癒しの剣 (3) 城の奥深くで
城の奥深く、何やら怪しげな音が鳴り響いています。
以来、この剣は常に王様と共にありました。彼が仮にもこの地の支配者で居続けられたのは、この品の賜物だと、周りも、そして王様自身も認めておりました。
そして三年に一度、この剣を用いて王様の治療をする儀式が一ヶ月後に迫ったある夜の事。
カシーン、カシーン。
お城のとある部屋で、鍛冶屋が鋼を鍛える音が鳴り響きます。ですが、それを誰かに聞かれる心配はありません。なぜならその作業場はお城の奥のそのまた奥、王様ですら知らないであろう秘密の場所にあったからでした。
一人の四十がらみの鍛冶職人が、一心不乱に槌を振るいます。槌というのは、真っ赤に熱せられた金属を、叩いて伸ばすカナヅチのような道具の事です。
またこの作業場は、氷の魔法で涼しくなるよう加減されていましたが、それでもムッとするような熱気に包み込まれていました。窓すら存在しない、地下深くなのですから仕方がありません。
その部屋の扉の外には二人の衛兵が立っており、何びとも中には立ち入らせはしないぞと、厳しい顔つきをしています。
カツン、カツン、カツン。
作業場へと続く廊下の向こうにある階段を、誰かが降りて来るようです。衛兵たちは身構えました。彼らの任務は作業場に誰も立ち入らせない事でしたが、それは非常に重大な役目であったのです。
壁に設置された松明の明かりが煌々ときらめく中、足音の調子が変わりました。どうやら階段を降り終えて、廊下を歩いている様子です。
足音が段々と扉へ向かって近づいてきます。松明の光にその訪問者の顔が照らし出されると、衛兵たちはカツッと両足をそろえ、直立不動となりました。
「務め、ご苦労」
五十代の銀髪の紳士が、彼らの労をねぎらいます。着ている衣装から見ると、どうやら貴族のようですね。それも、かなり位の高い……。
衛兵の開いたドアをくぐると、背の高い、いかにも柔和という顔立ちのその貴族は、作業場で憑りつかれたように槌を振るっている職人の後ろに立ちました。
「おい、閣下が見えられた。無礼を働くな!」
紳士に付き従っていた護衛官が、鍛冶屋をどやしつけます。
彼はハッと気がついて、後ろを振り返りました。
そしてひざまずきながら、
「こ、これは大変失礼致しました。レリドウ侯爵閣下」
と、自らの失態を恥じ入るように挨拶をします。
「いや、いや。それだけお前が仕事に熱心という事だよ。気にしないでくれたまえ」
侯爵はそう言うと、柔和な顔を更に柔らかくします。絵に描いたような善人の面構えです。




