15 宴5side徳川家康
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15 宴5side徳川家康
安土城に徳川三河守家康が遂に三河から家臣団を引き連れて遥々とやってきた。
徳川家康は今川での長き人質時代を経て今では大大名にまで出世していた。
辛く長い時代を家康は潜り抜けて来たのだ。
己の境遇を恨んだ時期もあった。
だが、不幸をばねにして這い上がったのだ。
しかし、家康は良き家臣に恵まれたと思った。
家康にとって家臣は家族も同然。
自分は皆の親でもあるのだ。
その気持ちを一度たりとも忘れたことはなかった。
そう言った思いを胸に家康は安土城天守閣に入城した。
「酒井忠次。お主は上様の人となりをどう見る?」
側近の頑固者と皆に揶揄される酒井忠次が家康は問うた。
「そうですな。上様は人を傅ける魅力があり、そして殿と同じく人を慈しむ事が出来る一面がございます。そう固くなりなさるな。上様のお人柄は私が補償いたします」
酒井忠次が諭すように家康を落ち着かせた。
頑固者でありながら愛嬌のある側近の言葉に家康は息を吐いて少し肩が楽になった。
「酒井忠次殿の申す通り、上様は殿の事を悪いようには致しませぬと思います」
井伊直政も同調した。
「いざと成れば某の蜻蛉切りで!」
強面の美男子である徳川四天王の本多平八郎忠勝が家康を脅かした。
ビクッと家康は体を震わせている。
これは忠勝が家康をちょっと脅かしてやろうというおふざけであった。
「怖い事を申すな、忠勝」
「冗談で御座るよ。ちょっと脅かすとすぐ面白い反応するから殿は面白い」
忠勝を始めとした徳川家臣団は皆、家康の反応に大笑いに包まれた。
家康は家臣団と鉄の忠誠で結ばれていながら和気あいあいとしているのが常だった。
皆、実は家康を弄っているふりをして本当に家康のことが大好きなのだ。
決して舐められているわけではなく本当に自分のことが好きなのを家康は熟知している。
本当に良き家臣に恵まれたと家康は常々思っていた。
彼らの為にも絶対に上様の宴では粗相はしないと誓った。
そして遂に信長との対面を家康は果たした。
評定の間で上座に座る信長に家臣団と共に家康は跪いた。
「徳川殿。久しぶりですな。跪かなくても良いのですぞ。
ごゆるりと安土に滞在されよ。歓待の宴を用意致しております」
信長は想像以上に上機嫌だった。
そんなに自分に会えるのを楽しみにしているのが家康は正直驚いた。
自分が上様の友人として遇されているのが家康は何よりも嬉しかった。
「ははっ! 上様有難く存じます」
ひれ伏して家康は礼をした。
「おおッ! 酒井忠次殿も居られるのか。酒井忠次殿は碁の名手と存じておる。
ぜひ、儂の相手をして下さらぬか」
お声が掛かった。
「勿論でございます」
この二人のやり取りに家康は素直に誇らしく嬉しかった。
顔合わせが終わり、歓待の宴の用意の間、家康と家臣団は離れの部屋で待ち侘びていた。




