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プロローグ
勇者の召喚に失敗した。いや、失敗したのではない。赤子が召喚されたのだ。
てっきり大人が召喚されると思っていた私たちはどうにもできず、ただ赤子を見つめていた。
大勢のローブを纏った大人に囲まれているにも関わらず、赤子は泣くこともなく、不思議そうな顔でこちらを見ていた。
王は赤子を抱き上げ、勇者であるのか? と問う。赤子はきょとんとしたあと、きゃっきゃっと声を上げた。
王は、勇者の器ではあると頷き、この赤子の扱いをどうするのか、検討することとなった。
王の決断の元、赤子を城下町の飲食店を営む夫婦に預けることとした。勇者とは告げず、訳あって孤児を育てて欲しいと。
夫婦には子がおらず、訳ありの子でも立派に育てますと涙を流しながら、赤子を受け取った。
魔の森は拡がり続けている。赤子が大きくなるのが先か、魔の森に侵食されてしまうのが先か。
赤子といえど、召喚してしまえば、召喚された者が天寿を全うするまで次の召喚は行えない。
王は魔術師団を強固にし、騎士団を強化することを命じた。