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癒しの剣 (6) 一世一代の仕事

侯爵が鍛冶屋に依頼した、意外な仕事とは……。

「単刀直入に言おう。君は、非常に優秀な鍛冶屋だと聞いた。そこでだね。君には癒しの剣の”偽物”を作ってほしいんだ」


「偽物?」


ホンドレックは、余りに意外な話に耳を疑いました。


「そうだ。それも、そんじょそこらの偽物では駄目だ。誰が見ても本物の、たとえ王自身が手に取ったとしても決してわからない程の偽物を作ってほしいんだよ」


侯爵と鍛冶屋の問答が続きます。


「……でも、どうして……」


鍛冶屋が心配そうに尋ねました。それは、そうでしょう。国家レベルの宝物の偽物を作るんです。普通に考えれば、ばれたら只じゃ済みません。ギロチン台は間違いなしの話です。


「理由は簡単。さっき話した、剣を盗もうとする盗賊を欺くためだよ。いくら警備を厳重にしたって、優れた賊ならそんなもん屁とも思わないだろう。なにせ癒しの剣を狙っているのは、あの大盗賊”ガッテン・ボロッツ”なんだからね」


鍛冶屋は、更に驚きました。


「え? あのガッテン・ボロッツが!?」


彼が仰天したのも無理はありません。何せこの盗賊、庶民の味方、すなわち義賊と言われていたからです。


貧しい者、真面目な者からは奪わず、彼が仕事をする相手は、もっぱら悪徳商人や傲慢な貴族と相場が決まっています。中々希望の持てないこの時代、ガッテン・ボロッツはある種のヒーローでした。そんな彼が、みんなから慕われている王様の健康を損なうような真似をする……。ホンドレックは信じられません。


「君の言いたい事は分かるよ。”あの義賊のガッテン・ボロッツが、まさか……”というのだろう?しかし、しょせん盗賊は盗賊、悪党に変わりはないさ。君にはどうか、奴よりも私の事を信用してほしい」


レリドウ侯爵の温和な目が、憐れな鍛冶屋の目をじっと見つめました。彼にとってボロッツが義賊というのは、あくまで噂話のレベルです。目の前にいる、雲の上の人物とは比べ物になりませんでした。


そうした事情で、ホンドレックは今、城の奥深くで癒しの剣の偽物を作っているのです。なぜ城の奥深くなのかと言えば、偽物を作っている事をガッテン・ボロッツに知られては意味がないからなんですね。この事を知っているのは、本当にごく少数の人たちだけでした。



「私の作った一世一代の代物が、悪党の計画を妨げる。私の作品が、陰ながらこの国を救うんだ」


レリドウ侯爵が作業場を去った後も、ホンドレックは一心不乱に槌を振るい続けました。



「……という事は、この話、そのレリドウ侯爵と大盗賊ガッテン・ボロッツとの世紀の対決という内容なんですか?」


ちょっと長い話に飽きて来たシュプリンは、ステーキソースをお皿の周りに飛び散らせている行儀の悪い主人を見ながら言いました。


「さぁ、どうだかな」


パーパスは気を持たせるように、ニヤリとシュプリンを見やります。


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