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クエスト66[歴史の裏側]

 「じゃあ、話を始めようか。」


 親達には俺のコートを被せて寝かせておき、俺は鎧を取り戻したシュヴァリエと黒い神を交えて話し合いを始めた。


 「黒い神、白い神。俺は本当の歴史が知りたい。

 何が起こったんだ。」

 「…では、お話しましょう。嘘偽りの無い本当の歴史を。」



 白い神と黒い神が殴り合いをしたために大きなエネルギーが発生し、十一の世界や魂、その世界の理が誕生した。

 そこまでは合っている。

 しかし、そこでエネルギーが消耗され過ぎた。

 これ以上の直接的戦闘は避けたかった。

 だから黒い神はカオスを作った。

 カオスは黒い神の代わりに動く駒…のはずだった。

 しかし、予想外にカオスは一個体として思考を確立していた。

 神のエネルギーのみで作った生命。

 これは流石にまずいと気が付いた黒い神はカオスを消そうとした。

 しかし、それは失敗に終わり、捕らえられた。

 そしてカオスは自軍を作るために他の世界に手を伸ばした。

 そのタイミングでこっちの世界にも動きが伝わり、長らく眠っていた魔力や能力の概念が覚醒した。

 カオスの存在を知った白い神は自分では止められないことを悟った。

 だから託した。

 しかし、カオスと同じ過ちを犯す訳にはいかない。

 だから、絶対に自我が目覚めない様に『生命』ではなく『能力』として作った。

 そして、他の世界の生命体に託すことにした。


 話はそれるが、この世には遺伝子が存在する。

 生命には遺伝子があり、少し違うだけで生物としては大きく違ってくる。

 人族と呼ばれる者たちは進化の過程で神のエネルギーの残滓を遺伝子として獲得した。

 ホモ・サピエンスだけではなく、ネアンデルタールなどもそうだ。

 しかし、獲得しても覚醒はしなかった。

 そして、ホモ・サピエンス以外は滅び、人=ホモ・サピエンスを指すようになった。

 そして、時代は過ぎる。

 100年に一度くらいだろうか…人族の中には稀に通常よりも多くの神のエネルギー遺伝子を持つものが現れていた。

 前までは覚醒していなかった為、エネルギー遺伝子の量が多かったとしても然程問題はなかった。

 しかし、覚醒が始まった時、エネルギー遺伝子を多く持つものはより魔力に順応ができる。

 それが、S級などになった。

 しかし、稀に多すぎるが故にエラーが起こることがある。

 そして、エネルギー遺伝子を殆ど持たない一般的な力しか使えない。

 これがいわゆる俺らしい。

 そして、遺伝子は継承される。

 カオスに操られた奴の家族が継承者になるのはこういう理屈だ。



 「…なるほどな。じゃあ、何で白い神…シュヴァリエは俺を主と呼んだんだ?」

 「…基本的にカオスに捕まった人物は黒い神がベースのエネルギー遺伝子が多く、継承者は私ベースのエネルギー遺伝子が多い。

 しかし、貴方は両方が多かった。

 しかも、歴代の誰よりも。最低でも二倍はエネルギー遺伝子量が多いです。

 …私達は知らないですが、私達が存在する以上、私達の『親』的存在がある筈です。

 私は貴方にそれを勝手に重ねました。

 明確な理由なんてありません。」

 「…そうか。…まぁ、良いんじゃないか?」


 まぁ、最初から完全に納得のいくものが得られるとも思ってなかったし、こんなもんでいいだろう。

 何があってもシュヴァリエはシュヴァリエだ。


 「…良し、じゃあ一旦向こうに戻るか。」


 そうして俺は、黒い神にゲートを開けてもらい、俺達の世界へと戻った。

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