これは昔々のお話
昔々。いまから遡ること五百年前のお話。
この世界に、それはもう悪逆の限りを尽くす魔王いました。
その惨虐で非道な所業は瞬く間に大陸中に広がりました。人々は大変恐怖し怯え、不安な日々を暮らします。
村が、街が、国が魔王軍の手によって次々と地図から消えていく。そんな情報ばかりが耳に入る毎日。明日は我が身かもしれないといと自暴自棄になり人間同士の争いも多く起こります。
もちろん大陸にあった国々が指をくわえ、その状況を見守っていただけではありません。
幾度も討伐隊を編成し魔王軍へ送り込みます。戦果は芳しくなく負け戦ばかり。
人類の存亡をかけた戦いを始めて一年で、すでに大陸の半分が魔王の手に落ちた。
度重なる戦いで疲弊した国々にはもう抗うための戦力はほとんど残っていませんでした。
しかし前線で動きがありました。連戦連敗を重ねる人類側が一部の地域で魔王軍を押し返していると噂がささやかれるようになります。
その戦場では青年が己の拳を振い、万の魔王軍を退けるという眉唾物のお伽噺のような話が。
時を同じくしてある国ではいままさに陥落しようという状況で、一人の魔法使いの大魔法により魔王軍を撃退する。
また同時期。大陸最大の王国を潰さんと魔王軍が集結し、前線から一直線に文字通り全てを踏みつぶし進軍を続けていた。
これで人類も終わりかと思われた。
しかし王都の一歩まえの寂れた村でその進軍はぴたりと止まる。村を守らんと剣をとった少年の手によってだ。
目撃した人々によれば少年が光り輝く剣を一振りするだけで万の魔王軍が消え去ったという。
この報に勝機を見出した王国の王様は少年に人類の未来を託すことにした。教会の秘蔵っ子の少女とともに魔王討伐への旅へと送り出す。
少年と少女は二人、魔王を倒さんと魔王城へと足を一歩一歩進める。旅の途中に腕っぷし自慢の青年と一人の魔法使いを仲間に加えることとなった。
少年ら四人は共に助け合い、数々の苦難を乗り越えて遂には魔王城まで辿り着く。想像もできない激戦の末に見事魔王を倒すことができました。
無敵を誇った魔王軍は、魔王という旗印を失うと瞬く間に統率を失い次第に敗走しだした。
残る魔王軍を掃討しつつ少年らは王国へと帰還した。
その日、王都は歓喜に包まれた。少年らが帰還したことによって人類が勝利したとやっと実感できたのだ。
感謝の言葉が響く花道を踏みしめ少年らは王城へと入城を果たした。
そこでことの顛末を報告する。
最後。死にゆく魔王はこう言ったという。
『我は復讐のために後の世で必ず復活するであろう。それまでの間、ひと時の偽りの平和を享受するがいい』と。
それはただの己を殺す者への怨み言だったのか。それを判断できる者は魔王以外にはいない。
ただそれを迷い事ではないと少年ら四人は断言した。
そしてこうも言った。
『たとえ魔王が復活しようとも我々の遺志を継ぐ者現れたその者たちが打倒す』
そう力強く断言した少年はのちに勇者と呼ばれた。
少女は聖女と。青年と魔法使いは大層な呼び名をきらったが賢者と呼ばれ、拳一つで戦った男は拳王と名乗った。