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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
龍神之子
23/27

龍神之子・5






「ごちそうさまでした」




〈ごちそうさまでした〉




 メイちゃんと声が重なる。




「朝はしっかりと食べないと力がでないもんね!!」




 迎えは暫くは無理そうだと思うし。何となくだけど。だから自力で何とかしなくちゃいけないと腹を括ったメイちゃんと私は、ここに拠点を作り、移動OKな透明人間か!?と遊びで作ってもらった結界札を背中に貼り付けている。


 これで誰にも気付かれずに外を歩けるので、速やかに情報を集めないと、メイちゃんと私がテーブルの上にのる事になってしまう。


 気合をいれ、握り拳を作りそのまま天へ向かって突き出す。




「メイちゃん頑張ろーー!!!」




〈うむ!!〉




 メイちゃんの方も気合はばっちりだ。昨日の会話を聞いてから、尚更やる気がアップした。てっきり龍神様助けてください的な事を想像していたから、予想外の……食べる為に召喚しましたって今までで一番酷い内容だよね。


 だからさっさと情報を入手して、ここからおさらばするのだ。


 情報を探すぞ!!とメイちゃんと気合を入れまくって歩いているんだけどさ、さっきから誰にも会わないの。


 風景は昔ながらの日本。田んぼに囲まれたおじいちゃんやおばあちゃんの家。つまり田舎なんだけど、耕している畑があるのに、人だけが消えてしまったような印象を受ける、違和感しかない風景。本当に静かだ。


 情報も何も、何もいなければ聞き耳をたてる事も出来ない。


 体に貼った結界札のおかげで、今日は怖いおばあさんや自宅に変な人?がいるお姉さんにも会っていない。札のおかげで怖い思いをしなくていいのは凄く助かるんだけどね……。




〈ハルよ。どうやら住民達は眠らされているようだ〉




 メイちゃんの小さな手が示す方を見てみれば、家の中で人が倒れていた。何かをやっている途中で眠ってしまったかのような格好。この村の人たち全員。あの神社の住人は除くでいいと思うけど、この風景と変わらないだろうと理解してしまう。むぅ。折角の安全安心な状態での情報収集が難しくなってしまった気がする。




「どうやってこの里をこんな風にしたんだろう。神社の人たちは操られているみたいだし」




 多分だけど。




〈人はおらぬが、魑魅魍魎の類が多いのぉ〉




「メイちゃんは見れるの?」




 私には眠っている人と、田舎の風景にしか見えない。


 流石メイちゃん。神様だよね。




〈それとな、この里を何かが覆っている。恐らくはこれの所為かのぉ〉




 連絡がつかないのは、と言葉をつけたすメイちゃん。


 メイちゃんが言うならその通りだと思う。肝心の力の源は私の中に入っちゃっているけど、こうして触れていると、メイちゃん自身力を自由に使えるらしい。私にはよく分からないけど。


 ただ、あくまでも源は私だ。力を引き出せば引き出す程、私の体力がもってかれる。だから私に負担のないように、ちょっとした力しか使えないのだ。メイちゃんが本来の力を使ったのなら、即昏倒する自信はある。うん。昏倒だけで済めば運が良いって感じみたい。


 私がチートだったら、きっとメイちゃんは自由に力を振舞う事が出来ただろう。けれど残念な事に、私はチートじゃなくただの一般人だ。所謂庶民でもある。それを今言った所で、この状態から抜け出す事は出来ないから、そのマイナスな思考ごと捨てておく。


 私は一般人だという事を、今まで嫌だと思った事はない。


 例え周りが規格外だったとしても。




「偽装されているのかも。副委員長の作ってくれた結界を使っても連絡がこないって事は、メイちゃんの言った通りこの星か、それともこの里だけなのか。何かが覆って邪魔をしているからだよね」




 腕を組んで考えてみる。




「神様を食べたいって何でかな?」




 確かに人外のお肉を食べると不死になるとか、そういう話はあるけれど、実際の所はどうなんだろう。本とかでは、主人公だけが生き残ったという物語は珍しくはないけど、それはあくまで本の中の出来事。




