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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
生物捕獲(完)
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生物捕獲・4




 東洋のファンタジーな龍の変身シーン。窓枠に手をかけながらもワクワクしながら見てたら、ぐぅと小腹が自己主張。

 うーん。あの丸い石に気をとられ過ぎてて、授業前のカロリー摂取を忘れてた。

 今日のおやつは、来る途中で貰ったシフォンケーキ!

 プレーンなものから、こってりとクリームでコーティングしたものまで種類は様々。バナナとチョコを組み合わせたものもいいけど、見た目的には真っ白いふわふわな生クリームと木苺やブルーベリーといった彩り鮮やかなフルーツを散りばめたケーキも捨てがたいよね。

 でも最初はプレーンかなぁ。

 あ、紅茶も準備しな……うん、流石副委員長!

 既に準備されていた私専用のティーカップを机の上に置いた後、ふわふわほかほかのシフォンケーキに手を伸ばそうとしたら、目の前にはウェットティッシュ。


「お腹すき過ぎて忘れてた……ありがとー副委員長!」


「いえ。遼さんに何かあったら大変ですから」


「大丈夫! お腹壊したことなんてないから!」


「ふふ」


 念入りに拭いた後、ゴミ箱に使用済みのウェットティッシュを捨てて……いただきます!


「はるちゃーん。見逃すよー?」


 委員長の言葉に、大丈夫とばかりに胸をはって応える。


「むぐむぐ」


「……ん。食べながら見学してるから大丈夫なんだね。そうだね。食べてる時は見れるもんね」


 流石サトリチート。

 口に出さなくても会話はばっちりだね。

 でも普段の時は微妙だけど。


「ん」


 選んでる時じゃないからね!

 選んでる時なら見る余裕なんてないけど、食べてる時なら大丈夫だよ。

 

「んー。美味しいー」


 プレーンもいいよね。

 あ…光った。


 次はフルーツ!と手に取ったと同時に、龍の身体から眩い光が放たれる。勿論、目の保護はしてくれてるから大丈夫。 

 寧ろ光は学校の外には漏れてないよねー。なんていうか、ある意味ここだけ異空間。毎回というか毎度というか、こういう事が起こる度に思うよ。

 ここのチート集団はもうチートっていう言葉の枠は超えてるよね!



「……あれ?」


 ピカッと光ったら大きくなるのかなって見てたんだけどね、何でか浮かぶ影はミニサイズの龍のまま。


「どうしたんだろうねー?」


「流石はるちゃん。食べる手は止めないんだね」


「んんー。何でかお腹がすいて」


「……あれ?」


 ホントどうしたんだろ。

 はぐはぐと味わいつつ、朝貰ったシフォンケーキは全て胃袋に直行。家に帰った後の糖分補給にするはずだったんだけどなー。

 自分でも首を傾げる状況で、委員長も何でか一緒に不思議そうにこっちを見てくる。

 相変わらず朝から無駄にイケメンだ。


「無駄にって……はるちゃん酷すぎ」


「副委員長ー。お茶のおかわりってあるー?」


「そしてスルー。うん。そろそろ慣れたよ。だってはるちゃんだしね」


 後ろで委員長が何か言ってるけど、そんな事より喉が渇いたよね。やっぱシフォンケーキは口の中の水分を持ってかれちゃうよね。


「遼…」


「んー?」


 ゴクゴクと副委員長が準備してくれた紅茶を飲み干すけど、その直後にお腹の音がぐぅ、って鳴ってね。


「これは……ちょっと説明お願いできますか?」


 副委員長が和菓子の包みと、日本茶のセットを手渡してくれたんだけど、何でか視線は窓の外。

 まぁ、いっか。

 高級そうな和菓子を頬張りながら、くいっと熱めの日本茶を喉へと流し込む。うーん。この組み合わせに間違いはないよね。

 これは粒餡。こっちはこし餡。

 両方とも好きだから全然大丈夫。


「流石は遼」


「うん。流石はるちゃんマイペース。で、ヒコ」


「すぐに持ってこさせる。手持ちじゃ足りなくなりそうだ」


「そうだよねー」


「リョウ。これも食べておけ」


 有無を言わさない口調で緑化委員から渡される本日のお菓子。


「はるちゃん。これもね?」


 と、委員長からも渡された。

 いつもだったらこんなふうにタイミングが被る事はないんだけど――…ま、いっか。お腹すいてるし。


 はぐはぐはぐ。

 むぐむぐむぐ。

 はぐはぐはぐ。



『我とてこのような事態になるとは…』


 

 人が食べてる真正面で、何故かミニ龍が神妙な顔をしててねー。



「どうしたの?」


 やっぱ真正面にいるから、一応聞いてみなきゃ駄目だよねー。

 だって、ちらちらとこっし見てるし。


「ふふ。遼さん。お腹はいっぱいになりました?」


「ううん。全然」


 チラ見してくるミニ龍じゃなくて、副委員長が口を開いたんだけどね、一応答えてみる。不思議な事にまったくお腹いっぱいにならないんだよね!


