1-6.旅立ち
それからのトリ・トレは落ち込んでいたのが嘘の様に、怒涛の如く動きまわった。ジョヤちゃんの準備は私が揃えてあげる!と言いながら、ヴァルシュの財布を奪い取り、村中の店を漁り、女将さんに猛烈アタックをし、次々と戦利品の山を築き上げる。
手を繋がれ、引っ張られるジョヤの足は、心なしか宙に浮いている気がする。
その頃ヴァルシュは一人寂しく、結果を伝えにギルドへ行き、出発の準備を整えて、宿の食堂で待っていた。
結局、トリ・トレとジョヤが戻ってきたのが、昼少し前。
出発の準備が整ったのが昼過ぎ。
出発するには遅い時間だが、明日に延ばさないのには訳があった。
「嬢ちゃん、これから里には直接行かず、一旦、ポルトを経由して行こうと思う。元々、俺とトリ・トレはここで落ち会い、そこに行く予定だった。申し訳ないが依頼を先に済ませたい」
出立がこのドタバタで少し遅れ気味になっている。あまり余裕はない。その後行くはずだった街や、村は、里からの依頼で代理のハンターが動いているが、ポルトだけは間に合わなかった。
「あと、嬢ちゃんを里まで送り届けるという正式な依頼があった。これは嬢ちゃんの取り分だ」
「え!? 依頼あったの? あのドケチな長老が良くお金を出したわね」
「俺と嬢ちゃんだけな。トリ・トレは里の規定にそった形で動けとのことだ」
そういうとヴァルシュは、ジョヤの掌に、ズシッとした真新しい皮の袋を乗せる。
ジョヤには告げなかったが、ギルドでは、この事を正式な依頼とするための舌戦が繰り広げられていた。勝者は言わずもがなヴァルシュである。
さあ行くかと声をかけ、村を発つヴァルシュ。ずん……と、音が聞こえそうな表情で、また、タダ働き……と消えそうな声で呟いているトリ・トレと、それをどうしたら良いのかと、ヴァルシュに手を引かれ見つめるジョヤの姿がそこにはあった。