表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/238

魔女の薬 (19) ニールの大切なものは?

ママが気になる我が子ニールの、ママやパパより大切なものとは?

そして、ニールの「ママ、ボク何とも思っていないよ」という、いじましくなるくらいの慰めも、かえって小さなトゲが心に刺さったままのような、何とも言えない不快感をママに残したのです。


自分で自分の心をどうしようもなくなったママは、旧友の魔女に救いを求めました。実は薬工事に勤めている魔女の一人はママの大親友で、ニールのお家へ事情を話しに来たのも彼女だったのです。


「薬のせいだとしても、なんで一番大事なニールを忘れてしまったの? 私は母親失格なの?」


普段は明るく気が強い友人の、落ち込みと取り乱す様子を交互に見せつけられた友人は、このまま放っておいたり適当な誤魔化しを言えば、かえってママの健康を害してしまうと考えました。


魔女として、人々の健康を守らなければならない。その一方で、魔女として仲間内の秘密を守らなければならない。彼女の心はそのはざまで揺れ動きましたが、ついには禁を破る事を決意しました。


そうです。彼女はニールのママに「忘れた事柄は、その人が一番大切に思っているもの」という、隠された真実を話してしまったのです。


ニールのママは、本当の事を知って心がようやっと落ち着きました。そして秘密を打ち明けてくれた親友に、深く感謝をしたのでした。


窓辺から、愛しい家族を見守るママ。


「パパがニールではなくて、私の事を忘れるなんてね……」


ママが、呟きます。


パパがニールを忘れなかったという事は、息子を一番に思っていないというわけですから、父親として問題ありだとママは考えました。それでも妻である自分を一番大切に思っていると知って、口元が少し緩みます。女心は勝手……、もとい複雑なんです。


いつか……、いつかニールがこの家を出て行ってパパと二人きりになった時。その時にもう一度、あの薬をかがされたら、私は何を忘れるのかしら。


ママはふと、そんな事を考えました。


ただ、それでも問題は残ります。ニールが何を忘れたかという問題です。小さな天使は、パパもママも、両方の事を覚えていました。つまり、二人より大事な存在があるという事になりますよね。


ママはそれが気になって、遠回しに息子に尋ねてみましたが、そんな聞き方を幼い子供が理解できるわけありません。結局はウヤムヤのまま、この話は立ち消えになりました。


でも、皆さんだけにはお教えしましょう。


ニールが忘れてしまった一番大切なもの。それはお爺ちゃんに買ってもらったクマのぬいぐるみ"ピート"でした。ただニール自身、それを忘れてしまったという自覚がないまま薬の効果が切れたので、本人すら気づく事はなく、永遠の謎となったのです。


まぁ、子供なんて、そんなものですよ。ママが聞いたら、気が抜けてしまいそうな話ですね。



【魔女の薬・終】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