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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
龍神之子
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龍神之子・6



 新事実発覚。

 どうやら私は、メイちゃんの子供で、人型を取っていると思われている……らしい。


〈我に寿命という概念はないが、子を産み、全ての力をその子に渡せば、今の肉体は死に我は若返る。時々だが、人間との間に子を作る変わった龍もいるがの〉



「それじゃあ私はメイちゃんの子供と勘違いされているって事は、メイちゃんは変わった龍だと思われているのかな?」


〈そうであろうな。その場合は子は我の次の肉体ではなく、自我を持つ。我の力をどこまで受け継げるかは分からぬが、それによって子の運命は大幅に変わるであろうな。そしてこの場合は、我の力を損なわれずに子は子で力を持つ。

 稀な子とではあるが、半龍でありながら、純血を上回る子が生まれる可能性がある。が、これは奇跡的といっても過言ではないのぉ〉


「そうなんだ。元々人間との間に子供を作る事自体珍しいのに、純血の龍の力を追い越すって相当の確立だよね」


 どのぐらいの確率かは解らないけど、子供を作った純血の龍を越える力って相当過ぎるよね。のんびりと紅茶とクッキーでおやつを堪能しつつ龍の事を聞いてみる。

 地球でと変わらない風景だけど、地球だったら多分聞いていない話。これだけメイちゃんがストーキングされているから気になって聞いたっていうのもあるし。

 メイちゃんとは友達だけど、他の龍に興味があるわけじゃないしね。

 今は狙われている理由が知りたい。それに、結界の中で安全で暇な時間が出来たから、ついでに聞いたって感じかな。

 はむはむとクッキーを頬張りながら考えてみる。

 龍ってそれなりにいるみたいだけど、どうしてメイちゃんが召喚されたんだろう。

 ふと、そんな疑問が浮かんだ。


「ねーメイちゃん。何でメイちゃんが呼ばれたんだろ? 龍神様ってメイちゃんだけじゃないよね?」


 こうやって度々異世界に呼ばれて行っているんだけど、これだけ異世界があるなら龍神様も沢山いるんじゃないかなって思うんだよね。

 私の言葉に、メイちゃんは器用に前足を組み、少し唸るようにした後に私を見つめた。


〈今、我の力は完璧ではない。だからこそ、狙われたのかもしれぬ〉


「……というと、私の中にメイちゃんの力の大半があるから。つまり今のメイちゃん相手だったら食べれそうとかそんな感じ?」


 龍神のお肉を食べたらどうなるんだろう。人魚のお肉とかそういう感じになるのかな。そんな事を考えていたら、メイちゃんが尻尾で私の肩を軽く叩く。


〈神の肉だけではなく、我を全て取り込む事により、神に近付くつもりやもしれぬな。魑魅魍魎のような雑魚ではなく、あの神社にいた位の力の持ち主なら、我を喰らっても神に近付けるやもしれんな。人間が我の血肉を喰らえば殆どの者が死ぬ。人魚の肉と変わらぬな〉


 神様だから、人魚の肉よりも適合出来る人間は少ないんじゃないかと思うんだけどね。わざわざ口に出す必要はないから口を閉じておく。

 勿論、お菓子を食べているからそういった意味では口は動くし、あけるんだけどね。


〈ただ、危ないのは我よりもハルかもしれぬ〉


「……なんで?」


 突然予想外の事を言われ、言葉に詰まる。


〈あの巫女が龍神様“たち”と言ったであろう。我と人間の間に産まれた半龍だと勘違いしている可能性が高いの。そうすると、半分は人間の血を持っている半龍の方が、適合出来ずに死ぬ確率が減る──と思われても仕方のない状況だしのぉ〉


「……」


 メイちゃんの言葉に、私がガックリと項垂れた。勇者として召喚されたり、お城から追い出されたりと最近の異世界ではあまり良い目にはあってはいないんだけど、どうやら今回もらしい。

 メイちゃんと同じように腕を組みながら、空を仰ぐ。このまま結界内で過ごせばとりあえずは身の安全は保障される。けど、解決には程遠い。

 このまま助けを待つんじゃなくて、自分から動かないといけない。今回の件は特にそう思う。

 鞄から全ての物を取り出して、今ある道具を確認していく。

 副委員長たちが作ってくれた物や、魔道具製作倶楽部とかに頼んで作ってもらった道具も多いんだけど、私が直に頼んで作って貰った物も入っている。異世界に行ってから、あやしげな部活が増えたけど、かなりお世話になっているから助かるんだよね。