〈魑魅魍魎が我を喰らおうしている理由か……〉




「神様を食べようって、結構リスクが高くない?」




〈そうだのぉ。あの程度の魑魅魍魎ならば、軽く蹴散らす事は可能だが、今それをやるとハルに迷惑をかけるのぉ〉




 まだ、大半の力が私の中にあるんだよね。


 お腹の辺りを右手でさすってみる。自分のものじゃない、何か良く分からない力が宿っているのは分かる。私の気のせいかもしれないけど。


 食べ物を食べてなくても、順調にメイちゃんに力が流れていってる。この分でいくと、食料が尽きなければ今回の事件でメイちゃんに全ての力を還せるんじゃないかなぁ。このまま力を使わない事が前提だろうけど。


 心なしかメイちゃんの身体が大きくなったような気がする。少し前は30cmぐらいだったのに、今は50cmぐらいかな。地球にいた頃よりも成長のスピードが早い。


 このまま大きくなったら一緒に眠れないなぁ……なんて脱線した事を考えていたら、メイちゃんが目を閉じた。ここは札を貼ったおかげで、結界の中にいる扱いになってる。外からの攻撃は防ぐけど、中からの攻撃は自由という流石チートが作った結界札セットなんだよね。




「メイちゃん。何かわかりそう?」




 メイちゃんから聞いたんだけど、俗に言うパワースポットの所にいれば、今の少ない力でも星全体を見る事が出来るらしい。龍脈は何処にでも繋がっているとか何とか。凄いねー、しか言えなかったけど。




〈うむ。たまたま結界を張った場所が龍脈の上だったのが幸運であったと言うべきかのぉ。普通の人間は全員眠らされておるの。あの神社の住人が眠っていないのは、我を呼び出す為に残したのだろう。


 あの瘴気の中、自我を保つのは難しい〉




「空気が淀んでたもんね」




 あそこに行くと洗脳されちゃうのかもしれない。巫女のお姉さんは優しげだったけど、あれに気付かずに平然としていたのは正直怖かった。食べ物がない恐怖に比べたら全然マシだけど。




〈あの瘴気……1回祓った程度じゃ拉致があかんのぉ。2回3回と回数を重ねた所で無意味であろう。屋敷におった“おじい様”とやらが、その程度で力を損なうとは思わん〉




 メイちゃんが淡々と感想を述べる。副委員長が作ってくれた結界は信用しているみたいで、淡々と話しているけど警戒は解いてない。


 うーん。予想外にシリアスな展開。食べる物が沢山種類があってくれたのがせめてもの救いだよね。それとお役立ちアイテム。


 一応用心を重ねて、結界の張り方が合っているかとか、間違っていないか、とか。メイちゃんと2人でこれでもかってぐらい確認したから、尚更安心も出来るんだけどね。


 篭城しても問題は全くない。


 篭城出来るぐらいの食料はあるし、この結界ハウスが手狭に感じたのなら、それより大きな結界ハウスもあるし。その辺りを考慮して、態と最初の結界を張るのにスペースを大きめにとっておいたし。


 木の上に立てられるハウスとか、日本の昔ながらの家屋とか。煌く城とか。飽きないように色々な種類の結界ハウスが入れてある。


 しかも、それぞれの結界ハウスの中に食料を保管してあるから、今の結界ハウスの中の食料を食べ終えても、次のハウスに交換すれば何の問題もなくなる。


 でも、篭城しただけで状況が打開出来る気は全くしない。


 メイちゃんの言う魑魅魍魎の類は全く見えないけど、結界札を貼らずに結界から出たら、きっとそれに囲まれても不思議じゃない量がいるみたいだし。


 うーん。打開策が全く思いつかない。


 もう1回冷静に鞄の中身を確認して、メイちゃんと話し合おう。


 そう思いながら、メイちゃんの頭を優しく撫でた。何か、これだけでホッと出来るような気がした。





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