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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
龍神之子
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龍神之子・4




 袋とハルちゃんの気配が消えたのがわかった。ついでにメイの存在も消えた。


「……んー。あれ?」


 ハルちゃんが何処に行っても分かるように、『一歩間違えなくてもストーカー機能だね』とハルちゃんが言い切った、鞄の中に仕込んでもらったストラップ型の追跡機。

 何処の次元に行ってもハルちゃんの居場所が分かるはずなのに、どこにいるか分からない。マナもヒコも感じ取ってるだろうな。特にマナ。寮の自室を改装し、3部屋を扉で繋げて、ハルちゃんをしっかりちゃっかり囲んだしなぁ。男子寮は当たり前だけど、女子寮は違い、ちゃんと個別の部屋になっているんだよな。

 それを改造し、真ん中の部屋を2人で寛ぐ部屋にしていた。

 ずるい、とは言えなかったけど、俺だってハルちゃんと遊びたい! ……という本音はここに置いといて、ハルちゃんの気配を全く感じられない。これってどういう事?


「ナオ。リョウの居所が……」


 共同部屋に来たヒコが、眉間に皺を寄せながら言ってくる。


「俺も無理ー。マナが魔法を使っているのはわかるんだけど、いまいち成果は上がっていないみたいだね」


「あぁ。俺も無理だった」


 頭を掻きながら、ヒコも呟く。その表情はいかにも悔しげだったけど、多分俺も似たような表情をしているんだろうなと思う。

 今までの経験で、もう大丈夫だろうっていう気になってたけど、まだまだ何もかも足りてないって事か。

 何でハルちゃんは想像の右斜め上を行くんだろう。

 そこが面白い所でもあるんだけど、危ない目に遭うっていうのはいただけない。今回も嫌な予感がする。

 危ない目に遭ってなければいいんだけどさ。本当にそれだけが心配。


「マナが食べ物は豊富すぎる程いれたっていうから、それだけは心配していないんだけどさ」


「……アレだけ用心していたのに、この有様だ」


 ヒコが怒っているのは自分自身にだろうけど。俺も同感。安心していた自分をぶん殴りたくなってる。








「ご馳走様でした」


 副委員長が用意してくれたのは、テーブルセットが1つ。他の小さな箱には、色々な料理が入ってる。テーブルの上に並べられた料理の数々。これは、親指の先程の小さな箱2つ分の料理。出来立てで保管されていた料理を食べて、お腹いっぱいになって漸く落ち着けた気がする。


〈うむ。美味であった。ごちそうさま〉


 メイちゃんも料理の味には納得しているのか、満足気に頷く。


「やっぱご飯は食べないと駄目だね」


〈うむ〉


「お腹いっぱいになると眠くなるよね」


「うむ」


 ごそごそとリュックから寝具と書かれた箱を開けた。そこには、メイちゃんと私の分の寝袋が入ってる。結界はそこそこ広いし、隣りに寝袋を置いてその中に入って横になる。副委員長達に用意してもらった道具セットのおかげで、こんなにも安心して眠る事が出来る。


「メイちゃん。あれって何だろう」


 眠れるんだけどね。結界の外にぼんやりとだけど、うじゃうじゃと何かが沢山いる。悪いモノって事だけはわかる。翻訳機の性能が良いから、何を言っているか聞こえちゃうんだよね。



 人間の所に潜り込んだ奴はどうなった?


 ひゃはははは。逃げられたみたいだぞ。


 あそこまできて逃げられるとは、あやつも馬鹿だのぉ。


 まぁ、いいさ。この里からは誰も逃げられん。


 そうだそうだ。


 龍の血肉をはよ食いたいのぉ。


 娘がいるとか。

 

 ならそやつも食ってやろうかの。




「……」


〈……〉


 思わず、口に手を当て黙り込む私とメイちゃん。

 今のは明らかに、私とメイちゃんの事を言ってたような気がする。


「……メイちゃん」


〈うむ〉


「今日はもう眠ろうか。疲れたもんね」


〈うむ。それがよかろう〉


 いそいそとそれぞれの寝袋に深々と入り込む私とメイちゃん。結界の中は明るく見えるけど、外は真っ暗。寧ろ淀んでる。この里からって事は、逃げられないし、ひょっとしたら入ってこれないかもしれない。

 つまり、今回は助けがこない確率が高いのかもしれない。


「メイちゃん。明日から頑張ろう!」


 助けが来ないと腹をくくった私に気付いたのか、メイちゃんも神妙な表情カオで頷く。今日はしっかりと眠ろう。眠れば、きっともっと考えられるから。

 おやすみなさい。








「おかしいよね~。ハルちゃんの居所が分からないなんて」


「結界は張れたみたいですけど……大まかな位置になりますねぇ」


 ハルちゃんがマナの結界を使っても、居場所が特定出来ない時点でおかしい。


「上から塗り替えられたような。そんな感じがして、気持ち悪い気がしますねぇ」


 マナは右手を頬に当てながら呟く。その顔色があまり良くない。

 ハルちゃんが結界を張り、居場所を掴む為に結界の石と同調しているのが体調不良の原因だろう。

 結界を圧迫している何か。


「ひょっとして、リョウの居る場所に、既に結界が張られているんじゃないか?」


 今まで押し黙っていたヒコが口を開く。ずっとソレを考えてたのか。でも、と腕を組み替えて結界について考える。

 ハルちゃんのリュックに入っていた結界は、他から見て結界が張ってある事が分からない仕組みになっている。だから、その上から誰かが広範囲の結界を張っても、その中に張ってある結界には気付けない。

 だから、それだけは安心してる。

 ……。


「マナ。方向はわかる?」


「えぇ。薄っすらとですが西南の方に……」


「ん」


 西南に意識を向けてみる。結界を張ってある異世界をいくつも通り過ぎるけど、結界の張ってある星は見つからない。

 何処だろう。

 マナもヒコも探すが、それらしきモノがまだ1つも引っかからないんだよね。結界を張りつつ、気付かれないように偽装しているのかもしれない。

 1つずつ探した方が無難かもなぁ。時間はかかるけど。

 ハルちゃん。

 今頃なにしてるんだろう。






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