こころのおしろ
「世界で一番きれいなお城にしようね」
「うん」
僕たち二人は海でお城を作っている。
夏の太陽が体をじりじり焼く。
麦わら帽子をかぶってくればよかった。
汗のせいで手に砂が張り付いてざらざらする。
生きてるって感じがする。
風が吹いて彼女の長い髪がそよぐ。
僕はじっと見てしまう。
彼女と目が合う。
恥ずかしそうに笑っている。
お城の壁に、彼女は拾っておいた白い貝殻をいくつも埋め込んでいる。
僕はお城のとんがった屋根を作る。
てっぺんに大切にとっておいた、お子様ランチの旗をさす。
くまさんの絵も笑っているように見える。
彼女とこんなお城に住めたらいいな。
お城が出来たころには、夕焼けが笑っていた。
何故かちょっぴり悲しい気分で、僕はお城を眺めた。
彼女も僕の隣でお城を見ている。
「きれいだね」
「うん」
僕には夕陽のせいでお城が燃えているように見える。
でも彼女を悲しませたくないから、言わない。
その時、波がお城を襲う。
僕はお城を守れない。
泣いてしまいたい。
彼女は海を見つめて僕だけに言う。
「あのお城は私たちだけが知っているのよ」
彼女は笑っている。