『…お主の名は?』


「遼だけど、ミニ龍さんは?」


『我は…』


 どうして突然名前なんだろう。 そして言葉を濁らせるミニ龍。名前って聞いちゃまずいのかな。と思ったら、ズズッとミニ龍が顔を近づけてきてね。

 ……流石龍。小さくても龍。顔面アップになるとやっぱ迫力があるよね。


『我の名は、ない。お主ならば我を何と呼ぶ?』


 …ん?

 ちょっと展開についていけなくて聞き返そうかと思ったけど、やめておく。空気だけは一応読むんだよ。

 ミニ龍の表情はきっと真剣だったし、空気も真面目だし。


「えーと。ミニ龍さんの石がすっごく透明で透き通ってたからだったから、アカリちゃんでいいんじゃない?」


 透明の明で明ちゃん。


「「「……」」」


『明、か?』


「うん。愛称はメイちゃんね!」


 なんか緑化委員のあだ名の付け方と同類なような気がするけど、メイちゃんも捨てがたいからあだ名はメイちゃんでいいよね。

 満足気ににこにことしてたんだけど、やっぱ疑問があったりとかね。


「で、どうして突然こういう流れになったの??」


 空気は読むけど、そろそろ聞いても大丈夫だよね?

 そんな私の疑問に、困ったように委員長が笑って、副委員長と緑化委員をそれぞれ見て頷く。


「どうやらね、このミニ龍――メイちゃんの宝玉の力が散らばっちゃったみたいでね」


「へぇ」


 石はあるのにそんな事もあるんだ。流石ファンタジー。


「どうしてか、自分じゃ宝玉の力を取り戻す事も出来なくなっちゃったみたいなんだよね」


「ふぅん」


 色々大変なんだねー。

 他人事のように聞いてたんだけどね、委員長が困ったように頬を掻くという意味ありげな行動をしてくれた。

 

「副委員長」


 こういう時は副委員長とばかりに視線を委員長から外し、じぃっと副委員長を見てみる。


「そこでマナなんだ」


「意味ありげな行動をとった時点でマナにいくだろうな」


「…冷静に分析しないでよ」



 副委員長も、何か言ってる委員長と緑化委員を放置したまま、安心させるようにえいつもの笑みを浮かべてくれた。


「大丈夫です。ただ、遼さんの食べる量がいつもより増えてしまう、という事ぐらいですわ」


「何で?」


 確かにお腹はすくんだけどね。


「遼さんの体内に、玉の力が取り込まれただけですよ」


「へぇ。それだとどうして食べる量が増えるの?」


「外から物を摂取する事により、外に散らばった玉の力が少しずつ宝玉に戻る。つまり、少しでも早く散らばった力を取り戻したい宝玉が、遼さんを頑張らせてしまっている――状態でしょうか」


「へぇ……」


 それって、色々とどうなんだろう。

 家計簿に直撃するよね。冷静に考えると。


「大丈夫ですよ。力が満ちれば宝玉に移せますし、私と一緒に行動すればお腹がすく、という心配もありません」


「あ、そっか」


 この際、食事の面倒はチート集団に見てもらえって事なんだね。

 ちょっと迷うけど、このスピードで食べ続けたらあっという間にご飯が終わっちゃうし、ひもじくなるのもイヤだしね。


「私と同じ部屋でよろしいですか?」


「んー。うん。副委員長と一緒なら安心だし、この際仕方ないよね」


 色々と考えた結果、これが収まるまで副委員長と行動した方がいいよね。そう思ったんだけど、委員長と緑化委員が何かを言おうと口を開いた瞬間、珍しく顔面を蒼白なものへとかえる。

 ついでに、メイちゃんの顔もきっと蒼白。


「どしたの?」


「ふふ。何でもありませんわ。ありませんわよね?」


「?」


 答えてくれたのは副委員長だったけどね。

 まぁ、いっか。






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