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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
生物捕獲(完)
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生物捕獲・3




 小さな小さな手の平サイズの龍。

 何でいるの?と、当たり前の疑問を言ってみれば、珍しく沈黙で返ってきた。

「……?」

 いつもだったら即返答を返してくれるんだけど、副委員長まで黙ってるのって珍しいよね。というより初めて見た。

 私のそんな疑問を感じ取ったのか、それともいつものサトリでわかったのか、委員長がハァ、とこれまた珍しく溜息を落とす。


「なんかさー。寮の結界に引っかかっちゃったらしいんだよねー。で、力が散らばって、少し難航中」


「珍しいね。チートも難航するんだ」


「そそ。珍しいよねー。俺も初めてでどうしていいかちょっと悩んでる」


「へぇ」


 いつもささっと解決するイメージしかなかったから、こうやって悩む委員長たちは本当に貴重というか珍しいよね。


「あ。副委員長ー。少しだけいい??」


 そうそう。ちょっと調べて欲しい事があったんだよね。

 委員長たちは忙しそうだけど、副委員長はいつもの感じでのんびりとしてるから大丈夫だよね。


「大丈夫ですよ」


 恐る恐る聞いてみたんだけど、やっぱり大丈夫って言ってくれたから、遠慮なく悩む委員長や緑化委員の横を通り抜け、後ろで状況を見守っている副委員長に、さっき拾ったばかりの球体を渡す。


「さっき拾ったんだけどね。副委員長なら持ち主がわかるかなって…」


「「「……」」」


『……』


 小首をちょこっとだけ傾げる私の視界に入ったのは、チート集団とミニ龍の沈黙。なんだろう。この痛い気がしないでもない沈黙って。


「……あー。うん。流石はるちゃん」


「そうだな。流石リョウ」


「そうですわね」


『よくわからんがうむ』


 沈黙から一転、次々に流石とか何とか言われるんだけど、単に落としものならチート集団の方が早いだろうって思ったんだけど…。

 わからない私の肩にぽん、と、委員長と緑化委員が手の平を置く。手置きじゃないんだけどなー。


「落とし主は、ここにいるって事だよ。俺たちでさえ探すのに手間取りそうな宝玉を、はるちゃんがあっさりと見つけちゃったわけ」


「へぇ。落とし主が見つかって良かったねー」


 うん。返しに行く手間が省けて良かったのかな。

 

『我の宝玉じゃーーー』


 そんな私の目の前には、喜びからか狂喜乱舞で踊り狂うミニ龍。龍の宝玉って事は、大きくなるのかなー……。


「だ…」


 大丈夫?

 ミニ龍のサイズがイメージ通りだったら、流石にちょっと危ないんじゃないかな。何て思いつつ聞いてみようとしたんだけどね。それよりも先に委員長が口元に人差し指を当てながら笑みを浮かべる。うん。ちゃらい笑顔だね!


「さり気なくはるちゃんって酷いよね」


「で、何?」


「そして軽く流すし……いいんだけどね。俺たちなら大丈夫だよ。マナが負ける姿って想像出来る?」


「……」


 うん。副委員長が負ける姿って想像出来ないよね! すごい納得。首を縦に振りまくる私に、委員長と緑化委員が憂鬱そうな溜息を落とす。自分から言ったのに何でへこんでるんだろう。


「あ。委員長の負ける姿は想像出来るから大丈夫!」


「それ、大丈夫じゃないよねー?」


「副委員長に勝てる姿は想像出来ないよ!」


「……そうなんだけどさー」


 あ。ガックリと肩を落とした。やっぱ副委員長が最強なんだ。チート力だけならお祭り部員なんだけどね。なんだろう。総合的だと副委員長が最強にしか見えないんだよね。

 私の場合はチートじゃないから、ホント見たイメージだけだけど。

 そしたら、未だに肩を落としている委員長の背中を二・三度 だけ叩いてみる。気分は勿論元気出してね。

 へこんでいる委員長を慰めてたら、歓喜に沸いていたミニ龍が恐る恐る宝玉に手を伸ばすんだけど、副委員長に止められてた。


『……』


「外で試してみませんか?」


『……ぅむ』


 疑問系をとっているものの、有無を言わせない迫力があるよね。流石副委員長。ミニ龍も完全に押されてるし。

 ぎこくちなく首を縦に振ると、緑化委員に連れられて窓から外へと出る。そこに、副委員長が手に持っていた宝玉を放り投げた。

 ……投げるんだ。

 副委員長の細腕から投げられたとは思えない程、高く遠くへと飛ばされる宝玉。けれどその辺りは見た目からは想像出来なくても流石に龍。人だけど最近人外っぽくなってるチート集団の一撃にも割合あっさりと対応。

 天高く舞い上がり、宝玉を難なくキャッチした――と思ったら、割と必死に受け止めてた。龍でもいっぱいいっぱいになるんだ。ここのチート集団には。

 一体ここのチート集団は何処に向かうんだろう。

 そんな余計な事を考えてたら、宝玉をキャッチしたミニ龍が光に包まれて輪郭がぼやけだす。

 ミニ龍から脱出してデカ龍になるのかな。


「おー……すごいね。ここでもファンタジーが見れるとは思わなかったなー」


 最近、本当にファンタジーな出来事に好かれてるよね。

 しみじみと言えば、緑化委員がふるふると首を横へと振ってくる。


「ここでも、頻繁だと思うが?」


「チート集団は数に入れてないよー」


 魔法とか召喚とか。チート集団のソレはもはや日常。きっぱりはっきりと言い切ってみれば、緑化委員がそうかとばかりに頷いてた。

 まぁ、緑化委員もチートの中でもトップ集団の一人で使いまくってるから十分心当たりがあったんだろうねー。日常に取り入れてるって。


「はるちゃん。変化するみたいだよー」


「あ。ホントだ」


 ぼやけた輪郭が段々と大きくなってる気がする。

 肝心の瞬間を見逃すまいと、私は窓枠に手をかけてじぃっと宙に浮かぶ龍を見てた。


「…リョウ。龍より俺と遊ぼう」


 勿論、不満気に呟く緑化委員は無視したけどね! 






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