高貴なるブルーマリーの目覚め
不思議な夢から目覚めたブルーマリーは使用人や家族に心配されながらも、眠っていた間に見ていた夢のことが気になっていた。
ハッ!
見慣れた天井。
目覚めた場所は自室のベッドの上だった。
「お嬢様!お目覚めになられたのですね!本当によかったです!」
ブルーマリーの専属侍女であるマーガレットが涙ながらに声をかけてきた。
「お嬢様!少々お待ちください!すぐに公爵様をお呼びいたしますね!」
マーガレットは慌ただしく部屋を出て行った。
(たしか私、高熱をだして倒れたのよね。)
「マーガレットには心配をかけてしまったわね。」
小さく呟いた。
たったったったった
廊下を走る足音が近づいてくる。
「ブルーマリー!」
大汗をかいて走ってきたのは父親であるアスター・ロッツだった。
職務室とブルーマリーの自室は広い屋敷の中の対極に位置している。
愛娘であるブルーマリーが目覚めたと聞き、急いできたのだろう。
「よかった、本当によかった。」
涙をうかべ、ブルーマリーの手を両手で握りしめる。
「倒れてから三日三晩熱が下がらず、熱が下がっても丸一日目覚めなかったから心配していたんだぞ。」
「そんなに長い間眠っていたのですね。心配をかけてしまい申し訳ありません。」
(4日間も眠っていたのね。さっき見た夢はあまり長いようには感じなかったけど、覚えていないだけで
他にも見ていたのかしら。)
「どうしたんだ?まだどこか具合が悪いのか?」
考え事をしていて表情が曇ったことを気にしたアスターが声をかける。
「いいえ。どこもつらいところはありませんわ。考え事をしていましたの。」
返答を聞き、心配していたアスターの表情も明るくなる。
「そうか、ならいいんだ。今日はしっかり休みなさい。病み上がりが一番危険だからな。」
「えぇ、そういたしますわ。」
アスターは立ち上がり、職務室に戻ろうとドアの方に歩き出す。
ドアの扉を開けると同時にブルーマリーの方を向いた。
「そうだブルーマリー。体調がよくなったらともに食事をとろう。話したいことがあるんだ。」
そう言うと小さく手を振り部屋を後にした。
「お話ってなんでしょう?私はなにも聞かされていませんが。」
マーガレットは不思議そうに小首を傾げた。
「さほど重要な話ではないのでしょう。四日間も何も話せていないから。」
「そうですね!旦那様はお嬢様と他愛のない話をするのがお好きですから。」
(普段食事を共にするときにも話はするけれど、『話したいことがある』なんて。少し気がかりだわ。)
(マーガレットの言うように、他愛のない話をするだけならいいのだけど。)
考えこんでいるとマーガレットか声をかけてきた。
「お嬢様?どうかなさいましたか?あっ!もしかしてお腹がすいているんじゃ!」
マーガレットは慌ただしく、立ち上がる。
「気が付かなくて申し訳ありません!今すぐ消化に良い食事をお持ちします!」
バタバタと足音を立ててマーガレットは部屋を出て行った。
「ふふっ。」 小さく噴き出す。
(マーガレットは元気でいいわね。見ている私も気持ちが明るくなるわ。)
(さて、夢のこともあるし、今後のことを考えなければいけないわね。)
ブルーマリーの透き通る水面のような髪を風がゆらした。
登場人物紹介
ブルーマリー・ロッツ
ロッツ公爵家の一人娘。透き通る水面のようなウルフカットの髪と黄金色の瞳が特徴的な令嬢。
アスター・ロッツ
ロッツ公爵家の当主であり、ブルーマリーの父親。国王とは親睦が深いようで,,,。
マーガレット
ロッツ公爵家につかえる侍女の一人で、ブルーマリーの専属。元気が取り柄の明るい女の子。