知らない魔力
ある日突然、火魔法が想定より使えてしまったが、原因は分からないまま十歳を迎えた。
六歳の時と同じように教会に魔力測定を行う。しかし、水晶はあの時と同じように属性を示すことは無かった。
「そういえばあの時、手に力を込めたと」
教会にいた魔術師の人に聞かれて頷く。
「どんな風にしたか、やって見せてくれないか」
「わかりました」
魔力測定の時と同様、かまどに向かい火を出す。さすがにあの時から四年も経てば、少しは大きな火が出せるようになる。とはいえあの時はそんなものではなかった。
あの時と同じように手に力を込める。この手がもっと火を出せますように。
その瞬間、今までよりとても大きな炎となり、魔術師の人が急いで火を消した。
「これは……」
魔術師の人は何か知っているのか、納得するように頷く。
「ラフォン殿、話はしているか?」
魔術師の人は突然、父上に向かってそう言った。父上は、首を振り、忘れてました、と呟く。魔術師の人は呆れたような顔で父上を見た。
「我が子だと思って育てていたから、出自なんぞのことは忘れていたんだ。魔力は少し変わっているが、本好きで手伝い上手の長男、紛れもない私の子だ。すまない、フェリクス。実はフェリクスは私の子ではなく、この魔術師、サモス殿に預けられたのだ。子に恵まれない私たち夫婦にと授けられ、待ち望んだ赤子だったからもう自分の子だと……。サモス殿、もう引き渡さなければならないのか?」
「いや、そこまではまだ。ただ、いずれ、近いうちに……」
「そうか」
あまりの急展開にまるで他人事のように感じる。僕が父上の子では無い、話から行くと母上の子でもないのか……。確かに瞳の色も髪の色もひとつも似たところは無い。紺色の髪に青の瞳を持つ父上と、紺色の髪に緑の瞳を持つ母上。赤毛にオレンジのような瞳の僕。弟のルークは紺色のに髪に赤の瞳だったから、自分の色が気にならなかったのだ。
「ひとまず今日は帰るといい。近々、これからのことを話そう」
「はい」
僕はなんだか夢の中にいるような気持ちで帰宅したのだった。