?」


 好きってどういう事!?恋愛対象として?それとも普通に友達として?どっち!?

 イヤイヤ少し落ち着け、俺よ。普通にこの場合の好きは友達としてに決まっているだろ。だって俺達はまだ会って半年も経っていないんだ、一目惚れでもして無いと好きなんて言わないだろ。それにリアナは男性恐怖症だ、男の俺に一目惚れなんてありえないはずだ。それに女の俺が好きだという線もない。リアナの恋愛対象が女だって話は聞いたことがないし、もし仮にそうだとしても……そうだとしたら………いやまさか………でも俺は男だし……今は女だけど……あれ?もしかして………本当にリアナは俺の事───


「リアナ」

「はい?」

「その好きって、どういう意味?」

「え、意味?」

「だから、そのー…なんていうか……」

「?」

「えーと、ね?……」

「………あ〜、そういう意味ですか」

「そうそう、そういう意味」


 やっと理解してくれた……。

 で、リアナの「好き」の意味はいったい?


「私の言った好きの意味なら」

「なら?」

「……どっちでしょうね?」

「へ?」

「ふふふ…」


 リアナは俺の肩で微笑みながらそう言った。


「ちょっとリアナ?どっちでしょうねって…」

「だって私もわからないんですのも」

「そうなの?」

「ええ、私のこの感情が恋愛か友情なのか、わかりません。でも」

「でも?」


 リアナは少し間を置いて言った。


「……この気持ちが好きって感情であることは良くわかります」


 そう言うとリアナは照れ隠しをするように俺の胸に顔を押しつけた。


「…そうか」

「はい」

「じゃあ、いつかわかったら…教えてくれ」

「……はい」


 俺はリアナの頭を撫でながら、さっきリアナが飲んでいた水筒を取って自分の喉を潤せた。

 するとリアナが顔を上げて聞いてきた。


「ところで結局ティファは私のことどう思っているのですか?」

「え?」


 ああ、そういえばそんな質問されてたね。


「俺も好きだよ。恋愛か友情かはわからないけど」

「じゃあティファも…わかったら教えてください」

「ああ」


 その言葉を聞くとリアナは、また俺の胸に顔を埋めた。

 そして俺はまたリアナの頭を撫でながら、身体を休めた。

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