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32 三吉の大論陣side三吉

 32 三吉の大論陣side三吉



 九州上方軍本陣。

 三吉は日中の本陣にて、大勢の臣下に囲まれて御満悦であった。

 南蛮渡来のカステラを献上されて、それを口いっぱいに頬張っていた。


「カステラは美味いな。南蛮はこんな美味しいものが溢れかえっておるのか」


 これから徳川秀康率いる東軍十万を叩くための作戦を練らなければならない。

 やはり李朝軍を雇って正解であった。

 李舜臣大将軍を始めとした李朝軍は精強無比。

 中でも東中華の軍神と謳われた楽毅の子孫である楽毅乗兄妹は有能。

 それに楽毅乗はまだ若く滅茶苦茶格好良い。


「官兵衛……楽毅乗様が来ないな。

 一緒にカステラを食べる約束をしていたのだが」


 三吉はいつになく不機嫌であった。

 楽毅乗が来ない。


「三吉様、何やら妙な胸騒ぎがします。

 李朝軍の奴らが、何か馬鹿な事をしそうで困ります」


「確かに……李朝軍は一枚岩ではない。

 仲間割れでも起こそうならば、御せずに転覆は確実。

 だが、李舜臣大将軍よりも楽毅乗様の方が魅力がある」


 三吉は床几に座り、顎に手をやりながら思案を重ねる。

 これからの情勢の動きに機敏に反応し、軍を動かさなければならない。

 何処で東軍と開戦するか……やはり、美濃関ヶ原だ。


 ――関が原で東軍と決戦を迎える手筈となろう。


 三吉は関ヶ原で決着を付けると決めた。

 そこが東軍……徳川秀康の敗着への道筋だ。

 地図でビシッと指示したのは関ヶ原の地図だった。


「三吉……お前の読み通り、奴ら東軍は関ヶ原に布陣すると見た。

 そこが要衝であり、肝であるからだ。

 我々も関ヶ原に布陣して事を構えるほかあるまい」


 父である石田三成が神妙な顔をして三吉に意見を申した。


「父上もそう読むか。そう……私もそう読む。

 小規模の戦を頻発するのは愚策。

 一気に大規模な戦をして叩くのが肝要だと私も心得る。

 皆もいつでも関ヶ原に向えるよう戦準備をするようにしておけ」


 三吉は号令を掛けて軍議は終了した。

 楽毅乗に振られたショックは大きかったが、楽毅乗の奴は不穏な人物だ。

 李舜臣将軍の事が気に入らないと常日頃から言いまくっていた。

 もしやと思ったが、成程……と唸り、楽毅乗と李舜臣将軍の仲に亀裂でも生じたかと看破した。

 李朝軍はやはり一枚岩ではないと予感していた。

 一波乱あるな、と三吉は高みの見物を決め込んだ。

 三吉の予想通り、その知らせが舞い込んだのは数十分後だった。


「急報! 李舜臣軍と楽毅乗軍がぶつかり、李舜臣軍が敗走!

 李舜臣将軍は行方不明! 楽毅乗軍はほぼ無傷です!

 楽毅乗将軍、破竹の強さです」


 伝令兵が片膝付き、三吉に首を垂れて事態を知らせた。


「そこまで楽毅乗様は強いのか!?

 やはり私の読み通り仲間割れが起きたか。

 全く、どうしようもない連中だと思ったが、楽毅乗様が勝ってよかった。

 しかも無傷。だが、李舜臣将軍も張子の虎も同然とは言い難いな。

 単に楽毅乗様が強すぎただけだ。李舜臣将軍も明らかに強い事が伺える。

 両班育ちの李舜臣将軍が楽毅の子孫に勝てる訳がない」


 三吉は戦勝報告をしにくる楽毅乗を想像して笑みを零した。

 勿論、最強武将だと謳われる楽毅乗は三吉のお気に入りだった。

 あの列国に覇を唱えた李舜臣大将軍を打ち破った楽毅乗は確かに強い。

 だが、如何せん御しがたい御仁だった。


 ――それにしても無傷だとは……これは思わぬ拾い物であった。

 全力で篭絡するほかあるまい。


 天才の名をほしいままにしている三吉でも楽毅乗は手懐けてみたい御仁だ。

 楽毅の子孫など強いに決まっている。

 楽毅乗が三吉の前に現れたのは全軍が出立する前の晩であった。

 楽毅乗とその側近がぞろぞろと本陣にいる三吉に恭しく首を垂れた。


「楽毅乗様、良く来られた。

 李舜臣将軍を相手に無傷とは真に天晴だ」


 三吉は手放しに楽毅乗を褒め称えた。

 正直、李朝軍内での争いなどどうでも良い。

 単に東軍……徳川を打ち破れる戦力があればいいのだ。


「これはこれは三吉様。

 貴女様の忠実なる僕である楽毅乗であります。

 李舜臣など、最早過去の遺物……奴らは散り散りになりました。

 軍を失った李舜臣など、既に大将軍ではない」


 神妙な顔をして楽毅乗は述べた。

 その顔は一介の将軍ではなく、大将軍の顔になっていた。

 確かに軍を失った将など、悲惨な末路を遂げるのは当然。

 楽毅乗の言い分は正しい。

 只、三吉は悲しかった。

 列国にその名を轟かせた大将軍である李舜臣が軍を全て失ったことに衝撃を覚える。

 李舜臣はその後、どうなるのであろう。

 落ち武者狩りにやられることは明白である筈。

 だが、三吉の眼をもってして李舜臣大将軍は運命力が強い御仁だと言うのは明らかであった。

 腐っても李朝第一の大将軍に上り詰めた御仁だから只では起きない。

 三吉は先見の明を発揮させて瞳を輝かせた。


「三吉様、某に先鋒をお任せください。

 この楽毅乗軍はまだまだ余力を残してございます。

 李舜臣軍に多少は削られましたが、まだ四千の兵が残っております」


 その楽毅乗の言葉は重々しく、それでいて苦々しく苦しそうであった。

 確か、楽毅乗軍は元々、兵五千の筈であった。

 物見の兵の言よりも、かなり削られている。


 ――李舜臣軍は意外に手強かったか……。


 顎に手をやり、フーと息を整える。

 西軍先鋒である楽毅乗軍が開戦前に大いに削られてしまった。

 それも当然、李舜臣軍は李朝最強兵団なのは日の本でも知れ渡っている。

 だが、それを相手に兵一千の損失だけで済んだのは驚異的だ。


「よし、楽毅乗様に先鋒を命ずる。

 全軍出陣! 目指すのは美濃関ヶ原! そこが秀康の墓場だ」


 三吉は少女の声音を高らかに弾ませて、全軍に号令を掛けた。

 両軍合わせての二十万規模による衝突の幕開けである。

今回はここまで。

皆さん読んでくださりありがとうございます。

天下統一へと邁進していきます。

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