魔法と初めての野宿
「リアナ、準備は整ったか?」
「はい。……でも今日出発するのですか?」
「そうだ」
「何故?」
「それは……」
城に居ると気疲れするからって言うのが本音だけど……言わなくて良いか。
「まぁ良いだろ。気にすんな」
「?わかりましたわ」
「じゃあ行くか」
「はい」
そうして俺達は旅立った。
ロストドライブを出てとりあえず、国境の街セブンツーに行くことにした。
理由は情報を集めるためだ。
セブンツーは国境にあるため両国の情報が入るのだ。
ついでに言うとセブンツーはどちらの国でもなく、独立地区である。
「あの、ティファ」
「なんだ?」
「セブンツーにはどうやって行くのですか?」
「セブンツーはロストドライブから北西の方向にある。ただ、ロストドライブからセブンツーに行く街道はないからなぁ……」
俺一人なら獣道だろうが道が無かろうが構いなしに、一直線に街を目指すが……今回はリアナがいるからな……。
「どうしようか?」
「何がです?」
「道」
うーん……一直線に目指した方が早いが、危険だ。ただ安全な道を通ると時間が掛かるからな……。
「なぁリアナ」
「何ですか?」
「危険な近道と、安全な遠回り。どっちが良い?」
「安全な遠回りで良いのでは?」
「そうか」
リアナがそう言うならそうするか。
「だとするとまず、西にあるユアランと言う街に行き、その後更に西にあるアストロイドと言う村に行き、北のイレーソンと言う街を経由してセブンツーに行くのが良いだろうな」
この道なら街道はあるからな。
「なるほど。ではさっそくユアランに行きましょう」
「あぁ」
とりあえずユアランに行くことになった。
夜。
「リアナ、今日はそろそろ休もう」
「はい」
そう言うとリアナは近くにあった大きな石に座った。
「疲れたか?」
「はい……」
そうだろうな。行きなり旅に出ろって言われて、その日のうちに旅に出たんだから。
「じゃあ薪を拾ってくるから夕食の準備をしていて」
「わかりましたわ」
俺が薪を集め、近くの小川から水を汲んできて、リアナが薪に火をつけ、具材を切って沸騰した鍋の中に入れた。
後は味付けして煮込むだけだ。
煮込んでいる間暇だったので、リアナに話し掛けた。
「そう言えばどうやって火をつけたんだ?」
「魔法ですよ」
「魔法使えるのか?」
「はい。ティファは使えないのですか?」
「いや、闇属性の魔法だけ使える」
「闇属性だけ?」
「そうだ」
魔法には属性がある。
炎、水、風、地、氷、雷、闇、光の八つだ。
更に魔法には下級、中級、上級と別けられている。
魔法は魔法陣を書き、詠唱することで発動する。
「何故闇属性だけ使えるのですか?」
「さぁ?」
「さぁって……」
魔法の修行はしたこと無いが、超人になったら使えるようになっていた。但し闇属性だけ。
なんで闇属性だけなのかはわからないが。下級魔法だけだし。
と言うか中級以上の魔法陣と詠唱知らないし。
「リアナはどの位魔法使えるんだ?」
「私ですか?私は全ての属性で中級魔法を使えます」
「マジ?」
「はい」
うわースゲー。そんな奴なかなかいないぞ、それこそ本職の魔法使いでもないと。
「ティファが使える魔法を見せてください」
「えっなんで?」
「良いから早く」
我が儘だなぁ……まぁ良いけど。
「わかったよ」
そう言うと俺は誰もいない方へ魔法陣を書いた。
「結構早いですね」
なにその上から目線……。
魔法陣を書き終わり、詠唱に入った。
「闇を示す牙“ハング”」
詠唱が終わると魔法陣から黒い牙が出てきた。
その牙た誰もいない方、森へ向かって行って、
バキッバキッバキッバキッバキッ……
樹に当たる度に噛み折り、六本目の樹に当たると消えた。
「こんな感じだ」
「…………………………………すごいです」
「へ?」
すごい?何が?
