クエスト39[家族になってください!]
前回
お見舞いに来た南田くんが大問題を置いて帰った。
「…亮、元気?」
次に来たのは柚月と、烏天狗。
「あぁ、元気だよ」
…何故か柚月があまり喋らないので病室には気まずい空気が流れる。
そんな時、烏天狗が喋った。
「〜〜〜〜」
何を言ってるのかがわからない。
俺が首を傾げていると、柚月が翻訳をしてくれることになった。
「…赤月ハンター、お嬢様を守って頂き、感謝します。
…俺はお嬢様を守るという一つの任務すらまともに出来ない落ちこぼれです。
…亡くなった妹と、気絶していた俺の代わりに守ってくださり感謝しかございません。
…少し退席します。
…お許しください。」
そう言って烏天狗はお辞儀をした。
病室には俺と柚月だけが残った。
「…バフォメットさんが亡くなったのは残念だったな。」
「うん…良いお姉ちゃんだった。」
「…あれ?姉妹?」
「ううん。義理姉と、義理兄。バフォメットと、烏天狗は実兄妹だよ。
…最後の家族が1人いなくなっちゃったんだ。」
「そうか…」
何もいえない。俺も家族は妹だけだが、柚月は違う。
血縁関係を持たないな家族ですら1人なのだ。
その寂しさは俺とは、天と地ほどの差があるだろう。
「…そう言えば、最近ね、日本国籍にしてこっちで過ごそうかと思ってるの。」
「そうなのか?!」
「代わりが出来たし、もうあんなとこには居たくないからね。」
「でも面倒くさそうじゃない?」
「中国ならS級の権力があればどうとでもなるし、良い感じに改変して、二十歳になったら日本国籍に変えるわ。」
「ほえ~何か凄いな。」
「でもね、働き口が決まってないの。」
その時、ピンときたね。
「うちの事務所に入らない?!」
「え?」
「今、1人ギルド最低人数が足りなくて困ってたんだ!
良かったら烏天狗さんも一緒にどう?!」
「…入れるのかな…?」
「中国のギルドを抜けて就職って形で日本に定住することにして、俺が上に頼めば何とかなるんじゃないかな?」
「…良いの?」
「勿論!大歓迎さ!」
「…何から何までありがとね。」
「ん?」
「前も、今回も、怖くて、不安な時に真っ先に助けてくれたのは貴方だった。」
「たまたまだよ。」
柚月はゆっくり首を振った。
「助けることが日本で当たり前でも中国では当たり前じゃない。
それにあの場でそれができたのは貴方だけだった。」
少しの間が空いた。
そして、柚月は決心したように話しだした。
「…あの!
私と!家族になってください!」
その時、柚月は、しまった!という顔をし、真っ赤になった。
…色々すっ飛ばし過ぎな気はするが、要するに惚れたということなんだろう。
…考えてみれば、俺も可愛いと思っているし、応援要請があった時には間違いなく真っ先に柚顔が浮かんだ。
俺も好きだったんだろう。
気が付かないふりをしていたのかもしれない。
…女の子が勇気を出してくれたんだ。
男が恥をかかせるわけにはいかない。
やらなきゃいけない事は沢山ある。
でも、少しくらいなら良いのではないだろうか。
…俺は決心した。
「…ありがとう。」
柚月の肩が少し落ちた気がした。
そういえば、この言葉は振られる時の定番のセリフか。
言葉選びをミスったかもしれないな。
でも、そんな事は知らん!
「でも、俺に言わせてください。」
柚月の顔が明るくなった。
俺はベットから降り、地面に立つ。
右膝を付き、右手を捧げる。
「俺と、家族になってください!」
「…はい!
よろしくお願いします。あなた!」
柚月は満面の笑みで答え、そっと俺の手を握り返してくれた。
外ではすすり泣きをしている烏天狗と、その背中を擦るシュヴァリエの姿があった。
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