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7 1581年。『高天神城の戦い』side武田勝頼

 7 1581年。『高天神城の戦い』side武田勝頼



 1581年――。

 第二次高天神城の戦いが幕を開けた。

 武田勝頼は長篠の戦いで武田二十四将と手塩にかけた騎馬軍団を全て失い途方に暮れていた。

 全滅した騎馬軍団と武田二十四将を失った勝頼は嘆き悲しんでいた。

 そんな絶望を味わった武田家に引導を渡す時がやってきた。

 傷口に塩を塗るかの如く苛烈な攻めで高天神城を織田徳川連合軍が包囲する。

 絶体絶命を迎える武田軍は最早、騎兵がいないので、全員歩兵でしかも竹槍で戦っていた。

 対する織田徳川連合軍は大規模な軍勢、それに加えて鉄砲一万丁、そして騎兵。

 勝てる訳がなかった。

 だけど、武田勝頼は最後まで諦めていなくて籠城戦の構えを見せる。

 勝頼は自らの勝利を疑わない。

 過日の栄光を捨てる事をしない何が何でもしない諦めの悪い性格だった。


「籠城戦じゃ! 武田軍は戦国最強! すぐに織田信長の首を取ってやるわ!」


 諦めていないのは武田家当主である勝頼のみ。

 残った家臣団は能力の低い勝頼に苦言を呈する老人ばかり……。

 しかし、亡き信玄公時代の老臣たちにはそれなりの配慮をしてきた。


「小山田! まだお主が残っておるわ! 五百の兵を預ける! 突撃じゃ!」


「殿! ご乱心めされるな。たった五百の軍勢で五万の織田徳川連合軍に突撃など正気の沙汰ではない」


 小山田は白髪交じりの老骨である。

 最後に残った武田二十四将。

 だが、能力は他の早々たる面々と比べて最低値である。

 勝頼は小山田の怖気づいた態度に逆上する。


「ええい! 女々しい奴め!」


 小山田に逆上する勝頼を周りの最低値の家臣たちが大勢いで取り押さえる。

 本当は勝頼が女々しいのだがと言う顔をしている家臣が疎ましかった。

 新たに武田二十四将を揃えようとも思ったが、とても以前の家臣団と力量が違った。


「分かり申した御免!」


 小山田はそれだけ言うと軍議の間を去ってしまった。

 勝頼はそれを見ると、


「やれば出来るではないか! 馬鹿め!」


 最後に残った唯一の武田二十四将を罵倒する勝頼は最早救いようがなかった。

 それから半時を待たずして小山田はあっさりと織田方に寝返ってしまった。

 この時の勝頼の胸中は穏やかではなかった。

 あの小山田が寝返った。

 昔は可愛がってくれた老臣が。

 しかも、二の丸、三の丸と次々と城門が脅かされる恐怖に苛まれた。

 勝頼軍はたったの三百名の歩兵に竹槍の子供だましの軍隊。

 勝てる訳がなかった。


「勝頼様! 寝返った小山田が、降伏せよと脅してきました!」


 伝令兵が、片膝付いて述べた。


「いや、まだ降伏はしない。ぎりぎりの状況で降伏しようかな」


 勝頼は元来、臆病な性格である。

 武田信玄の勇猛さを受け継いでいなかった。

 諦めの悪い性格もあり、成長しきれない子供のような思考回路だった。

 勝頼は格好つけてぎりぎりの状況での降伏案を立案した。

 周りの家臣たちは何で降伏するのに格好つけなければならないのかと息巻く。

 勝頼が天守閣より、戦場を眺めると織田信長が先頭に立っているのが見えた。

 憎き信長自ら自分を追い込もうとするのか、と勝頼は苛立った。


「勝頼めが! そんなに格好つけてどうする!? 早く降伏せよ!」


 織田信長が降伏を直々に告げる。だが、勝頼は、


「馬鹿を申すな! 武門に生まれ落ちた者が易々と降伏するか馬鹿め!」


 偽りの虚勢を張った。


「これが最後通告だぞ!」


 呆れてものが言えない様子の信長。


「ふん! 絶対に降伏しないからな」


 なおも虚勢を崩さない。


「あの馬鹿者はもう駄目だ! 全軍突撃! 城に火を放て!」


 何と、信長は城に油をぶちまけて、火を放って焼いてしまった。

 勝頼はこの瞬間、しまったと言う顔をした。

 もっと早く降参しとけばよかった。

 勝頼は怖くなったのだ。

 死ぬことが。

 死にたくないと喚き散らす勝頼。

 だが、難攻不落と謳われた高天神城は炎に包まれ、哀れ勝頼は残った直臣たちと共に呆気なく命を散らせた。

 哀れ勝頼は火が全身を覆い火達磨になって発狂して死を遂げた。

 こうして戦国最強と謳われた武田軍は滅亡した。

 最後は武田二十四将も武田の誇る騎兵も無く、竹槍の歩兵の戦ごっこの軍隊であった。

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