扉の奥の秘宝 (5) 二人の細工師
宝物庫”要塞”の中に入った細工師二人。そこで意外な話を聞かされる。
慇懃無礼気味の口調で話すボンシックは、似つかわしくないアクセサリーをジャラジャラとさせながら、番人二人が立つ門をくぐっていきました。その後を、無表情な顔でついていくフューイ。門番に愛想笑いを振りまくゾルウッド。何とも奇妙な行列です。
要塞の中の宿舎は四階建てで、宝物庫のある建物の前に建っていました。盗賊共が押し寄せてきた時は、ここが最終防衛ラインとなります。
宿舎に寝泊まりするのは、兵士が三十名、宝物のメンテナンスをする技術者が十名、食事や炊事を担当するスタッフが七名。彼らの管理をする役人が三名と、総勢五十人ほどが生活を共にしていました。
人数が多いと思った方もいらっしゃるかも知れません。でも、深い森の中の保管施設です。何かあっても、本城からの救援には時間が掛かってしまうのですね。それを考えれば、これくらいの兵士は必要なのでした。
三人は一階にある食堂のテーブルに腰を落ち着けます。午後二時頃という事もあり、部屋は閑散としていました。ボンシックがスタッフに声をかけると、ほどなくコーヒーとチョットしたお菓子がテーブルに並びます。
無遠慮に、お菓子をつまんだ依頼者が、
「話は聞いているね。君たちの仕事は、この宝物要塞の中に存在する、ある部屋の扉の鍵を開ける事だ」
と、口をモグモグさせながら言いました。
フューイとゾルウッドは、細工師なのです。細工師とは色々な細工物を作ったり、修繕をする職業でした。その中には、鍵の修理も含まれています。もちろん盗賊も鍵開けのエキスパートではありますが、さすがに王家の仕事を、盗賊に依頼するわけにはいきません。
「それは、どういう事ですかい? ボンシックの旦那。鍵でも失くされちまったとか」
ゾルウッドが、冗談めかして尋ねました。まぁ、そんな事は有り得ないだろうと言う、前提の元にです。
「察しがいいね。実は、そうなんだよ」
この要塞の管理者が、事もなげに答えます。
「えぇ? でも旦那、大抵は合鍵ってもんがあるでしょう? こちらになくても、どこかに保管してあるのが普通でさぁ。特に、お宝が眠っている場所なんですからね」
猫舌なのか、そう言いながらゾルウッドは、コーヒーカップから思わず唇を離しました。
「それがなぁ、昔、合鍵を盗まれて、まんまと宝を持ち去られた事があったんだ、もう、三十年くらい前だそうだが……。で、それ以来、合鍵は作らない事になったわけさ」
中年細工師の疑問を、ボンシックがサラリと答えます。
「それじゃぁ、いっそ扉をぶっ壊しちまえばいいのでは? もし扉がメチャクチャ頑丈なら、周りの壁を壊してもいいじゃないですか」
ゾルウッドが、しごくまっとうな質問を連発しました。一方、フューイは、ゆっくりとコーヒーをすすりながら、ただ黙って聞いているだけす。「そんな事は、どうでもいいだろう」とでも言いたげな顔つきでした。
「それもダメなんだ。ここは最初から、宝物をしまうために作られた施設なんだよ。だから扉はもちろんの事、壁もちょっとやそっとじゃ壊れない。強力な防護魔法が掛かっているんだ。
それを破るには、この施設全体を壊すのを覚悟しなけりゃならない程なのさ」




