クエスト70[帰宅後の いつも通りの 後始末]
家に戻るとやる事が多かった。
とりあえず、妹のベッドに影に入れていた母を、家のソファーには父を寝かせた。
本当なら父もベッドに乗せてあげたいが、夫婦のベッドに爺が眠るのはアウトなのでソファーで寝ててもらう。
まぁ、病院とかに行ったほうがいいのかもしれないが行った所でできることはないと思うので自宅療養だ。
念の為、結月には彩を学校まで行ってもらい、彩に俺が帰って来たことを伝えて欲しいと頼んできた。
…まぁ、帰ったらお説教コースでしょう。
そして、行方不明になっていたため、それについての質問を本部の会長室で行った。
「会長、赤月ハンターが…」
「おぉ!良く来てくださった。ささ、どうぞ中へ。」
そうして校長室にある感じのソファーにお互い座った。
「それでは赤月ハンター、お疲れのところ申し訳ありませんが、あの時、何があったのか教えていただけますか?」
「…魚部ハンター。これから喋ることは必ず秘密にできると約束してくれませんか?」
「…何故でしょう。」
「もし、これが公になって、僕や、僕の家族に何かしらの不便が生じるならば…」
俺はこの時、わざと魔力を放出した。
通常、魔力は感情が高ぶると多少漏れ出す特性がある。
だから俺はそれをわざと起こし、これが本気だということを強く伝える。
「僕は、人類の敵になるかもしれないからです。」
会長はゴクリとつばを飲んだ。
「…では、ここで話すのは危険ですね。」
「…そうですか。」
「はい。この部屋には部屋の隅に監視カメラが、外は誰でも通れる普通の廊下です。
赤月ハンターがここまで言うならば、私は人類を存続させる為にできる最大限のことをしなくてはならないですからね。」
「そうですか。では、よろしくお願いします。」
「はい。また今度、話は聞かせてください。」
この日のTVや新聞では『S級ダンジョンクリア』という快挙よりも、『帰ってきた最強』と言った感じで、俺が帰ってきたことの方が大々的に報道された。
実際、この国が提示できる最大の抑止力が帰ってくることはとても良いことなのだ。
だが、あんまりいい気はしなかった。
そして現在、俺は正座をしている。
「え〜この度は、帰宅が遅くなりまして大変申し訳ございませんでした…」
「うん、まぁまぁ、お母さんとお父さんがなぜか一緒に帰ってきたからそこから説明してもらおうか。
お母さんとお父さんは何処にいたの?」
「…この話は、結構真面目に今ここでは話せない。」
「何で?」
「今度、会長にも個別の絶対に情報が漏れない所で話すことになってるから、そこで2人には話します。」
「…お母さんとお父さんは目覚めるの?」
「できることはやった。けど、前例が無いから分からない。」
「そう…じゃあ、この話は一旦置いておこう。湿っぽくなるのもやだからね。
…で、1年間何処にいたの。」
「それがさ、変なんだよ。俺は絶対にダンジョンに一年もいなかった!それに、あそこを出たらいきなり髪がめっちゃ伸びたんだよ!」
「ハァ…ねぇ、私も結月さんも前から言ってたよね?無茶するなって。」
「はい…」
「…ハァ…もういいや。怒ることありすぎて何言おうとしたのか忘れちゃった。
…まぁ、おかえり。無事でよかったね。」
「ただいま。」
こうして俺は一応彩から許してもらえた。
その頃、1、2、3、4の上位分体達が話し合っていた。
「消えた?」
「11とオリジンが消えました。」
「ということは…奴は彼奴等のゲートを使ってこっちに来たというのか…」
「…やはり、今回の悪魔は本当にまずいな。残り四しか残っていない。」
その時、あるひとりがつぶやいた。
「…もう全員であの世界を壊しに行かないか?」




