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癒しの剣 (7) 素顔

秘密の作業場から戻ったレリドウ侯爵。果たして彼の本心は……。

「もったいぶらずに、教えて下さいよ」


シュプリンが空になった自分のグラスへ、新たなワインをついでいきます。お酒はパーパスの大好物ですが、執事兼召使いのシュプリンも主人に負けないくらい大好きなんです。カラクリ人形にもかかわらず、立派に酔います。


「まぁ、それからな……」


パーパスが、話を続けます。



秘密の作業場からお城の通路へと戻ったレリドウ伯爵。何故か、弱々しい足取りに変わります。すれ違うお城の人たちに会釈をするも、通り過ぎた彼らは口々に「レリドウ卿が、健康を害しているという噂は本当らしい」とささやきました。


護衛官に守られるようにお城の中の自室へ戻った伯爵は、奥の間へと移動し、そこにどっかと据え付けられている大変立派なソファーに身を委ねました。さすが侯爵様のソファー、ふっかふかです。


召使いが、ササっとお茶とお菓子を持ってきます。侯爵は特に礼を言う事もなく、ティーカップのお茶を一口、二口と美味しそうにすすりました。


「ふうーっ。病人のフリも疲れるよ。かえって病気になりそうだ。あの鍛冶職人の前では普段の姿を見せなきゃならないし、本当大変だな」


侯爵が、今度はお菓子に手を付けます。体の具合が悪いなどとは、真っ赤なウソだと分かる食べっぷりでした。


「閣下、もう少しの辛抱です」


直立不動の護衛官が、主人を気遣います。


「そう、もう少し、もう少しだ。もう少しで、長年の苦労が報われる。ハハ、ハハハハハ!」


レリドウ侯爵は、ホンドレックに見せた顔とは全く違う、下卑た笑いを漏らしました。


みなさん、もうおわかりですね?


庶民から慕われ、ホンドレックが心酔した侯爵の顔は全くの偽りで、これが彼の本当の姿なのでした。本人が言っているように、もちろん体の具合が悪そうに見えたのも嘘っぱちです。


「まぁ、あの職人を騙すのに、ガッテン・ボロッツの名を出したのは名案だったな。あいつ、それをすっかり真に受けているようだ」


”企み”が、すべて順調に進んでいる事に気を良くした伯爵の口は、どんどん滑らかになっていきました。


「義賊きどりの、たわけた盗人が。せいぜい、私の役に立ってもらうぞ」


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