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癒しの剣 (10) 謁見

王と謁見するレリドウ侯爵。しかし王は、わけのわからぬ事を言いだした。

朝になりました。運命の朝です。空は快晴で、まるでレリドウ侯爵の未来を祝福しているかのようです。侯爵はこれも予定通り、王様へ退城の挨拶をするために、護衛官と共に謁見の間へと向かいます。領地へ戻る許可は既に下りていました。全ては順調に進んでいます。


王様の御前にまかり出て、片膝をついた侯爵は、


「王様、今回の甦りの儀式を前に、領地へと戻らなければならない無礼をお許しください」


と、如何にもうやうやしく頭を下げて言いました。言葉とは裏腹に、侯爵の心の中は”あと数週間も経てば、お前がふんぞり返っている玉座は私の物だ”という邪心で一杯です。


「いや、そなたの体の事は、既に私も聞いておる。仕方のない事じゃ」


一段高い台の上から、優しそうな顔をした王様が裏切り者に声をかけました。


「では、馬車が待っておりますれば……」


レリドウが別れの言葉を言って、早々にその場を立ち去ろうとしたその時です。


「いや、待て。話はまだ終わっていない」


王様は、背を向けかけた侯爵に声をかけます。


「はて、どういう事でしょうか。領地へ帰るお許しは得ているはずですが……」


レリドウ侯爵の希望に満ちた心の中に、わずかではありますが、シミのような斑点が浮かび上がりました。


「うむ、それはお前の言う通りなのだがな。実は素晴らしい考えが閃いたのだよ。これまでの、お前の功績を鑑みての事だ」


王様は上機嫌で喋りましたが、侯爵には王様の真意がわかりません。彼の心のシミは、どんどん大きくなっていきました。


「陛下、素晴らしい考えとは……」


侯爵が、心配そうに尋ねます。


「当たり前の話だがな。お前が領地へ引っ込むのは、健康がすぐれないからじゃろう?」


「はい、仰せの通りです」


侯爵の返答を待って、王様は話を続けます。


「だったら、お前が健康になれば済む話じゃないか。そうすれば、領地へ戻る必要などない。私の甦りの儀式にも、晴れて参加できるというものだ」


納得のいかない侯爵は、少し心配そうな声で


「王様、確かに仰せの通りですが、私の病気はかなり深刻で、これまで何人もの医師に往診をさせました。しかし、一向に良くなる気配はございません。事ここに至っては、陛下にご迷惑をかける前に領地へ引きあげるほかないと……」


と、繰り返し王様に言いました。もっともそれは、医者たちを脅したりすかしたりして、ウソの診断書を書かせていたのは言うまでもありません。


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