 この辺りは私と、頼んだ部活の人しか知らない道具もちゃんといれてある。その中から、水鉄砲を取り出し、手の平サイズの袋を開けた瞬間、私の手の平サイズの袋じゃ入りきれない量のガラス管がいくつも並ぶ。その幾つかを水鉄砲に仕込むんだけど、何故か何十種類のガラス管が全て入ってしまうという見た目の大きさと、収納出来る道具の大きさがおかしい水鉄砲。構造がどうなっているかは考えない。

 考えてもわからないし。

 何十種類の色とりどりのガラス管を全て入れ終わった後、皮で出来た腰に巻いてあるベルトに水鉄砲をおさめる。

 ガラス管の中身は200ml。色によって効果は全く違う。1発に使用するのは1ml。これだけの量なのに、捕獲用の直径3m程のネットに変わったりもする。

 ネット以外にも1mlで色々な効果があったりもするんだけど、沢山ありすぎて把握出来てない。思うだけで水鉄砲が勝手にそれが発射されるようにやってくれる万能な水鉄砲。

 本当にどうやって作ったんだろう。

 考えるのが面倒なので、とりあえず便利な道具、と思っておく。他にも武器は沢山あるけど、相手の安全は保障出来ないものが多いから、見なかったフリをしておく。

 後は魑魅魍魎が沢山いるみたいだから、その対抗処置として特殊な眼鏡をかける。本当はあまり見たくないけど、見えないと困りそうだからかけたんだけど、予想以上に沢山いた。寧ろ居すぎだと思う。

 この結界ハウスから出たら最後。囲まれるのは裂けられない可能性が高い。


「ねーねーメイちゃん。凄い数だねー」


 窓の外を見ながら呟く。

 大小取り揃えている感じがなんとも言えず……。


〈うむ。昨日よりも増えとるの〉


「昨日よりも?」


〈うむ。昨日とは比べ物にならない程増えたの。恐らく我々の匂いを嗅ぎつけたのだろう〉


「匂いで解るんだ……」


 それってほっておくと、減る所か増えていくんだよね。きっと。

 結界ハウスの中は安全だけど。


「えーと……」


 水鉄砲は殆どが攻撃用だから、防御が出来そうな道具を探す。確か防御系の道具も作ってもらったんだよね。

 布で作られた手袋。指先は出ているんだけど、それは手袋の頭をはずしているだけだから、いつでも指先を覆える。2つの白いボンボンが可愛い手袋は、一見すると何処にでも売っていそうな手袋だ。けれど手首の方には小さな宝石が散りばめられている。

 この散りばめられた宝石が、完全防御に必要なものだったりする。色によって防げるものが違うらしいんだけど、これだけ編みこんでおけばまず間違いなく、防げないものはない。

 アレって何だろう。

 ふと目に入ったのは、指輪サイズのの箱じゃなくて、ペンダントとイヤリングが入っていそうな大きなケース。警戒心もなく開けてみたら、メッセージカードが1枚入ってた。何だろうと思って内容を確認してみたら、緑化委員からだった。


『リョウへ。俺たちと離れたら必ずこれを身につけろ』


 鞄は副委員長をメインにして用意してもらったけど、その時は入っていなかったから後から付け足したのかな。

 羽をモチーフにした可愛いペンダント。それとお揃いのヘアピンが2つ。とりあえずそれらを身につけてから、鞄にピンバッチを5つ程つける。当たり前のようにピンバッチの模様は全て違う。

 この鞄は持ち歩いた方がいいよね。身につけて、とか。必ず持ち歩くとか。そういう感じで注意書きがあったし。寮から持ってきた大きさの変わらない異次元鞄を、ピンバッチを着けた肩掛け鞄に入れる。大きさは変わらないはずなのに、何故か小さめの肩掛け鞄に入るんだろう。素材とか作り方とか。ちょっと気になるけど、考えるのは止めておこう。

 異世界の知識で作った道具の作り方は聞かないほうが身の為なんだよね。1度聞いて頭がパンクするかと思ったしね。



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