「すごいですよティファ!」
リアナが詰め寄ってきた。
「何がすごいんだ?」
「威力ですよ」
「威力?」
「そうです。普通ハングではせいぜい樹を一本折ることしか出来ないのに」
「そうなんだ」
だから五本折った俺はすごいのか。
まぁ確かに詠唱も短いしそんなに強い魔法では無いよな。
「じゃあ次はリアナだな」
「え、何がです?」
「魔法。俺は見せたんだからリアナも見せろ」
「はぁ、わかりましたわ」
そう言うとリアナも森に向かって魔法陣を書き始めた。
……早いな、俺よりも。
リアナは魔法陣を書き終わり、詠唱に入った。
「冥土を守り、闇を示す牙“ブラッティハング”」
リアナが書いた魔法陣から黒い獣が出てきた。
その獣は森の樹を二十本ほど折ったところで消えた。
「リアナの方がすごくない?」
「そうでもないですよ」
「だって俺よりも威力高いし」
「それは中級魔法だからです」
「そうなの?」
「はい。ブラッティハングはハングの中級魔法です」
そうなんだ。確かに詠唱も似ていたしな。
「あ、そろそろ良いんじゃ無いですか?」
「何が?」
「お鍋」
「そうだな。すっかり忘れてたけど」
そうして俺達は適当に具材を入れた鍋を食い、床についた。
「うわー!寝袋で寝るなんて初めてです!」
「そりゃそうだろうな。でも早く寝ろ。寝ずの番は俺がやるから」
リアナのテンションが異様に高いが、そのうち寝るだろ。初めての旅で疲れているだろうし。
「…………」
ほら静かになった。
焚き火に薪をくれたりして時間を潰していると、
「ティファ」
「ん?まだ起きてたのか」
リアナが話し掛けてきた。
「どうした、眠れないのか?」
「…………はい」
「なら、目を閉じて身体を休めろ。明日もちゃんと動けるようにな」
「…………ティファは?」
「俺は大丈夫だ。これくらい慣れている」
「…………そうですか……」
「だから安心して休め」
「…………はい」
そう言うとリアナは黙ったが、またすぐに声を掛けてきた。
「…………ティファ」
「今度は何だ?」
「ティファは前は一人で旅をしていたのですよね?」
「そうだが?」
「その時はどうしていたのです?」
「何が?」
「寝ずの番」
なんだ、そんなことか。
「一人で旅をしていた頃は徹夜か宿に泊まるかだったな。まぁたまに野宿中に寝ちまう事もあったが、その時も警戒はしていたな」
「そうですか……ならティファ。一つお願いがあるのですが……」
お願い?なんだろ…。
「なんだ、お願いって」
「あの……その…………」
リアナが恥ずかしそうに顔を赤らめ、なかなか言わなかったが、やっと言った。
「……えっと……その……一緒に……寝てください……」
それを言い終わるとリアナは更に顔を赤らめた。
「一緒に?なんで?」
「えっと……笑わない?」
「笑わない」
「……こ……怖い…から……」
「怖い?野宿が?」
それにリアナは頷いた。
「ふーん……野宿が怖いねぇ……」
「だ、だから……一緒に寝てください」
「それは構わないが……なんで恥ずかしがってんの?」
「だって……野宿が怖いから一緒に寝てなんて……」
「怖がりみたいで嫌ってか?」
「……うん」
そうかな?初めての野宿が怖いってのは普通だと思うが。
「わかった。一緒に寝れば良いんだろ」
「寝てくださるの?」
「あぁ」
そう言うとリアナは嬉しそうに笑った。
「よかった……じゃあ寝ましょう」
「そうだな」
そして俺が自分用の寝袋を用意していると、
「……?何をしているのです?」
「え?何をって」
リアナは俺がやっていることが不思議らしい。
「俺の寝袋を用意しているのだが」
「え?一緒に寝てくれるのではないのですか?」
「へ?」
一緒に寝るって、こういうことじゃ無いの?じゃあいったい……。
理解しきれていない俺にリアナは、
「だから、一緒の寝袋で寝てくれないのですか?」
と言った。
「一緒の寝袋に?」
「はい」
一緒にって……そう言うことか…。
「でもそれは一人用の寝袋だぞ?」
「頑張れば二人で寝れます」
まぁもともと成人男性(俺)用の寝袋だから、女二人なら入るかも知れないが…。
「かなりきつくなるぞ?」
「大丈夫です。その方が安心できます」
……そこまで言うなら…。
「わかった。じゃあお邪魔するよ」
そう言うと俺はリアナの寝袋に入った。
少しきついが苦しいほどでは無かった。
「ふふっ。これでいつも通りです」
リアナが嬉しそうに言った。
「そうだな……明日からも一緒に寝るか?」
「っ!……はい!」
俺の提案にリアナは喜んで賛成した。
その数分後、リアナは寝た。
そして俺もリアナを抱きしめながら意識を手放した。
時間が掛かってすいません。
魔法名と詠唱を考えるのに苦労しまして……。特に詠唱は苦労しました。小難しい言葉を使った方が良いのかな?と思いながら、最終的に何となくこんな感じで良いかな?って感じになってしまいました。
あー誰かアイディアくれないかなぁ………はいすいません。自分で考えます……。