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旅に

 リアナと服を買った日から数ヶ月経った。

 今日もリアナの護衛をやっているが服は男物だ。

 女物の服を買ったのに何故男物の服を着ているかと言うと、女物の服が一組しか無いからだ。

 あの時は昼食を食いに行こうとしていたのでそんなに持ち合わせがなく、一組しか買えなかったのだ。

 その時以降外に出ていないから、女物の服を着るのは週に一度位だ。

 週に一度でも多い方だと思うが、リアナは毎日俺に女物の服を着て欲しいらしく、早く買い物に行きたいらしい。

 この数日で思い知った事がある。

 それはリアナが以外と我が儘で甘えん坊だと言うことだ。

 リアナは何かをして欲しいと思ったら、相手がそれをするまでねだり続けるか、強引にそうさせる。

 甘えん坊だと思ったのは、いつも俺とリアナは一緒に寝ているが、起きたときにリアナが俺にベッタリとくっついているのだ。

 確かに同じベットに寝ているから多少くっつくのはわかるが、手と足を身動きが出来なくなるほど絡めるのは如何なものか。

 その他にも、城の中で周りに誰も居ないときは必ず手を繋いでくる。

 俺もそれが嫌ではないので指を絡ませて応じているが。

 そして不思議なのが、我が儘と甘える対象が俺だけだと言うことだ。

 父親である国王やバーダッツ、レスタ等の男だけで無くメイド等の女相手でもその様な我が儘や甘え等を言わない。

 まぁ、俺だけにそういう態度をすると言うことは俺が一番リアナと親しいと言うことだろう。

 それは嬉しいのだが……俺が(ラスティ)だった頃の奥ゆかしいリアナは何処へ行ったのだろう……。

 そしてそのリアナは今、勉強中だ。

 正直本当に暇だ。

 だが後一時間で終わりだ。それまでの辛抱だ俺!






 一時間半後。

 リアナの勉強が終わり、昼食を済ませた。

 本来なら午後から剣術の修行なのだが、剣術の先生であるレスタは今新兵の訓練で忙しいので来られない。

 結果リアナは午後暇になるのだ。


「さて、今日は何をする?リアナ」


 ようやく自由時間になったのでリアナに声を掛ける。


「そうですね……そろそろ買い物に行きませんか?ティファもお給料入っている筈だし」

「え……マジで?」

「マジです」

「何買うの?」

「女物の服です」


 やっぱり……。


「今ので十分じゃない?」

「一組しか無いじゃないですか!」

「いや、だから一組だけで良くない?」

「良くありません。さぁ行きますよ、着替えてください」

「何に?」


 城の中でも俺もリアナも外行き用の服装をしている。理由は城は職場なので例え住んでいようと自室以外では外行き用の服装をするのだ。俺もリアナに言われて外行き用と私服を分けるようにしているし。


「女物の服にです」

「でもそれは明日着る予定だよ?」


 今着たら明日も男物の服になるが。俺はそれでも良いけど。


「大丈夫です。明日から着る分の服をこれから買うのですから」


 それってもしかして……。


「まさかとは思うが、リアナ?」

「何ですか?」

「俺は明日から女物の服しか着れないのか?」

「そうですが?」

「…………」


 どうしようこの状況?


「で、でもそしたら大荷物になるだろ?どうやって持って帰るんだよ?」

「それは店に送って貰いましょう」


 搬送サービスをここまで憎く思う日が来るとは。


「さぁ諦めて着替えてください」

「うっ……」

「早くしないと無理矢理脱がしますよ?」

「えっ嘘!?」

「本当です。あと三秒以内に着替えてください。はい三二一!」

「早いって!」

「ゼロ!じゃあ脱がすよ」

「ちょ、リアナ待って!」


 ヤバイ、本当に脱がされる!既に上半身裸にされたし。

 

「あ、ちょっとリアナ!待て!」

「待ちませんわ」


 そう言うとリアナは下の方に手を伸ばした。


「わかった!着替えるから脱がさないでくれ!?」

「もう遅いです!」


 リアナは一気に俺のズボンを下ろした。


「さぁ観念して?」


 リアナの目が怪しく光るのを確認すると、俺は諦めた。






 リアナに着替えさせられて俺達は街に出た。

 そして服を買い、その後少し街を見物していると後から声を掛けられた。


「リアナ姫!ティファ少将!」

「ん?お前は確か……」


 俺達を呼び止めたのは兵士だった。

 しかも何処かで見たことのある人だ。


「はっ!、私はカタル・ニース少尉です」

「あー思い出した。レスタの部下か」

「はい」

「それで、私達に何か御用があるのでは?」


 リアナが聞いた。


「そうでした!リアナ姫、ティファ少将、至急城にお戻りください」


 城に?


