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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
龍神之子
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龍神之子・7




 メイちゃんとお互いの姿を確認する。お互いチートアイテムで身を固めて、それを直ぐに使用出来る場所についているかの最終確認。


 ご飯もたっぷりと食べたし、メイちゃんも必死に神力を身体に集めた。魑魅魍魎の中、純粋な神力を集めるのは大変だったみたいだけど、私からも随分と力は返せたと思うんだよね。結界も強化も全てアイテムで賄えているから、遠慮なくメイちゃんに力を返せるし。


 お互いの確認を終えて握手を交わす。大丈夫。化け物の数は半端じゃないけど、こっちの装備も半端なものじゃない。


 チート軍団が用意してくれたアイテムの数々は、劣る所か凌駕してると思う。




「メイちゃん」




〈うむ〉




 メイちゃんは私の肩に乗っているんだけど、お互い気合を入れて一歩足を前に踏み出す。すると、結界から出た瞬間、そこら中に漂っていた化け物たちが一斉に私たちの方へと飛んで来た。


 これは予想通り。


 皮のベルトに入れてあった水鉄砲を取り出し、赤色の水弾を打つ。飛び出したのはただの弾ではなく、魑魅魍魎の元に届いた瞬間形を変え、ネットへと姿を変えた。


 赤は浄化。もしくは相手の力を抑える。


 それで随分化け物たちの動きは抑えておける。1回撃った程度じゃ数が多すぎて、全然足りてないから立て続けに弾を打ち続けた。一通り化け物の動きを止めた後、白の水弾に変えて一通り撃ち込む。白色の弾の効果は、光に導く弾……らしい。浄霊という形で化け物たちを天に帰すとかなんとか。


 ちょっと見えすぎて困るけど、ずれないゴーグルを付けて結界の外に出て正解。水鉄砲を撃つ際、弾の軌道を補正してくれる効果もついている。それにゴーグルがないとちゃんと見えないし。しかもこのゴーグルは私が見逃した化け物の居所も教えてくれるし。


 なんて万能なチートアイテム。




〈さて……今回のボスがあやつとも思えぬが、あやつをどうにかしないと、表には出て来ぬだろうな〉




 メイちゃんの言葉に、私も頷く。私も怖かったけど、アレが最終ボスだとも思えない。祓ったはずの瘴気は瞬く間に復活した。より濃いものと形を変えて。


 神社にいた顔色の悪い人間もどきにとって、あれぐらいの屋敷を瘴気で覆うのは何の苦労もないのだろう。


 水鉄砲の弾を金色に変えて、再び辺り一帯へと撃ちまくった。気分的には水をやっているような感覚だけど、実際銃口から出るのは1ml程の少量の水。それが木々や地面に当たると、一瞬で金色が広がり浄化状態になる。これで化け物たちはここに近づけなくなるけど、時間制限はある。


 とはいっても、1年程はもつらしい。私には十分だと思うけど。チートアイテム万歳。




〈ハル〉




 メイちゃんがタイミングよく私の名前を呼ぶ。




「うん。場所を変えようか」




 副委員長が用意してくれたブレスレットは、その辺りに漂う瘴気を一瞬で祓ってくれるのは便利だけど、ここでは無駄だという事が解った。


 1回祓った瘴気を一瞬で元に戻したけど、疲れた様子は全く見せなかった。しかも余裕の表情まで浮かべてた。


 でも、下っ端でもないだろうと思う。あの顔色の悪い──緑の色をしたおじいちゃんの力は強い方だとは思うけど、人間の所に潜り込みを失敗した事を笑ってたあのおじいちゃんも、油断しちゃいけない相手だ。


 アレで十分強いと思うけど、普段からチート集団を見ているからなのか、そこまで強くは見えないんだよね。


 見ている分には、だけど。


 あの耳ぐらいまで口を広げて笑った緑色のおじいちゃんが、大ボスじゃなくて中堅所だとすると、大ボスはもっともっと強いんだよね。


 ……おじいちゃんみたいに不気味じゃなければいいんだけど。


 とりあえず目についた場所を浄化しまくって、大量すぎる魑魅魍魎の数を減らしていかないと、自由に外を歩く事も出来ない。というか、結界の中じゃないと安心して眠る事も出来ないし、ご飯を食べる事も出来ない。大切な大切なご飯の時間。


