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亡者の戦車 (4) 正体不明の音

ひどい吹雪の晩。ヒト妖精の男の子ニールは、パパからあるお話をしてもらいます。

「おかみさんは、まだやっぱり悩み続けたわけさ。どうするかってね。その時、またさっきと同じ音が聞こえて来たんだよ。しかもその音は、前のよりもずっと大きかった。


その時はさすがに悪党一味も全員が気が付いて、窓から外を見てみたけどやっぱり何もない。でも一味の痩せた一人がポツンとつぶやいたんだ」


パパはそこで一呼吸おきました。もちろん、ニールの歓心を引くためです。


「亡者の戦車じゃないよな」


パパはニールの顔を見つめ、意味ありげに言いました。


ここでまた少しお断り。ここでいう戦車とは、砲塔を積んでキャタピラで走る兵器ではありません。一人用の小さな二輪の乗物を馬に引かせる兵器です。古代ローマなどで使われたものですね。


「亡者の戦車? 幽霊が駆る戦車が、悪党を地獄へ連れて行くっていう? バカ言ってんじゃねぇよ。そんなのお伽噺だろうが。二人目の太った男が顔の前で手を振った」


パパが、話を続けます。


「もうじゃのせんしゃ? 何なのそれ?」


案の定、ニールが食いついてきました。パパの思った通りです。


「亡者の戦車ってのはな。今夜みたいに吹雪や嵐が荒れ狂う夜。あの世からやって来て、悪人を地獄へ連れて行ってしまう、幽霊の操る一人乗りの馬車みたいなもんだ。言い伝えによれば、乗り手も車を引く馬もどっちもガイコツ。二つの車輪からは青白い炎を発していると言われてるんだ」


パパは、さもおどろおどろしくニールに語りかけました。


「パパは見たことあるの?」


ニールは、パパの腕を掴みます。


「いや、ないよ。パパは悪人じゃないからね」


ニールはホッとしました。パパが亡者の戦車に連れて行かれたら、とても悲しいからです。ただ、ママは”どうだか”という顔をしています。

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