クエスト2[継承者]
「キャアァァ!」
「うわぁぁぁ!」
誰かが叫ぶ。
2人の人間が今、この場で死んだ。
これは本当にD級なのか?
全員が同じ疑問を持った時、斎藤さんが指示を出した。
「止まるな!!動けー!」
その言葉を合図に全員が扉に向かった。
しかし、E級は足が最も遅いから当然ゴーレムに追いつかれる。
斎藤さんのウィンドカッターでの援護や、他の人のファイヤーボールなどのおかげで何とか逃げ切れてはいたものの、ついに一撃青いゴーレムナイトから脇腹に叩き込まれてしまった。
「ガハッ…!」
幸いそいつの武器はハンマーのようなものだったので切れたりはしなかったが、肋骨が3本は持っていかれてしまった。
「ゲホ…オェ゙…ゴホ…」
痛みで足がふらつく、他の人からの援護も途絶えた。
その時、足元に見覚えのある首が転がってきた。
「…鬼頭さん…」
ハンターとはそういうものだ。
家族がいても帰ってくる保証はない。
知り合いの死に動揺し、青にもう一撃入れられた。
ドカン!!
物凄い音とともに壁にたたきつけられた。足元を見るとさっき殴られた左足が血を垂れ流していた。
「ヒューヒュー…」
呼吸をするのだけでも一苦労だ。
俺は歯を食いしばって動く。
おそらくさっき鬼頭さんと飛んできたであろう剣の鞘を支えにし、また扉に向かって走り始めた。
その時に初めて気が付いた。
隊のほとんどが亡くなっていたことに。
斎藤さんと三上さんの遺体は見えず少し安心した。
「二人は脱出できたのか…」
安心したのもつかの間…俺は気が付かなかったのだ。
残っているのは俺一人。
ゴーレムナイトのヘイトがすべて俺に集まるということに。
ヘイトが向いたのは5体。
白色のゴーレムナイトは誰かに倒されていた。おそらく斎藤さん達だろう。
緑の剣をよけ、黄色の矢をかすり、赤の拳を避け、黒の盾に押し出され、青のハンマーによって扉と反対側の壁にたたきつけられた。
「ヒュー…ヒュー…ヒュ…ゴホ!ガハッ!」
ビシャビシャ…
洞窟内に嫌な音が響く。
肺がやられたのか血を大量に吐いた。
折れてない骨も少なくなり逃げ回ることはもう不可能だった。
その時壁の前に石板を持ったお地蔵様のような石造を見つけた。
何か文字が書いてある。
ゴーレムナイトが近づいてきている。
意識が薄れてきた。
血を流しすぎたのだろう。
俺は霞む目で必死に読んだ。
石板にはこう書かれていた『貴方は継承者になることができる。』
「継…承者?」
その文字を読み上げたとたんに時が止まった。
正確には意識はあるが、俺もゴーレムナイトも例外無く、周りが動けなくなった。
そうして俺の前にシステム画面が現れる。
俺は驚いた。
本来システム画面は覚醒と同時に目の前に現れ、体力、筋力、俊敏、魔力にそれぞれに決められた数字が自動的に割り振られ、それを見せられて終わりという、あっても無くてもいいような存在だった。
そんなシステム画面からメッセージが送られてくるなんて話は聞いたことがない。
画面にはこう書かれていた。
【継承者になりますか?】【YES】【NO】【NOを選んだ場合0.6秒後にあなたは死亡します。】
少し上に視線を向けると赤いゴーレムナイトの拳が当たる寸前だった。
…走馬灯か? 面白いな。
しかし、このまま何もしなくても俺は死ぬだろう。
なら、何にだってかけてやる。
俺が生き残る可能性が1%でもあるなら!
よくわからないが…継承者になれば生きれるんだろ…なら…なってやる!
俺は心のなかで強く念じた。
その時、視界が真っ白になる。
そして俺は意識を失った。
俺の目が覚めたのは翌日の朝11時だった。
あのダンジョンを管理していたのはダンジョン・ギルド管理局という戦力が軍人から自国のハンターに変わったとき、政府などがハンターを管理するために作った組織でハンターを取り締まる法律とともに設立したところなのだが、そこの調査の結果、ダンジョンの魔力測定に大幅なミスがあり、実際はB級に限りなく近いC級だったとA級のハンター職員の新宮さんに告げられた。
生存者を教えてもらったところ俺と、三上さんと、片足になった斎藤さんだけだったそうだ。
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