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108の鐘と花と獣  作者: 飛鳥
1章.鳴り響く鐘の音
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1-6.旅立ち

 それからのトリ・トレは落ち込んでいたのが嘘の様に、怒涛の如く動きまわった。ジョヤちゃんの準備は私が揃えてあげる!と言いながら、ヴァルシュの財布を奪い取り、村中の店を漁り、女将さんに猛烈アタックをし、次々と戦利品の山を築き上げる。

 手を繋がれ、引っ張られるジョヤの足は、心なしか宙に浮いている気がする。

 その頃ヴァルシュは一人寂しく、結果を伝えにギルドへ行き、出発の準備を整えて、宿の食堂で待っていた。

 

 結局、トリ・トレとジョヤが戻ってきたのが、昼少し前。

 出発の準備が整ったのが昼過ぎ。

 出発するには遅い時間だが、明日に延ばさないのには訳があった。

 

 「嬢ちゃん、これから里には直接行かず、一旦、ポルトを経由して行こうと思う。元々、俺とトリ・トレはここで落ち会い、そこに行く予定だった。申し訳ないが依頼を先に済ませたい」

 

 出立がこのドタバタで少し遅れ気味になっている。あまり余裕はない。その後行くはずだった街や、村は、里からの依頼で代理のハンターが動いているが、ポルトだけは間に合わなかった。


「あと、嬢ちゃんを里まで送り届けるという正式な依頼があった。これは嬢ちゃんの取り分だ」

「え!? 依頼あったの? あのドケチな長老が良くお金を出したわね」

「俺と嬢ちゃんだけな。トリ・トレは里の規定にそった形で動けとのことだ」


 そういうとヴァルシュは、ジョヤの掌に、ズシッとした真新しい皮の袋を乗せる。

 ジョヤには告げなかったが、ギルドでは、この事を正式な依頼とするための舌戦が繰り広げられていた。勝者は言わずもがなヴァルシュである。

 

 さあ行くかと声をかけ、村を発つヴァルシュ。ずん……と、音が聞こえそうな表情で、また、タダ働き……と消えそうな声で呟いているトリ・トレと、それをどうしたら良いのかと、ヴァルシュに手を引かれ見つめるジョヤの姿がそこにはあった。


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