クエスト30[跪け。下等生物。]
「餓者髑髏か!」
顕現した髑髏は腕を振り上げ、敵味方区別なく潰しにかかった。
振り下ろした腕の先には疲れ果てた麒麟が。しかし、そのために玄武とバフォメットがいる。バフォメットが黒い4枚の翼を広げ、全員を覆い、ガシャ髑髏の腕を受け止める。そうして、翼の隙間から飛び出した玄武が攻撃を仕掛ける。全身に青いオーラを纏い、手から水の玉を出し、髑髏に投げつける。
「受けてみろ!『水魔弾』!」
的確に右膝の関節を撃ち抜き、ガシャ髑髏の足が外れ地鳴りと共に膝をつく。そのタイミングを逃さず、烏天狗が追撃を入れる。
「一式!『居合!不止の太刀』!」
黒い三日月型の斬撃がガシャ髑髏の右腕を断つ。
その時、烏天狗と玄武に向かって飛ぶ斬撃と、濃い緑色をした如何にも毒状態にしてきそうな液体の弾をリッチが撃ってきた。空中で技を使った2人は一瞬構えが遅れ、斬撃が当たり、その傷口から液体が体内に入ってしまった。
「ゴフッ!」
嫌な音と共に2人の傷口の血管が浮き上がり、落下しながら吐血する。
「少し想定外だが問題ない。白虎!天狐!俺達は攻撃を続ける!朱雀!頼んだ!」青龍が落下した2人を回収し、朱雀に渡す。
「うわぁ…こりゃ酷い。」
目の前の2人は全身の血管が緑色になりつつある。傷口は爛れ、意識もない。早く対処しないと手遅れになる。
「…よし!それじゃあ、いくよ!」朱雀の掌に2つの赤い火が灯る。
「治炎!」2つの炎が2人を包み、徐々に症状が改善していく。
…回復系魔法『治炎』。これは一見すると普通のA級ヒーラーと回復速度が大差ないように見えるがこのスキルの真価はそこではない。このスキルの凄いところはS級の鳥嶋が治せない傷もゆっくりではあるが、治すことができるところだ。想像の生物『朱雀』がモデルなだけあって、かなり致命的な傷も軽傷くらいまで回復できる。流石、この世界で『生命の息吹』の次に回復力が高いスキルである。
「赫弾!」これにより四肢が破壊され、もうガシャ髑髏は瀕死にまで追い込まれていた。リッチは青龍に邪魔され、即興盾のアンデットを生み出すのに必死でガシャ髑髏の援護ができない。
「帯雷炎!」炎と雷を纏った攻撃がガシャ髑髏の首の骨を砕く。ガラガラガラガラと轟音をたててガシャ髑髏が、崩れ落ちた。
「カタカタカタカ…」表情が変わらなくてもリッチが、慌てているのが分かる。だが、青龍だけではアンデットの盾に防がれ、決定打が与えられなかった。その時、1人の男が中に飛び上がった。
「さっきはよくもやってくれたな骸骨!」玄武である。しかし、詠唱している玄武は空中では逃げられない。骸骨が一瞬召喚をやめ、先程の斬撃を飛ばす。しかし、今度は防ぐ。そう、烏天狗が!
「二式!『兜割』!」飛ぶ斬撃どうしがぶつかり、相殺される。そうして丁度、玄武の詠唱が完了した。
「北神・玄武!」
水で作られた想像の生物『玄武』がリッチに突っ込む。その質量から作られる威力は『雷轟鳴帝』に匹敵する。リッチは周りのアンデットと共に壁に押し込まれ、土煙によって視界が遮られた。死ななかったリッチは次なる攻撃をしようとしたが、忘れてはならない者を忘れていたのだ。
「俺を忘れられたら、困るぜ。」土煙から突っ込んできたのは青龍!青龍の得物は短剣。余り、とどめには向かないが、リッチは核が見えている。
「カタカタカタカタカタカタカタカタカタ!」リッチは死の恐怖を感じたらしいがもう遅い。
「龍殺し・突!」短剣にドリルの様な形のオーラが巻き付き、リッチの核を削る。リッチは声は出せないが、口を開け、腕を掲げその手は青龍に向いていた。そうして核が割れ、リッチは息絶えた。
…しばらくして
「本部。ボスのリッチを撃破。これより帰還する。」《了解。》
このやりとりをしている最中だった。突然背後から声が聞こえた。
「…『死人生成』か…弱いのがいくらいても役に立たんな…これは要らん。」
突如として、謎の黒いゲートから現れた男がリッチの核を触っていた。
「…貴様。何者だ。」問い詰めてもその男は動きを止めない。
「おい!動くな!警告だぞ!」警告しても無視。
「おい!止まれつってんだろ!」そう言って白虎が爪を男の首に引っ掛ける。そうするとようやく男の行動は止まった。しかし、その数秒後ありえないことが起きる。
「ここは立ち入り禁止地区だ。何処の人間だ!名を名乗れ!」
「はぁ…跪け。下等生物。」
その男が振り向き、指を突きつけた直後、白虎の腹に風穴が空いた。
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