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地味な女の子の勇者騒動  作者: 国見炯
生物捕獲(完)
15/27

生物捕獲・2





「ふふふふふ~ん」


 機嫌の良さそうな鼻歌を辺りに響かせ、足は軽やかにステップを踏みながら弾むように歩く。


「ふふふふふふふふ~ん」


 リズムも何もない鼻歌だが、楽しそうな事だけはきっと伝わるはず!

 だって今日のおやつは、可愛く出来たんだよ。味は勿論バッチリ。最後のデコレーションは副委員長と一緒にやるから、保冷バックにいれて溶けない様にしてあるし。

 三時のおやつは豪華だよねー。

 にんまりと崩れる表情を隠そうともせず、珍しく時間ギリギリになるであろう学校までの道のりを小走りで走っていく。あくまで小走りね。

 朝から走ったら、お昼までのエネルギーが足りなくなるし。体力の消費はなるべく抑えないと。


「でも綺麗に出来たよねー」


 久しぶりに渾身の力作になった感じがする。

 生クリームも凝ったし。

 色も何種類か作ったし。

 パンダとか犬とか猫とか。耳や目もつけて見た目もバッチリだしね。可愛いって言ってるのに食べるんだ?なんて委員長は言ってたけど、そりゃ食べるよねー。

 でないと勿体無いし。

 見た目が可愛くても食べ物は美味しいうちに食べないと。


「さーて。学校まで後1km! こっからはダッシュでだーいじょー…」


 ぶ。

 って気合をいれようとしたんだけどね。

 視界の端でキラリと輝く物体を発見。何だろう??


「……んーーー…」


 ホント何だろう???

 水晶みたいな透明な球体。でもキラキラ光ってて綺麗。大きさは手の平サイズ。


「誰かの落し物かな。落し物だよねー……副委員長に調べてもらおっと」


 交番に持っていくよりそっちの方が確実だよね。

 なんたってチートだし。

 しかし、最近ホントチート集団に慣れちゃったような気がするなー。やっぱ人間って慣れるんだね!

 然程重くもない水晶っぽいものだったから、上着のポケットに放り込んで終了。タンッ、と地面を蹴ってダッシュを開始。

 1kmだったら大丈夫。10時のおやつでカロリー摂取すれば問題なし。今日の午前のおやつは何にしようかな。







「はむちゃん先輩おはよー」


「おはよー」


「はむちゃんこれ食べてねー」


「ありがとっー」


 うん。最近はむちゃんって言われるのに違和感なくなってきたよね。普通に返事返してるし。

 この辺りは緑化委員のリー君に似てる発言からだろうけど。ハムスターのリー君を写真でしか見た事がないんだけど、今度会わせてもらおうかな。寮にもいるだろうし。

 鞄いっぱいのお菓子に、ほくほくとしながら教室に足を一歩分踏み込むと同時に鳴るチャイム。

 よしよし。いいタイミング。

 先生が来るまで後五分。朝の腹ごしらえをする時間は十分にあるよね。


「おはよー」


 いつものように挨拶をしながら、自分の席へと鞄をおろす。


「おはようございます。遼さん」


「おはよー。副委員長。と委員長と緑化委員」


 副委員長の後ろに見える委員長と緑化委員の姿。あんなに存在感があるのに見えなかったよ。副委員長の存在感が半端じゃないんだね!


「おはようはるちゃん。相変わらずマナの影に隠れるんだよなー」


「おはよう。リョウ。仕方ない。接する時間が違うからな」


 何かぶつぶつと言っている二人をサラッと無視した副委員長が、委員長の机に手招きしてくる。何だろう?

 首を左右に傾けながら、副委員長に呼ばれるがままに机まで行ってみてビックリした。

 最近こういう事態には慣れてきてるんだけどね。


「ミニだ」

 いかにも龍っていう感じの姿。ただし小さいけど。相当小さいけどね。ふわふわと宙に浮いている姿はなんとも言えず愛嬌があるよね。

 鱗も一枚一枚が輝いていて、見てて楽しい。

 けど、誰も騒いでいない所を見ると、既に一通り堪能した後なんだろうと思う。それか異世界トリップとかを自力でやってるみたいだから、見慣れてる人が多いのかもしれない。

 突きたくなる誘惑を堪えつつ、じっくりとミニ龍を観察してみる。これが通常サイズなのかどうなのかわからないけど、イメージする龍の大きさだったら相当の騒ぎになってるんじゃないかなー。

 それともチート集団があっさりと抑えるか…。

 うん。抑えるよね。間違いないよね。

 龍を相手にしても負ける姿をまったくといって良いほど想像出来ないチート集団。ちらりちらりと周りを見てみるけど、やっぱり負ける気は全然しない。


「はーるちゃん」


「んー」


「俺たちなら抑えられるよ?」


「そうだろうと思ってるよー」


 そんな今更な事なんて態々聞かないよ。


「ミニサイズの時はやめておけ」


「はいはい」


 そこに緑化委員が忠告みたいなものをいれる。緑化委員は小さいものに目がない。可愛いものが大好きなのが実態なんだよね。見た目は威圧感たっぷりなのに。

 あ、勿論イケメン部類だよ。委員長がちゃらい人好きのするような美形なら、緑化委員は剣道なんかやってそうな美形っていうの? 言葉数も少ないらしいから、近寄り難い美形に分類されてるらしい。それを考えると、委員長は割合愛想がいいから、話しかけやすい美形だと思われてるのかな。

 外を歩いてると緑化委員よりよく、ナイスなバディのお姉さま方に捕まってるし。


「…はるちゃんって黙ると碌な事考えないよね」


「それがリョウというものだ」


「委員長や緑化委員には言われたくないけど」


 うんうん。人の事はまったく言えないと思うんだよねー。


「ってそれは置いといて。何でミニ龍がいるの?」


 そんな私の当たり前の疑問に、何故か委員長と緑化委員が頬を引き攣らせて互いの顔を見合わせる。

 何だろうその反応。

 なんか心当たりがあるのかな??






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