「何かあったのか?」

「詳しい話は城の方で」

「わかった。では行くぞ」

「はっ!」

「リアナ、ちょっと失礼」

「え?……うわっ!?」


 俺はリアナをお姫様抱っこした。


「ティファ!?いったい何をするのです!?」

「走るのにヒールは厳しいだろ?」

「それはそうですが……」

「じゃあカタル、行くぞ」

「はっ!」


 そう言うと俺とカタルは城に向かって走った。






 城に着き、そのまま謁見の間に直行した。リアナをお姫様抱っこしたままで。

 謁見の間には国王だけでなく、バーダッツとレスタがいた。


「どうしたんだ?国王」

「その前に私を下ろしてくださいティファ」

「あ、ごめん」


 リアナを下ろした。

 それを見届けると国王は俺達を呼び出した理由を説明し始めた。


「実は先程、ヴァンズランドから使者が来た」

「なっ!?」


 なんでヴァンズランドから使者が?

 だが、国王が次に発した言葉がそれ以上のショックを俺に与えた。


「その使者が【重力(グラビティ)】ヤイトだったのだ」

「【重力(グラビティ)】!?どう言うことだ?」

「【重力(グラビティ)】がヴァンズランドの使者としてきた……つまり」

「【重力(グラビティ)】ヤイトはヴァンズランドに着いたと言うことです」


 俺の疑問にバーダッツとレスタが答えた。

 そして国王が言葉を続けた。


「そう言うことだ。現在ヴァンズランドに二人の超人がいるのに対してこちらは一人そこでリアナとティファに頼みがあるのだが……」

「なんだ?」


 俺とリアナに頼み?


「お前達に超人を探して欲しいのだ」

「なんだと?」


 超人を探す?何のために。


「ヴァンズランドに二人の超人がいると言うことは、それに対してこちらも超人を引き入れなければならない。そうしないとこちらは戦争で不利になってしまう。故にお前達に超人を探して欲しいのだ」

「どうして俺達なんだ?」

「同じ超人のお前の方が説得しやすいだろう?」

「だが、リアナは?」

「お前はリアナが側にいないと死んでしまうだろ」


 それは……そうだが。


「頼む。お前達にしか頼めんのだ」


 国王が頭を下げてきた。


「じゃあその前に俺の質問に答えろ」

「なんだ?」

「何故戦争をする?」

「それは……」


 リアナの護衛を始めてから、ずっと疑問に思っていたことを聞いた。


「どうしてだ?」

「うーん……」


 だが国王はなかなか答えない。


「何故答えない」

「それは……」


 国王は言い淀んだが、やっと答えた。


「理由は無いのだ」

「理由が……無い?」

「そうだ」


 どう言うことだ?


「私達は昔からヴァンズランドは敵だと教わって来たので、それに戦争はヴァンズランドの方から攻めてきてるのですよ?」


 国王の代わりにリアナが教えてくれた。

 ヴァンズランドが攻めている?そうなのか?

 俺はデモンズパークが攻めて来ていると教わったが。


「だから私達は戦争をしているのです」


 リアナはそう言いった。


「ふーん……なるほどね」


 つまり、理由はあるかもしれないがわからない、ってことだろ。


「わかった。じゃあ俺はどうやって超人を探せば良い?」


 聞きたいことは聞いたので、本題に戻した。


「旅に出て欲しい」

「旅に?」

「そうだ」

「旅をして超人を探せってことか」

「そう言うことだ」


 旅ね……俺は構わないが、


「リアナは良いのか?」

「私ですか?」

「ああ」

「私は良いですわよ」

「良いのか?」

「ええ。ティファが一緒ですもの」


 俺と一緒だから良い……か。そう言って貰うと嬉しいものだな。


「わかった。リアナも良いらしいし、これから旅の準備をするよ」

「すまないな」

「だが国王。これだけは言っておく」

「なんだ?」


 俺は国王を軽く睨み付けて言った。


「超人は戦争の道具じゃ無いんだ、数で対抗しようとするな」


 俺は今の会話で国王が超人を道具として見ているように思えた。だからこその言葉だ。


「………それはわかっている」

「なら良いんだが……」


 そう言うと俺はリアナの手を引いて部屋を出た。






 ティファとリアナが部屋を出た後、国王はバーダッツとレスタに話し掛けた。


「私は超人を道具として見ているのか?」

「少なくともティファにはそう感じたのでしょう」


 それにバーダッツが答えた。


「超人は難しい存在です。ティファが姫の眷族になったのも奇跡と言って良いでしょう」

「そこまでの存在か……」

「はい」

「だが、何故リアナの言うことは聞くのだろうか?」

「それは……」


 バーダッツも頭をひねった。

 そこにレスタが混ざった。


「ティファは仕事だからじゃ無いですか?」

「仕事?」

「ティファの仕事は姫の護衛。その対象との仲が悪ければ仕事になりません」

「なるほど、だからか」

「まぁ…それだけでは無いかも知れませんが」

「どう言うことだ?」

「それは言えません。まだ確実なことではないので」

「そうか……」


 国王はティファとリアナが出ていった扉を見た。


「ともかく、国のために頼むぞ。リアナ、ティファ」

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