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癒しの剣 (5) 鍛冶屋と侯爵

意外な客は侯爵だった。しかし、何故こんな森の奥まで、鍛冶屋を訪ねて来たのか……。

レリドウ侯爵? 確か王様の信頼厚い貴族であり、温和な人柄は庶民にも人気の……。


ホンドレックは、いかつい護衛官の後ろにいる銀髪の紳士を見てハッとしました。前にパレードでチラリと顔を見た事がある、正しくあのレリドウ侯爵その人だったからです。


いやホンドレックの驚いた事、驚かなかった事。え? どっちかって? それほど驚いたって事なんです。


「はじめまして。私はレリドウ侯爵だ。名前くらいは知っていてもらえてるだろうか」


ホンドレックは、ポカンと空いたままの口がふさがりません。


「こら、ひざまづかんか!」


護衛の男が怒鳴りますが、侯爵はそれを制しました。貴族らしからぬ紳士です。


「やめなさい。突然押し掛けたのは、こちらなんだ。あぁ、そのまま、そのまま。でも、話をしたいんで腰掛けさせてもらうよ」


侯爵は優しくそう言うと、ホンドレックの向かいに座りました。最高の貴族と、世捨て人の鍛冶屋。二人が差し向かいになっている、世にも不思議な光景です。


「実はね。君の素晴らしい技術の噂を聞きつけてね。どうしても、頼みたい仕事があるんだよ。これは国家レベルの重大な仕事だ。あ、ちょっと失礼するよ」


侯爵はそう言うと、テーブルに置いてある、豆を炒って塩をまぶした庶民のお菓子をつまみました。同じものを食べると信頼関係が増すという、初歩的ですが効果抜群の手法を彼は駆使したのです。


もうこれだけで、すっかり侯爵の魅力に参ってしまったホンドレック。夢のような心持ちの彼をよそに、侯爵は話を進めます。


彼の話は、おおよそこんな感じでした。


多くの民が知っているように、今年は王が癒しの剣を使った甦りの儀式を行う年となっている。これは王の健康を皆に知らしめるための重要な催しだ。儀式を通じ、民は王の無病息災を祝い、また安心する。それが国の安定にもつながる。


しかし、今年は一つ大きな心配事がある。


何と、癒しの剣を奪い去ろうという企てがあるらしい。それが実現すれば、王は健康を保てなくなり、国は乱れる。


侯爵の話を聞いて、


「それで……、侯爵様。私に何をしろと……」


と、鍛冶屋は恐る恐る口を開きます。


本来なら”鍛冶屋の分際"で、侯爵に直接口を聞くなんて有りえません。首が飛ばないまでも、牢屋行きは確実です。でもここは人里離れた森の奥。このある意味、異様な状況ではそれも許されます。


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