パパの魔法 (10) パパの奇策
パパの作戦は大成功。また、良き人との出会いが生まれます。
女の子が「きゃぁーっ!」と叫んだのと同時に、パパと小猫は”そこ”に突っ込みました。途端に、大量の”干し草”が飛び散ります。
そうなんです。パパと小猫は、干し草の中に突っ込んだんです。
どういう事かですって?
さっきパパが周りを見回した時、道路の脇に、馬に繋がれた大きな荷馬車が止まっているのが目に入りました。とても大きな荷馬車です。そこには干し草が、山と積み込まれていたのです。多分、この先の牧場へ運ぶ途中だったのでしょう。
パパは万が一途中で魔力が切れた時には、この干し草にダイブしようと考えていたのでした。非常に危ない賭けのようなものでしたが、あの時はそうするしかなかったのです。
荷馬車を引くために繋がれていた馬は、この世の終わりがやって来たと思ったのでしょう。大変大きな声で、ヒヒーンといななきました。でも、手綱が傍の丈夫な木に結びつけられていたので、勝手に走り出すような事態にはなりませんでした。
少しの時間が流れました。飛び散って、それでもまだ残っていた干し草の中から、パパがニュッと頭を出します。どうやら無事、着地に成功(?)したようです。小猫もパパの両腕にしっかりと抱かれています。
「何だ、何事だ!」
道路の反対側から、慌てて誰かが飛び出してきました。六十過ぎの短い白髪ひげの男で、彼は荷馬車の持ち主でした。名をラガフォルと言います。少し離れた公衆トイレで、用を足していたようです。
「どう、どう!」
ラガフォルは未だに興奮している馬をなだめ、今度は荷馬車の方を見て叫びました。
「何てこったい!」
そりゃぁ、そうでしょう。だって馬のいななきが聞こえたかと思ったら、運んでいた大量の干し草が盛大に散乱しているのですから……。
「あ、持ち主の方ですか。ほ、本当に申し訳ありません」
ラガフォルが荷馬車の主と察しを付けたパパが、干し草にまみれながら謝ります。
荷馬車の持ち主は、呆気にとられます。全身を干し草だらけにした男が、小猫を抱いて突然現れたのですからね。
「おい、あんた、これは一体どういう……」
ラガフォルが尋ねようとすると、彼のズボンがツンツンしました。ラガフォルがそちらをみると、小さな女の子が彼のズボンを可愛い手で引っ張っています。
「違うの、おじいちゃん。違うの……」
女の子は子供心にも、これはマズい状況だと察したのでしょう。勇気を振り絞って、小猫の命の恩人を必死に庇います。
「お嬢ちゃんは、いったい誰だい? 本当に、どうなっているんだ」
ラガフォルは、頭をひとかきしました。
それから数分後。
「ハーッ、ハッハッハッ! こりゃ愉快、何て愉快な話なんだ!」
事情を知った男は、大笑いをしました
普通はこんな目に遭えば怒り出すのが当然です。でもラガフォルは、そんな素振りを微塵も見せませんでした。大変豪快な性格のようです。




