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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
龍神之子
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龍神之子・8




 ご飯も食べた。お風呂も入った。


 後はこのふわふわのベッドに飛び込むだけ。この部屋には小さな冷蔵庫があって、飲み物が入っている。まさしくいたせりつくれり。


 布団の中に入って、明日の事をメイちゃんと話し合おうと思っていたら、いつの間にか眠っていたらしく、小窓から入ってきた日の光で目が覚めた。



「(どうゆう仕組みなんだろう……あぁ、そういえば庭があるとか言ってた。それで擬似太陽でも作っているのかな)」



 寝ぼけ眼で見ていたら、隣で眠っていたメイちゃんも光に気付いたらしく、ぼーとしたまま小窓を見ていた。



〈お互い、極限状態だったんだのぉ〉



「そうだね。今日の予定も話さずに眠っちゃったもんね」


 


 全ては化学&魔法合同製作倶楽部で作ってくれていて、魔法とかファンタジーの力を全く使えない私でも扱える仕様にはなっているけど、体力だけはどうにも出来ない。地味~に私の体力を削っていくんだよね。


 安全区域を作る為に、この辺り一帯を片付けたんだけど、私とメイちゃんの体力はとうの昔に限界を越えていたらしい。感情の高ぶりで、ソレには全く気付けていなかった。


 もぞもぞとベットから下りて、台所で朝食のメニューを決めようと冷蔵庫の前に座り込む。



「サラダとー。オムライスも美味しそう。カフェオレはメイちゃんも好きだから大丈夫」



 うとうとと、私の肩にタオルをかけたような体勢で眠りそうなメイちゃん。



〈我もそれで構わん……〉



 寝ぼけ状態で頷くメイちゃんはかなり可愛い。この金色の瞳も綺麗だし。そんなメイちゃんを完全には起こさないように、ゆっくりと机の上に朝食を並べていく。昨日のカレーと違って今回は、机の上に真空パックされた料理を置くと、何故か袋が皿へと変わり、美味しそうな料理がセットされていくのだ。サラダも丁度1人分。


 そしてドレッシングの瓶も机の上に置かれて……仕組みはどうなっているんだろう。数種類の瓶が袋から飛び出してくるんだけど。


 でも、本当にいたせりつくせり状態。


 とりあえず私はシーザードレッシング。メイちゃんはゴマ。その時の気分によるけど、今朝はそんな気分。


 メイちゃんを私と向かい合う椅子に座らせ、私の椅子に腰掛ける。


 その後は無言でご飯を食べ始めた。


 美味しすぎて言葉が出てこないのだ。


 副委員長たちの用意してくれたご飯って、何でこんなに美味しいんだろう。


 メイちゃんも私も、朝からしっかりと食べる派だから、デザートまで完食。こんな状態でもしっかりとご飯を食べれる。何て嬉しいんだろう。


 ありがとう皆。ありがとう副委員長。


 10時のおやつが今からとっても楽しみです。


 しかしこの後をどうすればいいのか。解決策は未だに思い当たらない。何といっても、私に特殊な能力なんてない。至って普通という言葉が似合う一般人でしかないのだ。


 あの怖い何かにどうやって立ち向かえばいいのか。


 考えれば考えるほど、思考の渦に飲み込まれて結論が出てこない。


 ただ一つだけ特殊があるといえば、普通だから閉められる扉があるって事ぐらいかな。それで勇者認定をされたし。


 うーん。この世界に扉なんてないよね。


 うんうんと唸っていたら、メイちゃんが自分もいるとばかりに頬ずりをしてくれた。



「んー」



〈わしもおる。チートアイテムもある。何とかなるじゃろう〉



 メイちゃんが口にしたチートアイテムという言葉がなんかおかしくて、笑いが漏れると同時に肩から力が抜けた。


 そうだよね。副委員長達が準備してくれたアイテムは山ほどある。そこに、この事態を解決させる何かがあるかもしれない。そう思うと、沈みかけていた気分が一気に上昇した。


 お腹がすいて、1人ぼっちだったあの時とは違う。



「よし! それじゃあアイテムの確認に行こっか!」



〈うむ。それが良かろう〉



 私の言葉にメイちゃんが頷いてくれた。


 2人で探せば大丈夫。きっと何かがある。


 チートアイテムは必ず入ってる。きっと幾つものアイテム達がまっているはず。


 副委員長に限って、用意していないなんて事はない。


 そんな自信はあった。多分間違いないはず。


 ふよふよと尻尾を左右へと動かすメイちゃんを肩に乗っけて、倉庫へと向かう。


 


 この家の凄い所といえば、さっき思い出したばかりだけど、裏口から外(結界内の)に出れる。一歩間隔で置かれた形の違う平べったい石の上を歩いていくと、10m程で倉庫にたどり着く。


 庭で寛ぐ事も出来るシール式結界ハウス庭付き。


 何処までいくんだろう。


 家シリーズのシールは。



「……」



 まぁいっか。便利だし。


 深くは考えずに、宝物探しのように倉庫の中を見回そうとして、動きを止めた。



「……とっておいたんだね」



 出来れば、二度とお目にかかりたくなかった。


 神様は時として残酷だ。


 私の目の前には、ケースに飾られた真っ白なロープ。


 羽が生えたかのような、真っ白な可愛らしいブーツ。


 


 そう……これは懐かしの勇者の衣装。


 一体何処にいったのかと思っていたら、こんな所にあったんだね。なくしたと思い込んでいたけど。



〈ん……これは〉



 私の動きが止まった事を不審に思ったのか、私の視線を追ってメイちゃんが猫耳付きフードのロープを見つけて声を漏らす。



〈凄いではないか!


 長く生きているが、このような物は天上の宝物庫にないぞ!!〉



 テンションマックスなメイちゃん。



「ないだろうね」



 だって、猫耳付きロープだよ。



〈宝だ! まさしく選ばれた者だけが身にまとう事を許された衣だの〉



 どうしてこんなにテンションが高いんだろう。


 そしてそれとは対照的に、下がっていく私のテンション。


 これ……そんなに凄いんだ。


 んでね、メイちゃん。


 その勇者ロープは私以外は身に付けられない装備だしね。他の人が着たら呪われるから。


 思わず溜め息を漏らしながら、私は真っ白ふわふわなロープを手にとった。





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