クエスト41 [条件]
「僕たちの世界にはこんな話がある。
世界が作られるまでの話だ。
まぁ宗教でよくあるやつだね。
けど、僕たちの世界には世界創造の物語はこれしか無い。
君にはこれを読み聞かせてあげよう。」
それからアルタイムによる読み聞かせが始まった。
「昔々、あるところに2人の神が住んでいました。
真っ白の神と、真っ黒の神です。
ある日、彼らは喧嘩をしました。
白が六発、黒が五発、相手を殴りました。
その衝撃により、十一の世界が作られました。
喧嘩に負けた黒い神は元々あった世界に閉じ込められました。
残りの十一の世界は独自の進化を遂げ、文明を作りました。
黒い神は白い神に仕返しをするために、命が消える前に『カオス』という生物を作りました。
やがて、白の神と、黒の神は、消えました。
そして、十二の世界ができたのです。」
マジで、おとぎ話みたいだな。
そもそも何だよ…十二個の世界って…銀河のことを言ってるのか?
それとも宇宙単位で違うの?
『カオス』…混沌…黒い神…随分と安直な名前だな…
「…こんなもんかな。」
「これは…ホントなんですか?」
「え?知らないよ?だって僕が生まれる何千、何億年前だよ?」
何だよ…あてにならんな。
ってか、何億って…一億年前ですら白亜紀だぞ?
何を言っているんだ、この男は…。
「でも、『カオス』が居るのも、世界が十二個在るのも事実だ。
まぁ、一番新しいのはこの世界だし、この中で魔法の文化が根付かなかったのも、この世界だけだから知らないのも仕方がないよ。」
…世界ってできたタイミングが違うのか…なら何億ってのも嘘じゃないのかもな。
…そういえば、ここに居るのは丁度十一人。
そして、文明が築かれたのも十一の世界…。
偶然にしては出来すぎな気がするな…。
「…もしかして、あなた達は…」
「そう。僕たちは、それぞれの世界から1人ずつ集められた。
言わばその世界の代表だね。」
…じゃあ何でよりにもよって俺が選ばれたんだ?
特異体質?それとも何か条件が…
「…何で俺なんですか?」
「それに関してだね。残念なお知らせは。」
「何でしょうか。」
「覚悟してね?」
「はい。」
「継承者に選ばれた俺等に共通する点は一つだけ。
身内が『カオス』の手によってモンスターになったこと。」
…は?身内?彩か?いや…あり得ない…じゃあ誰だ?祖父母?従兄弟?親戚の誰かか?
…俺は、最悪の場合、知り合いを殺さないといけないのか…?
俺の視界が動揺で揺れてきた。
「…動揺が激しいね。
一応、家族構成を聞いても良い?」
「妹が1人」
「親は?」
「両方とも数年前に行方不明に…」
そのタイミングで、アルタイムが口を押さえた。
「マジか…二人とも…?」
「…嘘だろ…?もしかして…身内って…」
「良く聞け…最悪の場合、二人とも、モンスター化している。」
俺は絶望するしかなかった。
親を殺さないといけない。
しかも両方とも。
やっと手がかりがつかめたのに…。
嘘だ…嘘だと言ってくれ…。
「…一応、仕組みを言うと、モンスター化っていうのは、『カオス』の分体が乗っ取ってる状態だ。
『カオス』に乗っ取られた人は、ある日突然、行方不明になり、再び現れた時にはモンスターになっている。
解剖の末、『カオス』の分体は脳を乗っ取っていることが分かった。
理論上、それを取り除ければ、可能性は無くはない。」
「でも、この前のモンスターの時、アンタの兄を俺は殺している。
それについて、何も言わないってことは…できないんだろ…?」
「正確には君が倒れたあと、体を一時的に、乗っ取って僕が殺したから、君が落ち込む必要はないんだけど…そうだね。
今のところ、3人モンスター化した身内を殺ってるけど、取り除き方が分からない…」
…俺は…できるのか…?親を殺すことが…
「…他にも話さないといけないことがあるから、一旦、その話は置いておこう。」
「…はい。」
「次は僕たちの目標についてだ。」
「はい。」
目的…身内の解放か…?
「…俺達の最終的な目標は『カオス』本体の撃破だ。」
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