クエスト32[バフォメット、死す。]
現在の死者
・白虎
・朱雀
・青龍
・麒麟
2人を握り潰した黒い腕はそのまま拳を振り下ろし、玄武と烏天狗に攻撃した。
2人はそれを咄嗟に避ける。
そうして黒い腕はゲートと共に消えた。
そして、次に人差し指が向いたのは玄武だった。
玄武は思考を加速させる。この時に玄武が導き出した答えはこれだった。
『この技は今のところ右手の人差し指でしか放たれていない。
そして人差し指を向けてから撃つまでに3秒ほどのラグがある。
よってこれは魔法ではない。
ならば避けられるはずだ。指を注視しろ…。見極めるんだ。』
そしてその推測通り、撃つ直前に指が空気を押し出す準備の様なことをしていた。
『今だ!』
咄嗟に大きく左に飛ぶ。右の人差し指は関節の可動域の関係で、そこまで左には曲がらない。
そして、その攻撃は避けられた。
「…」
避けられたことが面白くないのか明らかに不機嫌になった。
顔にみるみる血管が浮き出る。
「良し!全員指を注視しろ!見極めるんだ!」
指のからくりを伝えたその時、その男は人では考えられないほど大きな口を開けた。まるで口裂け女のように。
そして、何やらチャージのようなものが始まった。角が金色に輝き、赤いビリビリを纏い出した。
そして、口に赤い玉が生成される。それと同時に、影が伸びた。だが、口の方にとらわれすぎて、誰も気が付かなかった。その影は柚月の足をしっかりと掴んだ。
「え?!動けない!」
動こうとした彼女はバランスを崩し、その場に座り込む。
彼奴の口は間違いなく柚月に向いている。烏天狗が咄嗟に動き出したが、間に合わない。召喚された腕が消える直前にした攻撃を避けた時に柚月から離れすぎてしまった。
「お嬢様!」
深紅の光線が発射される。その威力はモンスター自身が反動で、地面にをめり込ませてても下ってしまう威力。
「ー!」
死を悟った柚月が腕で顔を覆った時、何かが間にに割り込んで来た。
「ー!」
そこには頑丈な4枚の翼で自分と柚月を包むバフォメットの姿が。
「何やってるの!死んじゃうよ!」
「お嬢様を守るのが私の使命です。」
欠けた面から見えるバフォメットの目は笑っていた。
「良くないよ!お兄さんを残して死ぬだなんてだめだよ!」
「兄様はこれからもお嬢様に仕えますよ。心配いりません。それにもうお嬢様は未来の旦那様を見つけてますから大丈夫ですよ。」
「そんな冗談言ってる場合?ねぇ!お願い…。もうこれ以上…。大切な人に居なくなってほしくないの…。」
そんな話をしている間にもバフォメットの翼は焼かれていっている。玄武と烏天狗はモンスターがエネルギーのような何かを纏っていて近付けず、光線も同じ理由で近付けない。
そんな状況の時、烏天狗の面からは水が流れていた。
「俺は…。なんて…。無力なんだ…。」
拳を握りしめるその手からは血が流れていた。
「…そろそろお別れのようです。」
「嫌だよ…行かないでよ。」
「私ももっとお嬢様と兄様と過ごしたかったです。でも、それと同じくらい最後までお嬢様を守れる事が嬉しいのです。」
「蘭姉さん…。」
「お嬢様。…いえ。柚月。今まで、ありがとう。」
「…こちらこそ。家族でいてくれてありがとう。お姉ちゃん。」
そうして、光線が消えたタイミングで、丁度バフォメット…いや、蘭の命は途絶えた。
主を最後まで守り抜いたその一生は誰よりも天晴れであった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
蘭の亡骸を膝に乗っけて、柚月は泣き崩れた。
その時、モンスターの指が再び柚月に向く。
しかし、烏天狗が柚月を抱えて避けた。
「蘭の命は…絶対無駄にしない…。」
その仮面の下には涙で顔中がぐちゃぐちゃで、それでも使命を全うしようとする1人の兄の姿があった。
「大丈夫ですか!」
その時、ちょうど日本組が4人到着した。
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