 メイちゃんと協力して浄化しまくっていたら、あっという間に太陽が落ちてきた。黄昏時が来る。


 私達の時間は終わり。これからは化け物たちが力を持つ時間。




「メイちゃん。1回戻ろう」




〈うむ〉












 結界の中でぐてぇ、とソファに身体を投げ出すように飛び込んだ。予想以上にばてた。体力と気力を使い切ったらしい。そんな中、ぐぅと緊張感のない音が、メイちゃんと私のお腹から聞こえた。


 ……うん。お腹すいたよね。寧ろすくよね。あんなに動き回ればお腹はすくよ。


 もう慣れたけど、明らかに外見と中身があっていない鞄から幾つかの箱を取り出す。




「メイちゃーん。何食べたい?」




 和洋折衷何でもあるし食べ放題。




〈うーむ。今日はあっさりといきたいのぉ〉




「そっか。そうするとメイちゃんはこれかな」




 中身が解り易い様に蓋に何が入っているか書いていてくれてるんだよね。




「夏ばてでも食べれるサラダうどんセットはどう?」




〈うむ。それにしておくかのぉ〉




 箱を開けると、2人前のうどんがザルに入っていて、その隣りには山盛りのお野菜にマヨネーズと、サラダうどん用のスープ付き。


 このメーカーのスープは好きなんだよね。野菜をたっぷりとのせて、マヨネーズをかけてから仕上げにスープを上からかけていく。


 これだと、野菜をついつい食べすぎちゃうんだよね。


 マヨネーズとスープが混ざって、それと野菜を食べるとまた美味しくて美味しくて。うどんを食べるのがつい後回しになってしまう。


 満足するまでたっぷりと野菜を食べつつ、うどんにも箸を伸ばしてそれも堪能する。


 結局二つ目の箱に手を伸ばしたから、お互い2人前は軽く食べた。最後に水を一杯飲み、手を合わせてご馳走様。その後は疲れた身体を休めるために、ソファへと腰を下ろして外を見る。


 結界の中から外を見渡す。ここから見れる場所には結界のおかげで何も見えない。


 けれど人間は眠らされているから、出歩けるのは魑魅魍魎の化け物たちだけ。それに、昼間に頑張って浄化をしたから、家の周りにはキラキラと煌いている。


 これで、ここの区域内は当分近寄れない。


 それでも寛ぐ時は結界ハウスだけど。


 今日はメイちゃんと私の体力がないから、このまま眠ってしまっても問題ないと思う。寧ろ寝かせてほしい。


 ご飯を食べ終わってしまえば、今までの疲れがいっきに襲い掛かってきた。そろそろ寝室に移動した方がいいと思う。


 この結界ハウスはつい最近完成したばかりで、まだ量産はされていないらしいけど、これだけ揃っていれば十分だと思う。今日選んだ結界ハウスは和室中心のものだけど。


 メイちゃんが畳大好きだし。


 洋室ハウスもあるし、お城とかもある。ヴァージョンはこれからも増え続けるらしい。


 そして何故か電化製品が使えるのか解らないけど、深くは考えずに加湿器兼空気清浄機のボタンを押す。深く考えてはいけないのだ。




「あ……甘いもの食べたい」




 眠たかったはずなのに、疲れているのかものすごく甘いものが食べたくなり、思わず呟けばメイちゃんも頷いてくれた。袋から箱のアイスを取り出し、2人でわいわいとはしゃぎながらも結局食べきった。


 ものすごく高級なアイスだったのは、流石お金持ちチート集団というべきかもしれない。


 メイちゃんと2人で歯を磨いて、今度こそベッドへとダイブした。流石にもう起きていられない。お腹もいっぱいになったしね。




「メイちゃんおやすみ~……」




 条件反射で言えば、メイちゃんも半分以上眠りに落ちているのか、小さな声で返事を返してくれた。






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