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28 日の本への移籍side李舜臣

 28 日の本への移籍side李舜臣



 豊臣本陣の天幕から自軍の天幕へと戻った李舜臣は興奮を催して震えていた。

 これから身が震えるような戦が待っていると思うと居てもたってもいられなかった。

 武者震いと言うやつである。

 李舜臣は両班を大勢連れて李朝から日の本へと移籍した。

 三吉という小娘に出会って李舜臣は日の本への考え方を変えた。

 あの小娘は常軌を逸するほどの傑人であった。

 李舜臣の眼から見て、三吉は幼いながら達観した小娘である。

 気合が入った李舜臣は特別にとっておきの大将軍も一緒に連れてきた。


「これから日の本の命運が決まる大戦が始まりますな、楽毅乗将軍」


 李舜臣は隣に佇む長身痩躯の黒武者に声を掛けた。

 李朝第二の大将軍であり、あの東中華の軍神と恐れられた伝説の大将軍、楽毅の子孫である。

 その名は楽毅乗……大陸最強の武人でもある。

 その武力は古の呂布奉先と同格、いやそれ以上の突出した武力を持つと噂されていた。


「その通りですね。李舜臣将軍」


 楽毅乗はおとなしい声を出した。

 そのおとなしい姿に李舜臣は相変わらずだな、とボソリと呟いた。


「相変わらず大人しい奴だな。

 大陸最強の武人と言われるお前を呼んで正解だった。

 お前だけは他の両班と違う。期待しているぞ」


 そう言って李舜臣は楽毅乗の肩をポンと叩いた。

 呼んで正解だったが、それ以上に李舜臣は楽毅乗に嫉妬していた。

 その理由は自分よりも強いからだ。

 李舜臣は若き頃から、飛ぶ鳥を落とす勢いの将軍であった。

 だが、年を取って楽毅乗に出会ってショックを受けたのだ。

 野戦も攻城戦も無敵と謳われる程に強い、と噂されていた。

 楽毅乗の生い立ちそのものが異常であったのだ。

 楽毅乗は最初は明国の将軍であった。

 だが、李舜臣に憧れて自軍の兵を連れて李舜臣の元へと来たのだ。


「来たる日が来たのですね。

 李舜臣殿の兵は五千五百。私の兵は五千。

 東軍の兵力は十万と聞きました。

 我ら西軍も十万ほどでしょう。兵力は拮抗している。

 それはそうと噂で聞きましたが、長宗我部元親なる武将、発狂していると聞きましたが。

 大丈夫でしょうか?」


 いきなり、話題出して話題を変えたあたり、相も変わらずポンコツだなと心の中で嘲笑した。

 ハッキリ言って長宗我部元親などどうでもいい。

 戦で子を亡くす等、そんなの日常茶飯事だ。


「土佐の出来人か?

 傑人だと噂されたが、息子の長宗我部信親を失ったらしい。

 そうだ。奴は心を病んでいる。

 儂は戦が原因で狂った人間を大勢見てきた。

 所詮、それまでの男だっただけだ。

 気に病むことはない。武人ならば、己を完全支配出来なければならぬ」


 李舜臣は己にも言い聞かせて目の前の楽毅乗を諭した。

 李舜臣自身も戦で多くの有能な配下を失って絶望した経験がある。

 だが、李舜臣は戦い続けて己を完全支配する術を身に着けたのだ。


「己の完全支配ですか……私も李舜臣殿の境地に立てるようになります」


 楽毅乗は急に凛々しい顔を際立たせて言った。

 李舜臣も楽毅乗のポンコツと心の中で詰った。

 まだまだ楽毅乗も成長できると信じてお呼ばれさせてやはり正解だと思った。


「やはり移籍して正解だったな。

 なにしろ強い軍と戦えるのだから。

 まあ、我の大駒である柳成龍殿は宰相の立場にあるために戦が終わったら、祖国に戻るようだがな」


 柳成龍……李舜臣軍の大駒であり、知の柳成龍と謳われる李朝の宰相である。


 ――柳成龍……真に恐ろしき奴はあいつだな。

 既に柳成龍の暗殺部隊が動き出している。全く、有能すぎるが卑劣な奴だ。


 李舜臣は柳成龍とは旧知の仲だが、真っ向勝負の李舜臣とは毛色が違った。


「私は柳成龍殿を有能だと思いますが、暗殺部隊を用意するなど、武人とは言えません」


「馬鹿を申すな。柳成龍は元は文官で宰相だぞ。

 ああいうのを屑両班だというのだ。

 暗殺部隊を組織するなど、卑劣極まりない。

 まだ年若い三吉様に悪い影響を及ぼすのではないかと儂は恐れている」


 李舜臣はいきり立って居られなくなった。

 しかし、柳成龍の宰相としての手腕は見事だ。

 それに囲碁の名手でもある。

 未だ一度たりとも碁で互先で勝った試しはない。

 勝つ為ならば何でもする。

 それを徹底した柳成龍は強いだろう。

 それよりも楽毅乗の方が心配なのだが。


 ――楽毅乗……こいつも滅茶苦茶強いのだが、癖がありすぎる。

 どいつもこいつも、儂の足を引っ張ったら容赦はせん。

 だが、不思議と武者震いして胸が高鳴る。移籍してよかった。

 新たなる主君、三吉様に出会えて良かったと心の底から思った。

 しかし、妙に気になるのは三吉様の容姿だ。

 どうみても女子に見えるのだが、そんなものはどうでもいい。

 自慢の武力を大いに振るえる場があれば自分は幸せなのだと言い聞かせた。

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