クエスト78 [じっとしてても、どうにもならない]
俺はシュヴァリエにおぶられながら戦場を駆け回った。
全国のシェルターは満員、俺の戦闘地区は接近禁止地区指定しているので、近くに他のハンターも居ない。
その為、この辺のモンスターは此方に全て集まってくる。勿論、E級〜S級まで。
この量はいくらシュヴァリエでも、俺をおぶって庇いながらの瞬殺はできないし、かと言ってS級モンスターを連れて行くのは論外だ。
だから全て処理する必要がある。
「…シュヴァリエ…ゴメン…俺は…」
「仕方ありません。まさか向こうに特攻スキルがあったとは…」
「まだカオスの顔すら拝んでないのに…」
「分体を全て持っていっただけで十分です。我は今、二人の神が混ざり合っています。この残留エネルギー量なら、あと一回、作れます。」
「…だが…それを継承した奴がまともな保証が何処にある!
それに、どんなスキルが発現するかによっては今の水準に戻ってくるのにうん百、うん千年かかるかもしれない!
そもそも、カオスを倒す理由があるのは、カオスに因縁がある奴だけだ!これ以上被害者を増やすことになるんだぞ!
今回は運が良かっただけだ!何時完璧に対応してきてもおかしくない!
初手で封印されるかもしれないんだぞ!」
「…」
「…ゴメン…俺が悪いのに、言い過ぎた。」
「いえ。しかし、これから何をするべきなのか…」
「『封印』って言ってるよな?てことは、復活もできるんじゃないのか?」
「おそらくできるでしょう。ですが、やるとしても、エネルギーが足りない。」
「神が二人混じり合ったとしてもか?」
「やるとしたらこの方法しかないでしょう。
・私が主のご両親に接触し、おそらくのこっているであろう『カオスの残滓』で、私の中の『黒い神』を叩き起こす。
・どうにかして必要エネルギーを貯め、主の中の『エネルギー残滓』と共鳴させ、覚醒させる…」
「両親たちはまだ起きてないが、行けるのか?」
「まずは、主のご両親の中の『カオスの残滓』と接触する必要があります。」
「両親は今、彩と一緒に南田君の所有シェルターに居る。そこに行こう!」
決戦が始まる前、俺は南田君に頼んでおいたのだ。
『彩の知り合いは皆S級だから、緊急時に彩を守れないんだ。だから頼む。何かあった時は、彩と、両親を頼めないだろうか?』
『ハハハ!面白いこと言いますね。暁さんが居れば、絶対なんとかなるのに!
まぁ、わかりました。妹さんと、ご両親はお任せください。』
『すまない。恩に着る。』
俺は彼に頼りっぱなしだ。
秘密も話さない俺をここまで信用してくれる。
本当に感謝しかない。
だが、俺は信頼を裏切った。
合わさる顔がないが、信頼を取り戻すためには力が必要だ。
じっとしてても、どうにもならない。
俺は、両親に会いに行く。
力と、義兄弟姉妹を再び取り戻すために。
「では、まずは追っ手を片付けます。」
方針が決まったシュヴァリエは短剣でモンスター達を斬り刻む。
得物が大剣だとしても、短剣も材質は同じ。
遠くから飛撃を飛ばしまくるだけで大体の敵は死ぬ。
「〜〜〜!」
俺に配慮して速度は落としてくれているが、だとしても速すぎる。
俺は頭がグワングワンしてきた。
上空には、ぽつんとほんの少しの亀裂が入り始めていた。
「継承者よ。あと少しだ。あと少し…」
その亀裂の先には、淀みの向こうから此方を覗くカオスの姿があった。




