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4 羽柴家中

 4 羽柴家中



 佐吉は羽柴家中に加入し、先に秀吉子飼いとなっていた後に加藤清正となる虎之助。

 そして福島正則となる市松や、すでに学ぶことなしと言われ元服を果たした大谷吉継と会った。

 ここで悪目立ちしても良くはないし、無能者だという烙印を押されるのも良くない。

 ならば有能者であることを示しつつ、先に子飼いとなった者を立てねばならない。


「佐吉と申します。先輩方、よろしくお願い申し上げます」


 佐吉は平身低頭頭を下げた。

 自分は誰よりも才覚があるが、この中では新参者なのだ。


「虎之助と申す。佐吉と言うのか。分からぬことがあれば何でも申すがいい」


 秀吉の縁者にしては背が高い御仁が、配慮するような言い回しをする。


「市松だ。そう固くならずとも良い」


 無骨そうな少年が、朗らかに笑顔を作る。人懐っこい御仁だ。


「大谷だ。そう気負わずに構えろ」


 大谷は一番、佐吉と気が合いそうだった。

 この面々の中で最も有能なのが見て取れたからだ。

 だが、病魔に蝕まれる気配が漂うのを直感的に感じた。

 何れ、彼を救わなければならない。

 それが出来るのは佐吉だけだ。

 恐らくだが、大谷にとって最後の砦となりえるのは自分だ。


「はい。ご配慮痛み入ります」


 そういいながら、佐吉は菓子折りを持って皆に振舞った。

 佐吉の心遣いに皆は感動して、佐吉を持て囃した。

 佐吉はこの者達と仲良くしなければならない。

 来たる徳川との戦いの為に豊臣家中を一枚岩にする。

 そうしなければ怪物である徳川家康には到底敵わないであろう事は明白であった。

 それにしても粒ぞろいだ。大半が秀吉の縁者と言う事だが、やはり血か……。


「お主は剣術が出来るか? 算術などはお得意の様子だが」


 市松は剣術が好きなようだ。

 前情報によれば、市松の母は秀吉の叔母だという事だが、農民の子だ。

 農民を脱却し武士階級となった者は剣を習うのか……。


「ええ。少し腕に覚えがあります」


「ならば手合わせを。拙者、農民の出ながら負けたことがありませぬ」


 下手を打ったな。少し目立ってしまった。

 軽くもんでやるか。多少は出来るということを見せつけなければ。

 木剣を手渡されて、手合わせをした。

 お互いに間合いを取って構える。

 市松は見た所、剣を覚えてまだ間もないと見える。

 市松と言う人物を見極めてみるか。


「始め!」


 その瞬間、佐吉は鋭い踏み込みから一閃。市松の首筋に木剣をストンと当てた。


「終わりだ」


 佐吉の眼が光る。その言葉は市松を絶望させるに相応しかった。

 市松は腰を抜かして、尻もちを付く。


「お見事! 流石は佐吉殿だ。算術が得意な頭でっかちではなかった」


 パチパチと虎之助が拍手した。

 それに呼応し、大谷は目を見張るような顔をしている。

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