クエスト81 [分体最後の足掻き]
夜の街に今日もサイレンが鳴り響く。
モンスターが減るたびに人々は緊張を解す。
しかし、その緊張を再び引き戻すのがモンスターの復活だ。
殺されてから約1週間。ピクリとも動かなかったモンスターの死骸が動き出した。
すぐに周辺の警備に当たっていたハンターが殺された。
そこ周辺はモンスターが完全に根絶されたことが確認されていた為、人々がシェルターから出ていた。
またたく間に被害は広がった。
復活したモンスターはゾンビのようだった。
ほかのモンスターと違って、生き物らしくなかった。
まるで何かを探すように気配を頼りに動くようだった。
そのモンスターの討伐依頼はすぐに私の下へと渡ってきた。
どうやら亮とは連絡がつかなかったようで、一番近い私に応援要請が来たみたいだ。
「亮…今度は何処行ったのよ…」
一応、魚部さんに確認したところ、明らかに弱ってはいるようなので、普通のS級ハンターでも対処できると判断したようだ。
どっちにしろ、S級に断る選択肢は無い。
私は現場に急行した。
着いた時にはもう夕暮れだった。
「…アレか。」
亮から聞いていた説明だと、亜人の類だと思ってたけれど、目の前にいたのは亜人では無く、モンスターだった。
「帯雷炎!」
暗くなる街に炎と電気が光る。
次の瞬間、私は全力で突っ込んだ。
それをモンスターは意図も簡単に止め、投げられた。
「確かに、弱ってる!」
あの日、初めて現れたあの亜人に殺されかけた時に感じた絶望感はない。
スピードタイプの私と同じ速度。
圧倒的に遅い!
能力がありそうな額の眼も完全に潰されてる。
恐らく今、向こうには私に対する決定打が無い!
「雷爪!」
相手が同じ生物なら、電気をまとった攻撃を受ければ、スタンするはず!
私は電気を纏う。
「天狐の尾・消費!」
天狐の尾、これを使うと完全に能力が使えなくなる。
使うには約一ヶ月のチャージ期間が必要になる。
そのかわり、速度と電気の強さと炎の強さを10倍にまで上げる強力な能力である。
しかし、この力には柚月自身が耐えられない。
三分。三分がこの力のリミットだ。
「今までは近くに誰かが居たから使えなかった。でも!今ここには私しか居ない!」
体中から稲妻が飛び出している。
そのまま柚月の爪はゾンビの体を貫いた。
「ぎゃあああ!」
紫電がモンスターの体中から溢れ、焼き尽くした。
燃え盛る肉の匂いと酷い焦げた匂い、それと断末魔が辺りを覆った。
そして、力尽きたモンスターと柚月は同時に倒れた。
だが、モンスターは動いた。
いや、正確には、中から本体が這い出してきたから動いたように見えただけだ。
その本体は死んではなかった。殺しきれなかったのだ。
そのままカオス本体はズリズリと這いつくばっていく。
そして、あるビルの下まで行った。
其処には一つの杭が打ち込まれていた。
それは、あの時に打ち込まれていた杭と同じ杭だった。
『0、あの時の約束を守ってやるよ。俺たちは負けた。だが、俺たちの最後をつかって、壊してやる』
そういうと、カオスの分体は吸い込まれ、空へ向かって打ち出された。
ちょうどその時、亮が現着した。
「柚月!」
彼は真っ先に倒れていた柚月のもとに行き、隣でこげている死骸を見て安堵した。
「良かった…何事もなくて…」
だが、それと同時に、死に方が他の人に比べてかなり苦しくなっただろうと考え、手を添えた。
その時、隣の柚月が起きた。
「うぅ…」
「柚月、大丈夫か?!」
「…遅いよ…」
「ごめん…でも、良かった…」
しかし、そんな時間は長くなかった。
突然、世界中に大きな魔力が伝わった。
「…嘘だろ…」
亮は震源地を見上げる。
其処にははっきりと、崩壊寸前のゲートが見えた。
もう時間がなかった。
亮はすぐに柚月を避難させ、その後、ゲートの真下に向かった。
「…どうする…どうすればいい…」
今のこの装備だと、明らかに瞬殺される。
しかし、もう迷う時間は残されていなかった。
曇りきった暗い夜空に響く雷鳴を超えるゲートの割れる音と同時に黒い物が落下してきた。
その人物の皮膚は灰色で白髮で赤黒いオーラを放つ異質な存在。
そして、異質ながらに有無を言わせない圧倒的強者の風格。
「…本体も此方では俺らと同じくらいの大きさなんだな。」
カオスは閉じていた赤黒い瞳を開いた。
「…力を感じない………そうか。封印されたのか。」
「だから何だってんだ。」
「…ならば、彼奴を殺せば終わりか…だが、位置が特定できないな………仮に俺ならどうする…………遠くだな。」
「さっきから何をブツブツ言ってんだよ!」
そう言って亮が突撃した時、本体は片手の指一本でそれを止めた。
「な…!」
やっぱりA級程度の力じゃ無理か!
「邪魔だ。お前の相手は彼奴を探した後だ。」
そう言って本体は俺を投げ飛ばし、地面を思いっきり蹴り、何処かに跳んで行った。
俺はビルを五つほど貫通し、打ち付けられ、防御系魔道具の半壊と同時に気を失った。




