パパの魔法 (3) 上を見つめる女の子
パパは仕事へ向かう途中、何故か上を向いている女の子を見かけます。
「さてと、最初は屋根職人のピプラゴさんの所だな」
一日のウォーミングアップとしては、まずまずの仕事です。パパは指定された現地集合の場所へと急ぎます。遅刻なんてしたら大変です。ピプラゴさんは腕のいい職人ですが、時間にはめっぽう厳しいニンゲンなのでした。
それにパパの仕事は魔法を使った自営業なので、依頼主からの信用も大切です。朝、ママがパパを、厳しくたたき起こすのもその為だったんですね。遅刻を繰り返すようでは、仕事を失うのは目に見えていますから。
「ん? あれは何だろう」
現場へと急ぐパパの目に、ある光景が飛び込んできました。
道路から少し入ったところ、大きな木の根元に小さな女の子が一人でたたずんでいます。ニールよりも、ちょっぴり幼く見えます。パパは仕事の時間も忘れ、自転車を止めました。ニールが生まれる前だったら、気にはなってもそのまま通り過ぎていた事でしょう。
よく観察すると、女の子は、じぃーっと上を見ています。パパは木の上に視線を移しましたが、枝ぶりの良いその大樹にはこれと言って不審な点は見当たりません。
「おっと、いけない。遅れてしまう」
ピプラゴ親方の渋い顔を思い受かべながら、パパは通りを先に急ごうとしました。でも、駄目です。どうしても女の子の事が気になります。
パパは遅刻を覚悟で、自転車を手で押しながら女の子の方へ近づいていきました。
「ねぇ、キミ。何をしているの?」
パパが、優しく声をかけます。
女の子は少し驚いた様子でしたが、すぐに落ち着きを取り戻しました。どことなく幼さが残るパパの雰囲気は、子供には受けがいいんです。
「あのね、おじちゃん。私の可愛い子が、遠くへ行っちゃったの」
女の子が答えます。
お……おじちゃん。
パパはちょっと、ショックです。まぁ、お兄さんと呼ばれようとは思いませんが、やっぱりちょっとショックでした。
僕がおじちゃんなら、ママはおばちゃんだよな。これは、口が裂けても言えないけれど……。
パパは自分を慰めながら、目の前の女の子に再び尋ねます。
「可愛い子って?」
パパがそう言うと、女の子は上を指さしました。パパがその小さな人差し指の先を辿っていくと、木のかなり上の方に赤い風船が引っ掛っています。
なるほどね。あれが、この娘にとっての可愛い子なわけだ。
「あの子はもう、私の所へは戻ってこないの?」
女の子の大きな瞳がパパを見つめ、せつせつと訴えます。
う~ん、どうしたものか……。




