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12 宴2side明智光秀

 12 宴2side明智光秀



 明智光秀は安土城の自室にて調子に乗っていた。

 まさか自分が上様の命にて徳川殿をもてなす宴の指揮を任されるとは。


 ――当然だ。私は美濃国の土岐氏の一族なのだ。


 そんな自分を明智光秀は鼻にかけていた。

 神職の家系だと噂される上様よりも実は自分の方が偉いのだ。

 周りの家臣は『思い上がりも甚だしいですぞ』と諫めたが聞く耳を持たなかった。

 飛び上がるように有頂天になって小躍りする光秀。

 家臣たちは自分たちの殿さまは舞踊が出来るのかと勘ぐる程であった。

 嬉しすぎて変な踊りをする光秀のもとに最愛の娘が訪れた。

 名は玉。細川藤孝殿の嫡男、細川忠興殿に嫁いでいる溺愛する娘だ。


「父上。参りました」


 凛とした佇まいの厳かな長身の目に力がある美しい女性である。


「おお、玉! 久方ぶりだな。お主も宴に招かれていると聞いた。

 忠興殿は一緒ではないのか?」


 扇子をひらひらさせて溺愛する娘に尋ねた。

 思わずはしたない笑みが零れる。

 対して玉は光秀の顔を見て顔がこわばっている。


「父上。

 私がわざわざ会いに来たのは佐吉様にどうしても父上を諫めてほしいと頼まれたからです」


 ――何だ。佐吉様にお呼ばれされたのか。


 全然事の重大さに気付いていないと見せかけて、ここで光秀はハッとなった。

 やはり、佐吉様は宴が失敗に終わると読んでいる。

 だが、何としてでも大役を果たして上様の覚えを良くしたいという欲があった。

 心に芽吹く欲心。

 光秀は生粋の武士である。

 よって、それを抑制する度量がある。

 だが、どうしてもにやけてしまうのだ。

 出世して大大名になる自分を想像して家臣や家族に楽をさせたい。


「玉、可愛い娘よ。私はこの宴の指揮は絶対に滞りなく行って見せる。

 この父を信じてほしい」


 この瞬間、自分の心に巣くう欲を完璧に捨て去ることが出来た。

 全ては自分が抱える友や家臣、家族の為に自分はやってのけるのだ。

 真っ直ぐと穢れを捨てた目で玉の美しい目を見据えた。


「……成程。分かりました。父上を信じます。

 佐吉様には父上は必ずやり遂げると言います」


 力強い目で玉は返した。


「玉、有難う」


 光秀は娘の為にも宴を滞りなく行うと涙ながらに誓った。

 佐吉様の為にも。

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