魔女の薬 (12) ネリス、観念す
師匠に耳を引っ張られ、ある場所へといったネリスは……。
「そうそう、ネリス。実は聞きたい事があるんだけど」
コリスの言葉にネリスは、いかにして薬を作り上げたかを聞かれるのものだと思いました。でも次の瞬間……。コリスは不肖の弟子の右耳をやにわに引っつかみ、そのまま調合室のドアを再びくぐります。
「痛っ! ちょっと師匠、何するんですか! 私が何したっていうんです? これって体罰です! 虐待です! 人権じゅうりんですっ!!」
ネリスは声を張り上げて抗議しますが、コリスは聞く耳を持ちません。ネリスの心の中では”もしかしてバレた?”という気持ちもありましたが、自分から白状してしまっては藪蛇になりかねません。彼女は抵抗しつつも、様子を見る道を選びました。
怒れる師匠は、容赦なく弟子を先ほどの廃棄棟へと引っ張って行きます。その扉を開け二人が入った室内には……。
「師匠、ここがどうしたって言うんですか? いつもと変わりないじゃないですか」
やっと、耳を離してもらったネリスが、赤くなった耳をさすります。
確かにいつもと変わらぬ様子。しかし……。
ゴミを入れる大きな箱。中身は昨日の夕方に焼却したので、中には何もありません。でも心なしか、普段より箱自体が少し前方にあるように見えました。
コリスは、さっきとは逆のネリスの耳をつかみ、箱の裏へと弟子を引きずっていきます。
「痛い、痛い……」
ネリスは文句を言いますが、先ほどのような勢いはありません。事が露見した事を悟ったのです。箱の裏へ到着した二人。そこで目にしたものは、箱と壁の間に押し込められた悲惨な器具の数々でした。やらかしてしまった新米魔女は、動かぬ証拠を取り合えずここへ隠し、あとになって中庭の隅にでも埋めようと考えていたのです。
「で、これは何? ネリス」
コリスが優しく、しかしドスの効いた声で尋ねます。
「さ、さぁ、何でしょうねぇ……」
新米魔女の声はドンドン、か細くなっていきました。
「ネリス!!」
偽りの笑顔から、一転して鬼の形相になった師匠を目の当たりにしたネリスは観念し、全てを告白します。
「で、でも師匠、進歩には失敗がつきものですし、そこまで怒る事は……」
ネリスは、虚しい抵抗を試みます。
「そりゃね。あなたの言い分も分からなくはないわよ。でも、今回は許しません。だって、町の人にトンデモナイ迷惑をかけているのですからね」
「え? 迷惑って……」
ずっと薬工場にいたネリスは、町での騒動を知りませんでした。
「で、でも、それって私のせいなんですか?」
コリスから話を聞いたネリスは、驚いて師匠に問いました。




