22 超全の子side三吉
22 超全の子side三吉
天下の趨勢は一気に決まった。
織田信長公は本能寺で明智光秀に討たれ、その明智も羽柴秀吉に討たれた。
紆余曲折の末、賤ケ岳の合戦で宿老柴田勝家も討ち滅ぼした。
最大の功績を挙げた石田三成は近江一国を与えられた。
近江国佐和山城
三吉は天下一の才人と謳われた石田三成の長女として生まれた。
五才になる三吉は既に大人の考えを有していた。
明らかに早熟型の典型的な超高知能だと三吉自身もそう思っていた。
更に自分は不本意ながら男として育てられている。
父である石田三成からは決して女だと悟られてはならぬと言われていた。
これに三吉は大いに反発したい気持ちがあったが、我慢した。
涼やかな凛々しい顔立ちをした才気溢れる子であった。
――あのような父など何れ家畜にしてやる。
三吉は常々そう思っていた。
超全の子と謳われ続けた三吉はそれでも重圧に圧し潰されそうになった。
父に愛されていないと感じて寂しい気持ちもあったが、次第にそれすらも超越した。
それでも、決して涼やかな微笑を絶やさない。
その微笑に感化された者は全て三吉に傅いていた。
三吉は普段は書物を読み、瞑想し、武芸を行い、感覚を鋭くさせる事に重点を置いてきた。
師匠は傅役である明智光秀である。
明智光秀は慈悲により、名を石田秀光と変え、別人に偽装して傅役となることで生き残った。
それを知っているのは石田三成と、三吉の親子である。
「三吉様、大分超全としてきましたな。どこからでも打ち込んできなされ」
三吉は木刀で生意気な傅役に鋭い踏み込みで一気に打ち込んだ。
しかし、傅役は超人的な動きで躱し続ける。
まるで見えざる世界が見えているような超絶技巧の達人であった。
ここまでの達人がいるであろうかと、三吉は思った。
それにまだ五歳の自分には体力がない。
そして自分はやはり女性なのだと痛感した。
頭がおかしい苛烈な特訓の毎日をして、地獄だと感じた。
そして近江一国を領有する大名家に生まれ落ちた自分は堅苦しいと感じた。
気が狂いそうになるほど、三吉は徹底的な監視されながら育った。
父、石田三成は超人的な人物であった。
万能の才覚を持ち、さながら大魔王のような人物だと皆、恐れを抱いてた。
最初は天下一の才人と謳われた父である石田三成も三吉が生まれた頃を境に変わってきたと皆、畏怖し出した。
子を谷底に突き落とすような教育を施す石田三成を皆が疎んじ、自分を気にかけ出した。
自分の運命を呪いそうな程、三吉の精神は荒んでいた。
それと共に近江一国を領有する大名に出世した石田三成は狂ってきた。
誰よりも優しい人柄と情け容赦のない心を持った相反とする人物になったと皆が評していた。
三吉は普段、食べさせられている食事に違和感を感じていた。
何を食べさせられているのかも誰も教えてくれなかった。
何故、ここまで管理されて育てられているのかも石田三成を始め、誰も教えてくれない。
自分はとても危ない事をさせられているのだと幼くして気付いていた。
――こうなったら絶対に天下を我が手に!
刹那的に速く鋭い一撃が、傅役の首筋を掠めた。
「小娘が……失礼しました」
その瞬間、傅役は物凄く小さな声でボソッと抉るような言葉を言った。
それを聞いた三吉は更なる絶望に襲われた。
やはり自分は孤独なのだと感じ、深き絶望の闇に囚われた。
この腐った世を終わらせ、身分の垣根のない世界を作るのは自分だと心に決めるのだった。




